158話
窓から差し込む朝日に目を細めていると、頭の中に直接、野太い声が響き渡った。
『起きろ! 薄のろま』
「え?」
慌てて辺りを見回すが、部屋には僕とうさぎしかいない。
『起きたか薄のろま』
「誰だよ? どこだよ!」
「ぴっぴっ?」とうさぎも首を傾げている。
『ここだ、剣だ』
「は? は?」
『昨日抜いてくれてありがとよ……俺はかの伝説の勇者、の魂が宿りし聖剣……』
そこまで言わせず、僕は無意識に柄を掴んで窓から放り投げた。
『やめんか! バカモノッ!!』
庭から聞こえてきた悲鳴のような怒声に、僕は深くため息をついた。
しぶしぶとその剣と、何故かうきうきのうさぎを連れてギルドに向かう。
道中、剣が「俺の全盛期はだな……」と喋り続けていたが、周りの人は誰も反応しない。声はどうやらリルドとうさぎにのみ聞こえるみたいだ。
ギルドに着くと、依頼書をまたまたうさぎがぽんぽんする。
『ほほう! このうさぎ、なかなかに鋭い目利きをしていやがる。この依頼、裏があるぞ』
「(……はぁ、ため息しか出ないよ)」
僕は二つの「騒がしい相棒」を連れて、依頼書の場所へ向かうことにした。
現場は一見、ただの森だったが、突如として強力な魔獣が姿を現し、戦闘になる。
『おい薄のろま! 我を使え! 本物の輝きを見せてやる!』
「う……うん。わかったよ!」
仕方なく剣を抜くと、刀身が眩い光を放ち、僕の魔力と共鳴した。一振りするだけで空気の壁が弾け、魔獣を圧倒する。
「(すごい……重さを感じないのに、威力が桁違いだ……!)」
無事に解決し、刀身を拭いながら帰り道を歩いていると、遠くから冒険者が血相変えて走ってくるのが見えた。
「リルド! 無事か! さっきこの先で凄まじい魔力の爆発を感じたんだ!」
「あ、いや、僕は大丈夫だ……わわっ!?」
またしても、説明する間もなくリルドを横抱きで抱えてギルドに猛ダッシュで連れ帰られてしまった。
「ちょ、降ろして! 剣が、剣が地面に当たっちゃう!」
『おい! この男に言え! 聖剣を地面に擦るなと!!』
そのままギルドに運び込まれ、僕はぐったりしながらギルドに報告する。
「ただいま、受付さん……。調査、完了だよ。それと、この剣……やっぱり少し変かもしれない」
「おかえりなさい! 抱えられて帰ってくるのが、すっかりリルドさんの定番スタイルになりましたね。その剣、なんだか昨日よりピカピカしてませんか?」
「……気のせいだといいんだけどね」
報酬を受け取り、僕は「うるさい剣」を布でぐるぐる巻きにして背負い直した。
「さて、僕も今夜は、この剣に耳栓をする方法を考えながら、静かにお茶でも飲んでゆっくり休もうかな」
万年Fランク冒険者の日常は、伝説の魂にまで説教をされながら、ますます賑やかに更けていく。




