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ひだまりのFランク冒険者  作者: みなと劉


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157/346

157話

ふかふかの感触に包まれて、翌朝、うさぎを抱えて寝ていたが起きる。

「……おはよう。君、今日もいるんだね」

うさぎは眠そうに耳を震わせたあと、当然のように僕の着替えを待っていた。

準備を整え、ギルドにうさぎを肩に乗せて向かう。

昨日の「美少女剣士」騒動でまた絡まれるかと身構えていたけれど、扉を開けると意外にも空気は落ち着いていた。

ギルドでは美少女剣士の話など一切なく、冒険者たちは熱心に本を片手に話し込んでいる。

『このファンタジー小説読んだか?』『いやまだなんだ』とか『ヒンメルの秘薬』っていう小説面白い、なんて会話があちこちから聞こえてくる。どうやら新しい流行が、僕の不名誉な噂を上書きしてくれたみたいだ。

「(助かった……。小説の力ってすごいなぁ)」

ほっと胸を撫で下ろしていると、肩のうさぎがまたぴっぴっと依頼書を叩く。

指し示されたのは、薄暗い羊皮紙に書かれた『遺跡の調査』。

「(また何かあるぞこれは……。でも、君が選ぶなら仕方ないね)」

街の郊外にある古い神殿跡に到着し、遺跡の調査開始だ。

「視野拡大」で崩れかけた天井を警戒し、「聴覚向上」で罠の作動音がないか探る。静寂に包まれた広間へ進むと、そこだけ空気が澄んでいる場所があった。

変な剣が中央に刺さっている。

どこか古めかしく、けれど刀身には不思議な紋様が刻まれていた。うさぎはぴっぴと言って、まるで抜けと言ってるようだ。

「(抜けるわけないよ……こんな剣。こういうのは選ばれた勇者様がやることで、僕みたいなFランクが触っていいもんじゃ……)」

そう言いながら、確認のために柄にそっと手をかけて力を入れる。

すると、抵抗も音もなく、するりと抜ける。

「(あら?)」

重さも感じない。まるで最初から僕の手に吸い込まれるのを待っていたかのように、剣はしっくりと馴染んでしまった。

「(……これ、どうしよう。報告書に『抜けちゃいました』って書くの?)」

当惑したまま、僕は抜けた剣を背負ってギルドに報告するために戻ってきた。

「ただいま、受付さん。遺跡の調査、終わったよ。あと……これ、刺さってたのが抜けちゃったんだけど……」

「おかえりなさい、リルドさん! え……その剣、もしかして遺跡の封印の中枢だったんじゃ……。あ、でも見た目が綺麗ですし、装飾品として受理しておきますね!」

意外とあっさりした対応に拍子抜けしながらも、僕は報酬の銅貨を受け取った。背中でうさぎが「してやったり」という顔で鼻を鳴らしている。

「さて、僕も今夜は、この不思議な剣が光り出したりしないことを祈りながら、温かいミルクティーでも飲んでゆっくり休もうかな」

万年Fランク冒険者の日常は、伝説級のアイテムを「拾い物」として扱いながら、穏やかに更けていく。


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