表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひだまりのFランク冒険者  作者: みなと劉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/66

26話

翌朝、リルドはギルドの喧騒をBGMに、ゆったりとした動作で掲示板を眺めていた。

「今日はどれにしようかな。お散歩ついでにできる、のんびりしたのがいいな」

指先で依頼札をなぞりながら、彼は一枚の簡素な紙を手に取った。『街道沿いの魔導灯の点検』だ。派手さはないが、安全な街道を維持するための大切な仕事だ。

リルドはそれを受付へ持っていった。

「おはよう、受付さん。今日はこれをお願い」

「おはよう、リルドさん。点検ね。ランドケーブルの灯を補充するだけだから、散歩にはぴったりね。でも夜道には気をつけて」

街道に出ると、等間隔に設置された魔導灯が並んでいる。この灯には「ランドケーブル(大地の脈)」から引き出した魔力が込められており、その独特の輝きは魔獣が嫌って近寄らない性質を持っている。

リルドは一つ一つの灯に手を添え、魔力の流れを整えていく。

「よしよし、これで今日も旅人のみんなをしっかり守ってね」

彼が触れると、灯火はいつもより一層澄んだ光を放ち、街道を優しく照らし出した。

点検を終えての帰り道、街道から少し外れた草むらで、ガサガサと音がした。

様子を見に行くと、そこには一匹の「スウェアキャット」がうずくまっていた。三つの尻尾を持つ美しい魔獣だが、後ろ足を深く切っているようだ。

「おや、ひどい怪我だね。大丈夫かい?」

リルドが近づくと、スウェアキャットは耳を伏せ、鋭い牙を剥いて威嚇した。

「しゃーっ! ぐるる……!」

だが、リルドは怯むことなく、穏やかな微笑みを浮かべてしゃがみ込んだ。

「怖くないよ。ほら、このお薬を塗ればすぐに楽になるから」

リルドはポーチから、昨日採取した銀縁草で作った特製の軟膏を取り出し、魔法のように素早い手つきで傷口に塗布した。彼の指先から伝わる温かな魔力に、スウェアキャットの警戒心はみるみるうちに溶けていく。

「……なん、……にゃん」

さっきまでの猛々しい態度はどこへやら、スウェアキャットはリルドの手のひらに額をこすりつけ、甘えたような声を漏らした。

「よしよし、もう歩けるね。夜道は危ないから、気をつけるんだよ」

リルドが立ち上がると、スウェアキャットは名残惜しそうに一度振り返り、森の奥へと軽やかに消えていった。

夕闇が迫る頃、リルドはギルドに戻った。

「受付さん、点検終わったよ。どの灯もバッチリ光ってるから、今夜も安心だね」

「お疲れ様、リルドさん。あ、なんだか少し猫の毛がついているわよ? また途中で寄り道したのかしら」

受付嬢がクスクスと笑う。リルドは「まあね」とはぐらかし、報酬の銅貨を受け取った。

「さて、帰りに美味しいお魚でも買って帰ろうかな」

万年Fランク冒険者の日常は、今日も誰にも誇ることなく、小さな命を救いながら、穏やかに一日を終えるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ