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ひだまりのFランク冒険者  作者: みなと劉


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273/346

第273話

リルドは肩に小さな蝙蝠を乗せたまま、懐かしい我が家の門を潜った。

「今日からここが君の家だよ。仲良くしようね」

蝙蝠は嬉しそうに羽をパタパタとさせ、リルドの首筋に鼻を寄せた。

夕食には、市場で買った新鮮な果物を小さく刻んで出した。蝙蝠はそれを美味しそうに頬張り、リルドが作った特製のポトフの香りに包まれながら、すっかりリラックスした様子で食卓を囲んだ。

「さて、夕飯も食べたし、今日こそはお風呂に入ろうか」

リルドが脱衣所で服を脱ぎ始めると、肩にいた蝙蝠が期待に満ちた目でリルドを見つめ、バタバタと浴室の扉を叩いた。

「えっ、君もお風呂に入りたいの? 蝙蝠ってお湯が好きなのかな……。じゃあ、一緒に入ろうか」

浴室に入り、リルドが手桶で温かいお湯を優しくかけてあげると、蝙蝠は驚くこともなく、むしろ気持ちよさそうに目を細めた。湯船の縁に止まり、お腹までお湯に浸かった蝙蝠は、まるで温泉に浸かる熟練の冒険者のように「うぃー……」とでも言いたげな、至福の表情を浮かべている。

「あはは! なんだか『親父』さんみたいだよ、君」

リルドがクスクスと笑うと、蝙蝠も満足げに「キー!」と鳴いてニコニコと笑い返した。その光景を、脱衣所に残されたラッファードが、戸を突き破らんばかりの振動で呪い始めた。

『くそぅ!! 卑怯なり蝙蝠! 我も、我も一緒に入ってお湯の温もりを知りたいのだ! なぜ剣に風呂の権利がないのだ!!』

「だから、ラッファードは錆びちゃうでしょ! ほら、蝙蝠さんも言ってるよ」

「しゅいしゅい!」と蝙蝠が同意するように羽を振ると、ラッファードは絶望のあまり沈黙した。

お風呂上がり、リルドはふかふかのタオルで蝙蝠の体を丁寧に拭いてあげた。すっかり湯冷めして眠くなったのか、蝙蝠はリルドの胸元に潜り込んでくる。

「今日は疲れちゃったね。一緒に寝ようか」

ベッドに入ると、蝙蝠はリルドの腕の中にすっぽりと収まり、幸せそうな寝息を立て始めた。

『……くそぅ……。昨夜までは我が独占しておった「抱き枕」の座が……。リルドよ、お主という男は……。……我も、磨き粉で磨かれるより、お湯が……お湯が良かった……』

「(あはは、おやすみ、ラッファード。おやすみ、蝙蝠さん)」

月明かりが差し込む寝室で、嫉妬に燃える魔剣と、お湯を満喫した蝙蝠、そして優しい飼い主。

万年Fランク冒険者の日常は、新しい「お風呂仲間」を迎え、少し狭くなったベッドの上で、今日も温かく更けていく。

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