表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひだまりのFランク冒険者  作者: みなと劉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

312/346

第312話

ギルドでの報告を終え、リルドは食堂で簡単に夕食を済ませると、夜風に吹かれながら家路についた。

街の灯りが一つ、また一つと消えていく中、リルドの小さな家だけが温かな光を窓から漏らしている。

「ふぅ……。やっぱりお家が一番だね。さて、お風呂に入るよ。クロ、一緒に行こう」

「キー!」

温かな湯気に包まれ、アルト村までの旅の疲れを洗い流す。湯船に浸かりながら、リルドは今日あった不思議な村の男性の反応を思い出して首を傾げたが、温かさですぐに思考が溶けていった。

風呂から上がると、お気に入りの柔らかな寝巻きに着替え、ソファに深く腰を下ろして寛ぐ。

その傍らで、立てかけられたラッファードが何やら不満げにブツブツと唸っていた。

『……解せぬ。あの村の男の狼狽ぶり、そしてお主のあの無防備な転び方……。我という名剣が傍にありながら、あのような軟弱な腕に抱かれるとは、剣の矜持が……』

「(もう、ラッファード。助けてもらったんだから、そんなこと言わないの)」

夜が更け、リルドは寝室のベッドに潜り込んだ。

ひんやりとしたシーツの感触が心地よい。リルドはふと思い立ったように、枕元に置いたラッファードを、まるで抱き枕のようにぎゅっと腕の中に抱きしめた。

『……っ!? こ、こらぁ!! リルド! 何を考えておる! 離せ、我のことも少しは考えよ!』

「ええ? いいじゃない。なんだか落ち着くんだもん。ラッファード、ひんやりしてて気持ちいいよ」

リルドは眠気に誘われながら、さらに力を込めて抱きしめる。

『だめだって……! お主の……その、密着しすぎだ! 我は意思を持つ剣なのだぞ! お主の……その柔らかさが……』

「(むぅ……)」

リルドは半分眠りながら、うるさいラッファードの鞘を拳でポカッと軽く殴った。

「いいでしょ! 減るもんじゃないし。それに、何度も言ってるけど僕は男だよ。変なこと気にしすぎ」

『あいたっ! ……むぅ、わかった、わかったから殴るな……。お主というやつは……』

ラッファードは観念したように沈黙したが、その刀身は心なしか、リルドの体温を吸って微かに熱を帯びているようだった。

「おやすみ、ラッファード。おやすみ、クロ……」

最強の魔剣を抱き枕にし、本人はその「威力」に全く気づかないまま深い眠りに落ちていく。

万年Fランクのリルドの夜は、悶絶する剣の溜息を子守唄に、今日も穏やかに、そしてちょっぴり甘く更けていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ