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想造世界  作者: 玲音
第四章 種族争い
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地獄監獄

「お前は!」


「俺のせいにすんじゃねぇよ。こいつをこんなふうにしたのは、幸明だ。

お前らの絶対的信頼を受けてるな!」


「そんな・・・・」

「信じられないならお前の目で確かめてみろよ」


信じられないと言った様子で俺の方を見る医者にそう告げると、

さっさと病院を出て、再びドームに向かう。


族長の閉じ込められていた牢屋の看守なら、

族長の居場所を知っているかもしれないと思ったのだ。


そのまま早足で歩いていると、不意に話しかけられた。


「お前、もしかして、頭脳種族族長の護衛の奴か?」

「・・・・誰だよ、あんた」

「俺の正体なんか、どうだっていい」


「そんなことねぇよ。俺にとっては大したことだ。

お前、なんでこんなところにいんだよ。妖怪だろ?」


「俺は、前期頭脳種族族長の、瑛雅と言う者だ。

昨日の夜まで、現在の族長と同じ部屋の牢屋に閉じ込められていた者だ」


そう言われた途端、自然と体が反応した。こいつ、何かを知ってるのか・・・・?


「お前、何か知ってるのか?」


「ああ。俺達は昨日の夜、牢屋から脱走した。

そしてあいつは、俺を逃がす代わりに捕まり、地獄監獄に閉じ込められた。

俺は、あいつに託されたんだ。魔光霊命を探し出し、魔界を助けて欲しいと」


「魔光霊命は、幸明の手によって息を引き取ったぞ」

「それじゃ、どうするんだ?」


「・・・・俺の知り合いが、天界とか言う場所に行って、

天命と言う奴に頼みに行くらしい。

その天命と言うのは、宇宙をつかさどる神だ。

だから、幸明なんかより、ダントツで偉い。

知り合いは、そいつに頼みに行って、俺は、族長を助け出すことになってるんだ。

そんで、その地獄監獄って、どこにあるんだ?」


「・・・・わからない。

あそこは、幸明と、その側近の者しか知らない極秘の場所だからな」


「そうか。なら、力ずくで教えてもらうまでだ」


俺はそう言うと、その、瑛雅とか言う奴のことを無視してドームに向かう。

あいつの居場所なんか知らない。ただ、ドームにいるような予感がしたんだ。


「お前、こんなところに来てどうするつもりだ?」


「あんたも俺のことを手伝うのか?

それだったら言ってやってもいいけど、そうじゃないなら、

俺は、あんたに何かを教える義務はない。

なんせ、族長を危険な目に合わせた本人だからな」


「当たり前だろ?大人が子供に助けられたんだ。情けないことこの上ない」


「・・・・まぁ、いいか。でもまぁ、まだ、俺はあんたを認めてない。

俺が信頼するのは族長だけだ。とりあえず、このドームの最上階に行こうと思う」


ドームの中に入り、エレベーターに乗り込むと、最上階の十四階のボタンを押す。


なぜ最上階にいるって思ったのかって?

そんなの、ラスボスは大体最上階にいるって決まってるからだ。それだけの理由だ。

そんなに単純でいいのかって思うかもしれないが、

俺は生憎、今までそうやって気分で生きて来たからな。それが俺の生き方なんだ。


十四階につき、エレベーターの扉が開いた先に見えたのは、

真っ直ぐ続く長い廊下だった。

そして、その先には大きな扉がある。きっと、あの先にいるのだろう。


「おい、二手に分かれないか?」

「・・・・?」


「あいつのことだ。きっと、何人も付添い人がいる。

そいつは俺が殺るから、お前は幸明を殺るって言うのはどうだ?」


「・・・・別にいいが、変な気を起こすなよ。俺は、あんたを敵とみなしている。

変な行動をした途端、命はないと思ってくれよ」


そうだ。俺は、こいつを信用していない。それは、こいつに限ってじゃない。

俺は、元から人を信用しない性質なのだ。

凛達だってそうだ。敵とはみなしていないものの、

族長を襲おうものなら殺してでも止める。その覚悟は出来ている。


俺が本当に信頼しているのは、親でも仲間でもない。族長だ。守れと言われた族長。

例え族長に襲われても、俺は抵抗しないだろう。

守れと言われた人を傷つけることは、俺には不可能だ。


なぜ、俺がここまで人を信じなくなったのか・・・・

いや、これはどうでもいいことか。話すのはやめよう。


扉の前まで来ると、俺は大きく深呼吸をした。

そして、左手で扉を押すと、すぐさま刀を抜き、部屋の中に入った。


すると、やはりここは幸明の部屋らしく、奥の方に幸明が座っていて、

ニヤニヤとこちらを見ていた。


周りの使い達は、俺達の登場に驚いた様子だが、

俺達を止めるべく、大声を上げて襲って来る。


しかし、俺はそいつらの攻撃を避けると、さっさと幸明の方に走って行く。

あいつらは、前期族長がなんとかするとか言っていたからな。

だから俺は、幸明を殺るんだ。


「随分と荒い登場の仕方ですね」

「おい、族長をどこにやった?答えないと、お前の首を飛ばすぞ」


「いいんですか?

そんな手荒なことをしたら、地獄監獄の場所がわからないままですよ?

それに、彼はもう死んでいるかもしれません。自らの手で。

こちらは、彼をなんとか死なせないようにするので精一杯ですからね」


「・・・・どう言うことだ?」


「戦うんですか?なら、私の部屋ではやめていただきたい。

部屋が荒れるのは嫌なのでね。場所を移動しましょう」


そう言われた途端、場所が変わっていて、どこかの屋上のような場所に立っていた。


「さて、では、やりますか?」

「・・・・死んでも知らねぇぜ」


「心配は無用です。それに、私が死んだ時点で消えますからね。地獄監獄の存在は」


「どう言うことだよ?」


「あそこは、私が作り出した幻で成り立っています。

もともとは、何もないところに私が作り出した幻です。

だから、私を殺した途端、その地獄監獄ごと消えてなくなります。

と言うことは、中にいる者達も消えるのですよ」


「・・・・とことんせこい奴だな」


「せこくありません。素直に牢屋に閉じ込められていればよかったのですよ。

しかし、その掟を破ったから、ちょっとした罰を与えただけです」


「お前、なんで種族争いなんてやろうと思ったんだよ?意味わかんねぇよ」

「娯楽の一つですよ。ただ、それだけです」


「・・・・そうだよな。実の妹を殺すぐらいの奴だからな。

俺達みたいな他人同士が殺し合っていたとしても、なんとも思わないよな」


「ふん、あなたは何も知らないのですね。

自分の無力さを知って、尚もそんなことを言い続けることが出来ますか?」


「・・・・どう言うことだ?」


「例え、私が地獄監獄の場所を教えたとして、あなたがその場所へ行って、彼に会う。

しかし、彼は死にたがっている。それをあなたは止めることが出来ますか?」


「・・・・」


「地獄のように苦しいことを強いられ、死にたいと思っている主人に、

あなたは生きろと言えますか?それこそまさに、鬼じゃないですか?」


「・・・・」


「しかし、そこまで言うのなら、やってもらいましょう。

もし、あなたが彼を説得して、彼と一緒に私の前に現れることが出来たら、

種族争いをやめてもいいでしょう。

その変わり、あなたがそれに失敗したら、

種族争いよりも、もっとスリルのある戦いを実現させます。

どうしますか?この駆け引き。やってみますか?」


うなずきたいと思う。しかし、心の片隅が邪魔をする。

本当に出来るのか?もし、失敗したらどうなるんだ?

そんな思いが片隅にあって、うなずくことすら出来ない。

自分でも情けないと思うが、冷や汗が出て来た。


「無理だと思うのなら、やめておいた方がいいでしょう。

生半可な気持ちで生きろと言われては、彼が可哀相ですからね」


「・・・・生半可なんかじゃねぇ!

俺は、族長の護衛になった時から、命をかけて族長を守るって決めたんだ!」


「・・・・そうですか。ならどうぞ。私は止めません。

その代わり、失敗した時の代償・・・・その予想はついてますよね?

種族争いよりも酷い惨事・・・・」


「心配するな。俺は、絶対に族長を死なせない」


「その言葉、後で後悔しないようにして下さいね。もう言い戻りは出来ません。

では、ここの中に入って下さい。そうすれば、自然と地獄監獄内に繋がりますよ」


そう言って幸明の指差した先には、モヤモヤとした、明らかに変な空間があった。


俺がそこに入ろうとした途端、幸明が小さくつぶやいた。


「地獄監獄へ一度入れば、あることをしない限り、二度と出られませんよ」


「今更脅しなんか、神がすることじゃねぇぜ。

絶対族長を連れて出て来る。それまでそこでおとなしく待ってろよ」


俺はそう言うと、地獄監獄に繋がる空間に足を踏み入れた。


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