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ひだまりのFランク冒険者  作者: みなと劉


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168/346

168話

部屋の灯りを落とし、僕は壁に立てかけた剣に向き直った。ずっと心に引っかかっていたことを確かめるために。

「あのさ……僕が男だって、ちゃんと知ってるよね?」

『それは知っている。……だが、可愛いことも知っているぞ。男だろうが何だろうが、美しいものは美しいのだ』

「ならどうして、僕がお風呂に入る瞬間を狙ったり……布団に入ろうとしたりするの? 相手が男なら、そんなこと普通しないでしょ?」

僕がジト目で問い詰めると、剣は一瞬沈黙し、それから震えるような声で言葉を濁した。

『……我にも、抗えぬ本能というものがあるのだ。主の、その……線の細い身体や、時折見せる……』

「(やっぱり確信犯だ……)」

僕はため息をつき、もう一つの核心に触れることにした。

「ねえ……ラッファードって、君の名前?」

『!!!……い、いや……ち……ちがっ! 我は名もなき聖剣で……ただの……』

明らかに動揺して、念話が激しく乱れている。

「やっぱそうなんだ」

『…………』

僕は立ち上がり、とある本を本棚から取り出して剣に見せた。

『…………あ』

それは紛れもなく、ギルドで流行っていたファンタジー小説『勇者ラッファード』。表紙には、今の剣の意匠とよく似た剣を携えた、凛々しい青年が描かれている。

それから二人は語り合った。

かつての栄光、共に戦った仲間たちのこと。そして、なぜ英雄と呼ばれた男が、今ではこんな「スケベな聖剣」に成り下がってしまったのか。

『……長く孤独だったのだ。誰も我を抜けず、誰も我の声を聞かず、ただ石の中で朽ちるのを待っていた。そんな時に、お主のような……温かくて、少しお節介な男に抜かれたのだ。……つい、浮かれてしまったのかもしれん』

寂しげなラッファードの声に、僕は少しだけ胸が痛くなった。

夜、リルドはベッドの端を開けて、そっと手招きをした。

「さあ、おいで」

『え?』

「今日くらいは一緒に寝てやるから。……ただし、変なことしたら本当に溶鉱炉行きだからね?」

僕は剣を抱え、一緒に眠ることにした。金属の冷たさは、僕の体温ですぐに和らいでいく。リルドの心音を聞きながら、剣は静かに、深く、眠りに落ちていった。

『(……ああ、温かい。血を浴びるよりも、魔力を吸うよりも……これもいいな)』

万年Fランク冒険者の日常は、伝説の勇者の孤独をそっと抱きしめて、かつてないほど穏やかな夜へと溶けていった。


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