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ひだまりのFランク冒険者  作者: みなと劉


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40/62

40話

翌朝、リルドは窓辺で羽を休める小鳥に「今日は少し遠くまで行ってくるよ」と微笑みかけ、いつものようにギルドの扉をくぐった。

「さて、今日は村の方まで足を伸ばそうかな」

掲示板の前で、彼は二枚の依頼札を重ねるようにして剥がした。

『癒やし草の採取』と、『クイア村への癒やし草納品』。

「おはよう、受付さん。今日はこの二つをやるよ。村の空気も吸ってきたいしね」

「おはようございます、リルドさん。クイア村までは少し距離がありますから、魔獣には気をつけてくださいね。納品、よろしくお願いします!」

リルドはまず、昨日目をつけておいた群生地で、最高品質の癒やし草を丁寧に摘み取った。彼が触れるだけで、薬草は命の輝きを増し、籠の中からは清涼な香りが溢れ出す。

そのまま街道をのんびりと歩き、お昼過ぎにはクイア村に到着した。

「こんにちは。ギルドから癒やし草を届けに来たよ」

「おお、待っていたよ! ……おおっ、なんて瑞々しい薬草だ。これなら病に伏せっている者たちもすぐに良くなる。ありがとう、冒険者さん!」

村人たちの感謝の声に見送られ、リルドは満足げに村を後にした。

帰り道、日が傾き始めた森の奥から、激しい金属音と獣の咆哮が聞こえてきた。

「くそっ、囲まれた! この数の『ブラッド・ウルフ』は手に負えねえ!」

そこでは、数人の冒険者が十数頭の飢えた狼の群れに包囲され、防戦一方になっていた。リーダーの剣士は肩を負傷し、じりじりと追い詰められている。

(……あーあ。ここで騒ぎが大きくなると、帰り道が物騒になっちゃうな。でも、姿を見せるのも面倒だし……)

リルドは道端の茂みに身を隠すと、近くに落ちていた「しなやかな木の枝」を拾い上げた。

彼は手際よく、足元に生えていた「丈夫な蔓」を枝の両端に結びつけ、即席の弓を作り上げる。さらに、手近な「木の棒」に鋭い「小石」を蔓で固定し、数本の矢をあっという間に完成させた。

(よし、これくらいでいいかな)

リルドは弓を引き絞り、気配を完全に消したまま、次々と矢を放った。

ヒュッ、ヒュッ、ヒュン――。

即席の矢とは思えないほどの速度と精度で、矢は狼たちの前脚や急所をかすめるように正確に叩いた。殺しはしないが、戦意を喪失させるには十分な衝撃だ。

「な、なんだ!? どこから矢が……!?」

「狼たちが怯んでるぞ! 今のうちだ、撤退しろ!」

冒険者たちが混乱に乗じて逃げ出すのを見届け、リルドは即席の弓矢をバラバラにして森へ返した。

夕刻、リルドは少し眠たそうな顔でギルドに戻ってきた。

「ただいま、受付さん。クイア村への納品、無事に終わったよ」

「おかえりなさい、リルドさん! お疲れ様です。あ、そういえば! さっきボロボロの冒険者たちが『見えない精霊の狩人が現れて、木の矢で狼の群れを追い払ってくれた!』って興奮して話してましたよ?」

「精霊の狩人? ……ははは、この森には不思議な住人がたくさんいるんだね。僕はただ、帰り道に綺麗な夕日を見ていただけだよ」

リルドはとぼけた様子で報酬の銅貨を受け取ると、軽く手を振ってギルドを出た。

「僕も、今夜は温かいスープでも作って食べようかな」

万年Fランク冒険者の日常は、今日も誰にも知られることのない即席の奇跡を添えて、穏やかに更けていく。


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