表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひだまりのFランク冒険者  作者: みなと劉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/328

77話

ギルドを出たリルドは、ずっしりと重い袋を手に、夕暮れに染まる街を歩いた。

家に帰り着くと、床下の秘密の隠し場所にしまってある、古びた、けれど手入れの行き届いた貯蓄箱を取り出す。

「これだけあれば、しばらくはお散歩に専念できそうだね」

蛙さんからもらった古銭の鑑定料を含めた金貨を、数枚だけ残して箱に収める。チャリン、という澄んだ音を聞きながら蓋を閉じ、代わりに日常の買い物に必要な分だけの硬貨を革袋に詰め直した。

再び街へ繰り出したリルドは、活気あふれる噴水広場へと向かった。

広場の中心では水が涼やかに跳ね、その周囲には香ばしい匂いを漂わせる屋台が立ち並んでいる。

「おじさん、その串焼きを一本。あと、こっちの甘い果実のパイもひとつ」

焼きたての肉から溢れる肉汁と、サクサクのパイ生地からこぼれる甘酸っぱいジャム。リルドは噴水の縁に腰掛け、賑やかな街の音を聞きながら、至福のひとときを過ごした。

(……やっぱり、自分の手で稼いだお金で食べるご飯は、格別だね)

お腹を満たした後は、馴染みの洋服店へと足を運んだ。

店内に並ぶ色とりどりの布地を眺めながら、リルドは「お散歩に合う、動きやすくて丈夫なもの」を選んでいく。

「これと、この落ち着いた緑のシャツ。あとは……この少し厚手のズボンを二着もらおうかな」

試着室の鏡の前で新しい服に袖を通すと、心なしか気分も新しくなる。結局、日常使いのシャツと、少しお洒落な外出用のセットアップを合わせて合計4着を購入した。

店主のおばさんは「あんたはスタイルが良いから、何を着ても似合うねぇ」と、おまけに刺繍入りのハンカチを付けてくれた。

両手に新しい服の包みを抱え、リルドはすっかり夜の帳が下りた街を歩いた。

家に戻ると、庭先ではあの猫が香箱座りをして待っていた。

「ただいま。ほら、お土産の干し魚だよ」

猫に小さなご褒美を差し出し、リルドは玄関の扉を開けた。

新調した服を棚に並べ、窓を開けて夜風を入れ替える。部屋の中には、昼間に摘んできた薬草の残り香が微かに漂っていた。

「さて、僕(僕)も今夜は、新しい服に袖を通す明日を楽しみに、ゆっくりと眠りにつこうかな」

万年Fランク冒険者の日常は、美味しい食事と新しい装いに心を躍らせながら、静かに更けていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ