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ひだまりのFランク冒険者  作者: みなと劉


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258/347

第258話

朝日が差し込む窓辺で、リルドはゆっくりと目を覚ました。自分の持ち家であるこの小さな一軒家は、木の温もりに溢れ、静かな朝の空気に包まれている。枕元では、昨夜の「抱き枕事件」で少々お疲れ気味のラッファードが、鞘を鳴らして声をかけてきた。

『おはよう、リルド。……お主、今朝も無意識に我を抱え込もうとしておったぞ。まあ、我が器用に身をかわしたのだがな。……さて、今日はギルドから「風邪に効く生薬」の緊急依頼が来ておった。お主の調合の腕の見せ所だぞ』

「おはよう、ラッファード。あはは、ごめんね。……そうだね、最近急に冷え込んできたから。みんなが元気になるような、特製の薬を作ろう」

リルドは手早く身支度を整えると、玄関の扉を開けた。すると、そこには一匹の茶トラ猫が丸くなって座っていた。リルドが近づくと、猫は「にゃあ」と短く鳴いて、門番のようにリルドを見上げてから、ゆっくりと道を譲ってくれた。

「いってきます」

リルドはまず市場と生薬店を回り、必要な材料を揃え始めた。

「すみません、一番良い生姜と大葉をください。あと、しっかりとした大蒜にんにくも」

市場の威勢の良い声に包まれながら、リルドは手際よく材料を選んでいく。生薬店では基本となる薬草を手に入れ、準備は整った。ギルドの錬金室に入ると、リルドは独自のレシピを組み立て始めた。

『……リルドよ。本来のレシピにはないものまで用意しておるようだが?』

「うん。これは僕のオリジナル。風邪を吹き飛ばすには、栄養と温まることが一番だからね」

リルドは手際よく「生姜」を刻み、「大葉」を細かく叩く。さらに、本来の生薬に「蜂蜜」の甘みを加え、そこへリルド独自のこだわりである「大根おろし」と「大蒜」を投入した。立ち上る湯気からは、生薬の独特な香りと共に、生姜の刺激的な香りと大蒜の力強さ、そして蜂蜜の甘い香りが混ざり合って漂い出す。

『……なんと。大根おろしで喉を労り、大蒜で活力を与え、蜂蜜で飲みやすくするのか。お主の調合は、もはや医学の域を超えて「愛情」の料理だな』

「よし、これで完成だね。特製生薬ドリンク、お湯割りだよ」

リルドは完成した琥珀色の液体を瓶に詰め、温かいうちにギルドの受付へと運んだ。

「ただいま、受付さん。風邪の生薬、持ってきたよ。蜂蜜と大根おろし、大蒜を入れた特製なんだ」

受付さんは、瓶から漏れ出るパワフルかつ甘い香りに驚いた顔をした後、ぱあっと表情を明るくした。

「おかえりなさい、リルドさん! まあ、なんて体に良さそうな香り……! 喉が痛い冒険者たちも、これなら喜んで飲んでくれそうです。リルドさんの優しさが詰まったオリジナル生薬、きっと大評判になりますよ。はい、こちら報酬の銅貨です」

「ありがとう。……帰ろうか、ラッファード」

『うむ。誰かの健康を願い、知恵を絞って形にする。……今日のお主は、街の小さな救世主であったな。さて、今夜こそは……その、静かに寝てくれよ?』

「(あはは、善処するよ。おやすみ、ラッファード)」

報酬の銅貨をチャリンと鳴らし、自分でも少し味見をしてポカポカと温まった体で、リルドは茜色の道を歩き、愛する我が家へと帰っていった。

万年Fランク冒険者の日常は、独自の工夫と優しさを混ぜ合わせながら、今日も健やかに、そして温かく更けていく。

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