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ひだまりのFランク冒険者  作者: みなと劉


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180/346

180話

鳥のさえずりで目が覚めると、枕元でラッファードが「おい、リルド! 起きろ! 今日は空の色が最高だぞ、我の刀身を反射させるのにこれ以上ない輝きだ!」と、朝からハイテンションで叫んでいた。

「……五月蝿いなぁ。まだ太陽が昇ったばかりだよ」

リルドは欠伸をしながら、隣で丸まって寝ているうさぎの頭を撫でる。昨夜、ベッドの端で一緒に眠ったラッファードは、心なしかいつもより声に艶がある気がして、リルドは少しだけ頬を赤くした。

ギルドに向かう道中、ラッファードは昨夜の余韻を引きずっているのか、妙に饒舌だった。

『リルドよ、昨夜の抱き心地は悪くなかったぞ。お主の体温は、かつての聖域の泉よりも清らかで温かい……』

「(だあぁ! 外でそういうこと言わないで!)」

リルドは顔を真っ赤にして、背中の剣を布の上からペシッと叩く。

ギルドに到着すると、掲示板の前で冒険者たちが「おい、『時の剣士』の号外が出たぞ!」と盛り上がっていた。

「号外……?」

リルドが恐る恐る掲示板を覗くと、そこには『謎の魔法剣士、ラルドの森に現る! 水の刃で炎を断つその姿、正体は伝説の再来か!?』という派手な見出しが躍っていた。

「(う、うわぁぁ……あんな一瞬だったのに、もう記事になってる……)」

リルドが冷や汗を流していると、ラッファードがこれ見よがしに笑う。

『はっはっは! 良いではないか、リルド。我とお主の華麗な共演が歴史に刻まれる第一歩だぞ!』

いたたまれなくなったリルドは、一番地味そうな依頼を二枚、ひったくるように剥がした。

『廃屋のネズミ捕り』と『井戸の底の清掃』。

「今日は絶対、目立たないようにするんだから……」

受付で手続きを済ませ、リルドは逃げるように現場へ向かった。

廃屋でネズミを追いかけ、井戸の底で泥まみれになりながら、リルドは黙々と作業をこなした。

『リルド、その隅だ! ネズミが逃げたぞ! 体術・足運び、三段!』

「そんなの使わなくても捕まえられるよ!」

『いや、美しく捕まえてこそプロだ!』

文句を言い合いながらも、作業はあっという間に終わった。泥だらけになったリルドを見て、うさぎが「ぴっぴ(お疲れ様)」と労うように鼻を寄せた。

帰り道、夕暮れに染まる街並みを歩きながら、ラッファードが不意に真面目なトーンで話し始めた。

『リルドよ。……お主は、Fランクのままで良いのか? その気になれば、世界を揺るがす英雄にだってなれる。我という翼があるのだからな』

リルドは足を止め、茜色の空を見上げた。

「……英雄なんて、僕には似合わないよ。こうして、困っている人の井戸を掃除したり、ラッファードの昔話を聞いたり、うさぎ君と美味しいご飯を食べたり……そんな毎日が、一番僕らしいんだ」

『……ふん。お主らしい、実につまらぬ、そして……眩しい答えだ』

ラッファードは少しだけ照れ隠しのように震えた。

ギルドに戻り、泥だらけの姿で報告を済ませる。

「ただいま、受付さん。井戸もネズミも、バッチリだよ」

「おかえりなさい、リルドさん! ふふ、今日はまた一段と『日常の守護者』って感じの汚れ方ですね。お疲れ様です!」

報酬の銅貨を受け取り、リルドは帰りに「特製の揚げパン」を三つ買った。

「さて、僕も今夜は、泥を綺麗に洗い流して、ラッファードに『かつての英雄たちの意外な弱点』でも語ってもらいながら、揚げパンを頬張ってゆっくり休もうかな」

万年Fランク冒険者の日常は、伝説の聖剣を「日常」という温かな鞘に収めながら、明日への小さな希望と共に更けていく。


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