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ひだまりのFランク冒険者  作者: みなと劉


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78/328

78話

翌朝、リルドは昨日買った新しい服の中から、一番落ち着いた色合いのシャツを選んで袖を通した。鏡の前で軽く襟を整えると、心なしか足取りも軽くなる。

ギルドへ行くと、掲示板の前では相変わらず「昨日どこそこのダンジョンでこんなお宝が出た」だの「あの店のランチが絶品だ」だのと、賑やかな声が響いていた。リルドはそんな喧騒を楽しみながら、掲示板の隅にひっそりと貼られた一枚の依頼札を手に取った。

「おはよう、受付さん。今日はこれに行ってくるよ」

「おはようございます、リルドさん! あ、その『薬草採取』……。今回は珍しく場所が指定されているんです。北の静かな森の、さらに奥にある小さな泉の近くだそうです。少し距離がありますが、大丈夫ですか?」

「うん、お散歩にはちょうどいい距離だね。行ってくるよ」

リルドは鼻歌を歌いながら、指定された北の森へと足を進めた。新しい服は肌馴染みがよく、森の爽やかな風を心地よく通してくれる。

やがて、宝石のように透き通った小さな泉にたどり着いた。その周辺には、指定されていた珍しい種類の薬草が、まるで星を散りばめたように群生していた。

「(さて、丁寧に摘ませてもらおうかな)」

リルドが腰を下ろし、指先で優しく土を払いながら採取を始めた、その時だった。

フワッ。

不意に、頭の上に柔らかな重みを感じた。

「……おや?」

「ぴっぴー!」

可愛らしい声が頭上で響く。リルドが動きを止め、両手をそっと頭の上へ伸ばすと、そこには手のひらに収まるほど小さな、綿飴のようにふわふわとした不思議な鳥が乗っていた。

「やあ、こんにちは。僕の頭が気に入ったのかい?」

リルドが優しく抱き上げると、その小さな鳥は「ぴっぴー!」と嬉しそうに鳴き、リルドの指先をつついた。どうやらこの森の守り手の端くれのようで、リルドが放つ穏やかな魔力に惹かれてやってきたらしい。

夕刻、リルドは頭の上にその小さな鳥を乗せたまま(鳥がどうしても離れようとしなかったのだ)、ギルドへと戻ってきた。

「ただいま、受付さん。指定された場所の薬草、全部摘んできたよ」

「おかえりなさ……ええっ!? リルドさん、その頭の上に乗っている、動くふわふわしたものは何ですか!?」

「あはは、採取中に仲良くなっちゃったんだ。なんだか『一緒にいたい』って言っている気がしてね」

リルドがそう言うと、鳥は「ぴっぴー!」と元気に返事をした。受付嬢や周囲の冒険者たちは、そのあまりにも愛らしい光景と、相変わらず浮世離れしたリルドの雰囲気に、毒気を抜かれたように顔を綻ばせた。

「……もう、リルドさんは本当に不思議なものを引き寄せますね。はい、依頼達成です!」

報酬を受け取ったリルドは、頭の上で幸せそうに羽を休める小さな相棒と共に、家路についた。

「さて、僕も今夜は、この子と一緒に食べられるような、甘いベリーのコンポートでも作ろうかな」

万年Fランク冒険者の日常は、新しい小さな友達を一人迎えて、ますます穏やかに更けていく。


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