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ひだまりのFランク冒険者  作者: みなと劉


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321/346

第321話

翌朝、リルドは窓辺で青く、そして七色に輝く苔たちが元気に光を放っているのを見て、満足げに頷いた。

「よし、今日もみんな元気だね。クロ、朝ごはんにしよう」

「キー!」

ラッファードは昨夜の「抱き枕事件」の余韻か、心なしかいつもより大人しく壁に立てかけられている。

リルドがギルドへ向かうと、掲示板の前には人だかりができていた。どうやら近隣の森で「巨大な魔力の乱れ」が観測されたらしく、高ランクの冒険者たちが色めき立っている。

「おい、Sランクの依頼だぞ!」「伝説の魔獣でも出たのか?」

そんな喧騒を余所に、リルドは掲示板の最下段、今にも剥がれ落ちそうな古い紙を見つけた。

『【至急】裏通りのドブさらいと、詰まりの解消』

「今日はこれにしよう。雨が降る前に綺麗にしておかないと、街の人が困っちゃうからね」

リルドはその依頼札を手に取り、受付へと向かった。

「おはよう、受付さん。今日はこれ、ドブさらいをやってくるよ」

「おはよう、リルドさん。……えっ、それを受けるの? さっきの魔力の乱れの調査じゃなくて? 報酬、銅貨数枚よ?」

「あはは、僕にはこっちの方がお似合いだよ。行ってきます!」

現場の裏通りに着くと、そこはひどい泥とゴミで流れが完全に止まっていた。リルドは袖をまくり、鼻歌まじりに作業を始める。

「よいしょ、よいしょ。……おや、こんなところに大きな石が詰まってる」

リルドがひょいと指先で触れたその「石」は、実は地脈のエネルギーが凝縮して固まった『大地の核』だった。これが詰まっていたせいで、周囲の魔力が乱れ、高ランク冒険者たちが騒いでいた「魔力の乱れ」が起きていたのだ。

しかし、リルドにとってはただの「流れを邪魔する邪魔な石」でしかない。

「ちょっとどいててね」

リルドが軽くデコピンをするように石を弾くと、大地の核は一瞬で粉砕され、純粋なエネルギーとなって大地に還っていった。その瞬間、街を覆っていた不気味な魔力の乱れは霧散し、穏やかな空気が戻ってきた。

「ふぅ、これで流れが良くなった。ついでに……」

リルドは泥の中から、太陽の光を浴びてキラリと光る、滑らかな黒い小石を見つけた。

「わあ、これ、磨いたら絶対にかっこいい。ラッファードの鞘の飾りにいいかも」

夕暮れ時、リルドは泥だらけの長靴を鳴らしてギルドに戻った。

「ただいま、受付さん。ドブさらい、終わったよ。詰まってた大きな石を壊したら、すっきり流れるようになったんだ」

「お疲れ様です、リルドさん! ……不思議ね、あなたが作業を始めた頃から、あんなに騒がしかった魔力の乱れがピタリと止まったのよ。……まあ、偶然でしょうけど」

受付嬢は不思議そうにしながらも、約束の銅貨を並べた。

「あはは、偶然ってすごいね。はい、これが報告書。じゃあ、また明日!」

帰り道、リルドは市場で少しだけ贅沢をして、クロの大好きな木の実を買った。

家に着くと、彼は拾った黒い石を丁寧に磨き、ラッファードの鞘の傍にそっと置いた。

「見て、ラッファード。いい石でしょ?」

『……お主というやつは。世界を揺るがす地脈の異常を「ドブさらい」のついでに解決してくるとはな。……まあ、この石の輝きは、我の格に見合わぬこともない』

最強の力を「ドブ掃除」に使い、本人は新しいコレクションが増えたことに鼻歌を歌っている。

万年Fランクの日常は、世界の危機を無自覚に救いながら、今日も平和に更けていく。

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