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ひだまりのFランク冒険者  作者: みなと劉


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79話

翌朝、リルドは窓辺で「ぴっぴー」と鳴く新しい相棒に朝食のベリーを分け与え、清々しい気分でギルドへと向かった。

ギルドの扉を開けると、そこには活気あふれる日常の音が満ちていた。

「昨日のあの魚、塩焼きが一番だったな!」「いや、ムニエルも捨てがたいぞ」

冒険者たちが「いい魚」の「食べ方」について熱く議論を交わす中、リルドは掲示板の隅っこで、およそ冒険らしくない平和な依頼札を二枚見つけた。

「おはよう、受付さん。今日はこれをお願いするよ」

「おはようございます、リルドさん。あ、『芋の納品』と『玉ねぎの納品』ですね。食堂の在庫が切れちゃって困っていたんです。市場で買ってくるだけでも助かりますよ」

「うん、お買い物ついでに見てくるね」

市場での買い出し

リルドは活気ある市場へと足を運んだ。

「おじさん、この立派な芋を。あと、こっちのツヤが良い玉ねぎも一袋ちょうだい」

リルドが選ぶ野菜は、どれも土のエネルギーが詰まった良質なものばかりだ。店主と談笑しながら、指定された納品数を手際よく揃えていく。

袋を抱えて市場を後にしようとしたその時、背後からタタタッと小さな足音が聞こえ、不意に腰のあたりに「ギュッ」と重みを感じた。

「お母さん! どこ行ってたのー!」

「……えっ?」

見れば、小さな男の子がリルドの服を掴んで、満面の笑みで見上げている。中性的な美しさを持ち、昨日の新作の服を綺麗に着こなしていたリルドを、後ろ姿で母親と勘違いしてしまったようだ。

「あはは……。ごめんね、僕は『お母さん』じゃないんだよ」

困惑しながらも、リルドは屈んで優しく男の子の頭を撫でた。男の子はリルドの顔を間近で見て、「……あれ? お母さんより、ずっと綺麗だ……」とポカンと口を開けて固まってしまった。

「コラ! ユウタ! どこへ行くの!」

そこへ、血相を変えた本当のお母さんが走ってきた。

「あ、すみません! うちの子が……って、あら、まあ。失礼いたしました、こんなに綺麗な方をお母さんと間違えるなんて」

お母さんは恐縮しつつも、リルドの穏やかな雰囲気に少し見惚れた様子で、何度も頭を下げて去っていった。

「ふふ、びっくりしたね」

肩の上で「ぴっぴー」と鳴く鳥に話しかけ、リルドは苦笑いしながらギルドへ戻った。

夕刻、リルドは重たい野菜の袋をギルドの厨房へと届け、受付に報告した。

「ただいま、受付さん。芋と玉ねぎ、届けてきたよ」

「おかえりなさい、リルドさん! 助かりました、これで今晩のギルド飯は豪華なシチューになりますよ。……あれ、なんだか少し、お疲れですか?」

「あはは、ちょっと『お母さん』を体験してきただけだよ。お散歩には、予想外の出会いがあるね」

リルドは報酬の銅貨を受け取ると、夕焼けに染まる街並みを眺めながら家路についた。

「さて、僕も今夜は、今日買ってきたお野菜で、美味しい肉じゃがでも作ってみようかな」

万年Fランク冒険者の日常は、今日も誰かの勘違いを優しく包み込みながら、穏やかに更けていく。


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