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ひだまりのFランク冒険者  作者: みなと劉


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167/346

167話

翌朝、寝不足気味の頭を抱えてギルドへ向かう。

ギルドで掲示板をみるリルドに、剣は朝から呪文のように念話を送り続けていた。

『温泉……温泉……露天風呂……混浴……』

「(うるさいなぁ……昨日からずっとじゃないか。 どんだけ執着してるのさ)」

僕は剣の声を無視して、新しい依頼を探す。

すると近くで、冒険者はファンタジー小説『伝説の勇者ラッファード』の話をしていた。

「知ってるか? 勇者ラッファードは最期に愛剣に魂を宿して、いつか現れる美しき守護者のために眠りについたんだってよ」

「へぇ、ロマンがあるなぁ!」

その話が出た瞬間、背中の剣が急にそわそわしている。

「(……ラッファード? 実は本人とか? ……いや、こんなにスケベな勇者がいるわけないよね)」

呆れている僕を余所に、肩のうさぎがぴっぴと言って、とある依頼書をとんとんする。

それを受け取り、内容を依頼書の確認する。

「『迷い犬の捜索』と『裏通りのゴミ拾い』か。うん、平和でいいね」

受理を済ませ、テキパキと仕事をこなしていく。平和な仕事は心が洗われるようだ。

だが、平和であればあるほど、背中の「煩悩の塊」は加速する。

帰り道では、もう我慢の限界を超えたらしい剣が、最大音量(念話)で叫び始めた。

『温泉……リルド……裸体! 温泉……リルド……裸体!! 我はそれを見るまで死んでも死にきれんぞ!!』

あまりのしつこさと内容の酷さに、僕の堪忍袋の緒がブチリと切れた。

「だあ! うっせーぞてめーは!! 温泉! リルド! 裸体ってばっかじゃねーの!?」

「えっ」

「うわっ、なんだ!?」

怒鳴り散らした直後、近くにいた冒険者がビックリしているのが目に入った。

あ。しまった、口に出てた。しかも内容が最悪だ。

「あ……」

周囲の「あいつ、自分で自分の裸体の話してるぞ……」という痛いような視線に耐えられず、そそくさとリルドは帰る。

顔を真っ赤にしたまま、逃げるようにギルドに報告する。

「ただいま、受付さん……。依頼、終わったから……」

「おかえりなさい、リルドさん! ……あら? なんだか今日は、いつもよりさらに『触れてはいけない雰囲気』を纏っていますね。何か……その、大変な誤解でも受けました?」

「……聞かないで。今夜、この剣を溶鉱炉に叩き込んでくるから」

『ぎゃあああ!? すまん! 出来心だったんだ! 裸体よりも命が大事だ!!』

報酬の銅貨をひったくるように受け取り、僕は猛烈な勢いでギルドを後にした。

「さて、僕も今夜は、自分の失言を枕にぶつけて悶絶しながら、苦いお茶でも飲んでさっさと寝ることにするよ……」

万年Fランク冒険者の日常は、聖剣のせいで社会的な死(自爆)を迎えつつ、明日への不安と共に更けていく。


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