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ひだまりのFランク冒険者  作者: みなと劉


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210/346

210話

翌朝、リルドは昨日の薪運びで少しだけ心地よい筋肉痛を感じながら、ゆっくりと身体を伸ばした。

『リルドよ、おはよう。今朝のお主は……ふむ、昨日運んだ薪の「木の香り」がほんのりと移っておるな。まるで森そのものに抱かれておるようで、我も非常に落ち着くぞ。……あ、いや、変な意味ではないぞ!』

「……おはよう、ラッファード。大丈夫、ちゃんと真面目な感想として受け取っておくよ」

紳士的になろうと努める聖剣を背負い、リルドはいつものようにギルドへ。

ギルドの扉を開けると、そこは少し「冬の足音」を感じさせる活気に溢れていた。

「おい、昨日の薪の素材、乾燥させる前に少し削ってみたんだが、驚くほど魔力伝導率がいいぞ。あれ、ただの倒木じゃないだろ!」

「また『森の管理人』の仕業か?」

リルドは「(……ラッファードが見つけてくれたのが、良い木すぎたかな)」と心の中で苦笑いしつつ、目立たないように掲示板の端へ。

今日の依頼は、『街の共同井戸のバケツ修理』と『広場の街灯の清掃』。

受付へ持っていくと、受付さんは書類に判を押しながら、少しだけいたずらっぽく笑った。

「おはようございます、リルドさん。最近、あなたが街のインフラを陰で支えてくださっているおかげで、街の人たちの顔が明るい気がします。これも大事な冒険者の仕事ですね」

「……ただの雑用だよ。いってきます」

まずは広場の街灯清掃。リルドは「魔力操作」で布に薄く膜を張り、油汚れや煤を魔法のようにスルスルと落としていく。

『……リルド。その街灯の奥、魔石が少し曇っておるな。我の魔力を少し分けてやろう……。ほれ、これで夜になれば、この広場は聖都のような輝きを放つはずだ』

「(ありがとう。ラッファードのおかげで、街が明るくなるね)」

午後からは、井戸で壊れたバケツの取っ手を修理したり、錆びついた滑車に油を差したりと、小まめに動き回った。派手な魔法も剣技も使わないが、リルドが触れるたびに、街の道具たちが息を吹き返していく。

夕暮れ時、リルドは自分たちの手で整えられた街灯が、ぽつり、ぽつりと温かい光を灯し始めるのを眺めていた。

「ただいま、受付さん。街灯も井戸も、全部確認しておいたよ」

「おかえりなさい、リルドさん! 見てください、広場の街灯が今日は一段と澄んだ光で輝いています。みんな、とても喜ぶと思います。はい、報酬の銅貨です」

「ありがとう。……さあ、帰ろうか、ラッファード」

『うむ。暗闇を照らす光を守る……。それもまた、一振りの剣としての誇りだ。……さて、今夜は、かつて勇者と訪れた「不夜城」のきらびやかな思い出話でもしてやろう。お主の磨いた街灯に負けぬほど、美しい物語だ』

報酬の銅貨を握りしめ、リルドは優しい光に包まれた街路を歩く。

「さて、僕も今夜は、街灯の温かいオレンジ色を思い出しながら、ラッファードの少しロマンチックな昔話でも聞いて、ゆっくり休もうかな」

万年Fランク冒険者の日常は、誰かの足元を照らす小さな光を守りながら、今日も穏やかに、地味に深まっていく。


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