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ひだまりのFランク冒険者  作者: みなと劉


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162/346

162話

静まり返ったラルドの街の宿。深夜、事件は起こる。

鞘に収まっているはずの剣が抜き足差し足(?)をして、リルドの寝ている場所へ移動を開始した。ズルズルとシーツを這い上がり、リルドの顔のそばで停止する。

『……はあ……なんと……可愛らしい。寝顔は天使のようではないか』

「う……うーん」

リルドが寝返りを打つ。その拍子に少しだけはだけた胸元を見て、剣は激しく震えた。

『(お……、お……おお! 好機!)』

ゆっくりとリルドに気づかれないように、布団に潜り込む剣。ひんやりとした刀身がリルドの脇腹に触れる。

『(お……おお……これが薄……いやリルドの身体……。案外、柔らかいではないか……)』

興奮のあまり、剣が思わずがしっとリルドの腰に抱きついた、その時。

「おい……てめー……何してる?」

「視野拡大」も「聴覚向上」も、眠っていても最低限は働いている。ニッコリしてリルドは剣に向かって言う。その瞳は、昨日魔獣を屠った時よりも冷たく冴え渡っていた。

剣は脂汗(冷や汗)を出し……たじたじになって震え上がる。

『い……いや……我は、お主と一緒に寝たいだけで……』

「それだけじゃねーだろ? どこ触ろうとしてた?」

『……』

「無言は肯定と取るぞ?」

リルドは無造作に剣の柄を掴むと、窓から投げようとする。

『まてまてまて!? ここは三階だぞ!? 伝説の聖剣が路地裏に突き刺さる姿を見たいのか!?』

「じゃあ? 何をしようとした? 正直に言え」

『我は……お主の……おま……お股の……!』

がらがら。ぶんっ。ぴしゃ。

「いやーだ!」という情けない絶叫を残し、聖剣は夜の闇へと消えていった。

「ふう……。俺は男だと何度言えば……。ちっ、変な気分になる。さっさと寝よっと」

リルドは乱れた布団を叩き直し、無理やり目を閉じた。

一方、宿の外の茂みでは、聖剣が「冷たい……地面が冷たい……」と泣き言を漏らし、それを見物に来たうさぎが「ぴっぴ(自業自得だね)」と冷たく鼻を鳴らしていた。

万年Fランク冒険者の出張初日は、聖剣のセクハラ(?)を物理的に排除して、波乱のうちに幕を閉じた。


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