6.明日海透
―お時間頂きありがとうございます。
えーっと、透先輩、と呼んでも?
いいよ。
よろしくね。
渚からだいたい話は聞いてる。
―透先輩は、麗奈のこと、どう思っていますか。
うーん、第2の妹かな。
たぶん渚も、麗奈のこと妹だと思ってると思うよ。
―すごく、仲がいいんですね。
…君さ、音花さんって、5歳くらいの時、麗奈と一緒に河川敷にいたことあるよね。
―え
うっすら覚えてるんだけど、麗奈ともうひとりの女の子が冬に河川敷にいて、どっちも親から逃げて来たみたいで、麗奈の方は、幼稚園からの脱走っぽくて、もうひとりの子は明らかに虐待を受けていた様子で、身体中アザだらけ。
なけなしのお小遣いでコンビニでおにぎり買って、それ食べさせてる間に近所の交番に行って、保護してもらった。
あの後、麗奈は家が近所だからたまに会うようになって、小学校は3人で登校するようになったんだけど、もう一人の子はどうなったかずっと心配だったんだ。あの時の子だよね。
音花ちゃん。
―そうです。
ずっと、助けてくれた人、探してたんです。
毎日食べるものがなくて、幼稚園でしかご飯が食べられなくて、家に帰りたくないって言ったら、麗奈が手を引いて幼稚園の抜け穴を教えてくれて。
一緒に知らない道を歩いて、ずっと歩いてたらお腹空いて、ランドセルを背負ったお兄さんがご飯をくれて、警察を呼んでくれた。
あなただったんですね。
明日海透先輩。
元気そうでよかったよ。音花ちゃん
―私、あの後、保護されて児童養護施設でしばらく暮らしたあと、里親制度で新しい家族ができて、今、近くに住んでいるんです。
そっか。
良かったよ。
麗奈とも会えたしね。
―…麗奈、生きててほしかった。
透先輩、麗奈が自殺した理由、なんだと思いますか。
…俺のせいだよ。
―…え
俺が麗奈を殺した。
―…いや、そんなわけ
正確には、自殺教唆が正しいかもしれない。
―…あなたは何をしたんですか
聞いて。
俺ね、中学の時に、塾で出会った同い歳の子と付き合っていたんだ。
名前は水無瀬菜月。
麗奈の前の魔法少女だよ
―え?前の魔法少女?
確か、魔物に殺されたっていう…
そうだよ。
俺は何度か、魔法少女が闘っている姿と、魔法少女が死ぬ瞬間を見た。
―…それは…とても…辛い…ですよね
うん。
しんどかった。
あれが生徒会選挙の後で良かったよ。
前だったら応援演説とか到底出来なかった。
…魔法少女に選ばれると、ステッキを貰える。
そのステッキを使うと、変身できるのと、怪我の治りが早くなる。
24時間で打撲くらいなら全部治る。
それと、マジカルビームが使える。
あれで魔物を倒している。
魔法少女ってさ、東京にしかいないし、魔物って、魔法少女の近くでしか観測されない。
おかしいと思わない?
―おかしいですけど、原因は解明されてませんし、なんとも
そうだよね。
原因が解明されていない理由は、魔物がカメラに映らず、肉眼でしか確認できない生物であり、魔物が倒される瞬間や、魔法少女が死ぬ瞬間を、学者が見ていないから、だと思うんだ。
―…もしかして、魔法少女が死ぬ瞬間の話を麗奈にしたら、麗奈が魔物の秘密を解明したってことですか?
おそらくそうだと思う。
…魔法少女が…菜月が死んだ時ね…
菜月は亡くなっても、ステッキを離しているけれど、魔法少女の姿のままだったんだ。
菜月は、魔物に致命傷を負わされたあと、魔物に食われた。
―食われた?どういう…
魔物は、魔法少女を食らうために生きているみたいなんだ。
事実、魔物は魔法少女の近くにしか現れない。
魔法少女を食らった魔物は消滅し、食われた魔法少女は、残った部分が魔物に変化する。
―なにそれ。
もしかして、それは、え、麗奈がずっと闘っていた魔物は、その、菜月さんだったってこと?
そういうこと。
―うそ…
…俺が麗奈に話したのはここまで。
まあ、魔物は魔法少女に何度倒されても、魔法少女を食らうまでは生き続ける。
魔物が魔法少女を喰らえば、魔物は消滅することができて、でも魔法少女が魔物化する。
そこまでは一緒に話してた。
その後、麗奈は答えを出したんだろう。
魔法少女と魔物のループを終わらせる解決策、それが
―魔法少女が自殺すること…
魔法少女が魔物に食われる前に死ぬことで、身体が魔物に食われても、魔物化しないんじゃないかな。
事実として、結果的に麗奈が亡くなったことで、魔法少女も魔物も現れていない。
あの子は使命を果たした。
―使命ってそんなの!
…菜月の死は、なんだったのかな。
もっと早く魔法少女の誰かが気づいてくれたら、菜月も麗奈も死ななかったのに。
2人とも、何も悪いことしてない。
優しい人だった。
…俺が菜月の話をしなければ、麗奈はもっと長く生きていられたかな。
―そうかもしれませんけど、その後も何十年にも渡って、悲劇が繰り返されたと思います。
麗奈は、悲劇を止めることに成功した。
自分の命を使って。
―…私、やっぱり新聞にはしません。
…そう。
―本にします!
…え?
―2人とも、っていうか歴代の魔法少女みんな死んじゃったけど、みんな報われてほしい、忘れられちゃダメです!
だって、こんなに頑張って生きてて、人を救うために生きた人たちなんですし。
今から頑張って本書いて、いつか映画化して、麗奈の名前も、菜月さんの名前もみんなに覚えて貰えるようにします。
…うん。
ありがとう。




