表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひだまりのFランク冒険者  作者: みなと劉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

142/346

142話

鳥のさえずりで目を覚まし、僕はいつものようにゆっくりと身支度を整えた。窓から差し込む柔らかな光を浴びながら、今日という一日を丁寧に始める。

ギルドの扉を開けると、朝の活気ある匂いが鼻をくすぐった。僕は掲示板の前へ歩み寄り、迷うことなく一枚の依頼札を手に取る。

「今日はこれにするよ、受付さん」

「おはようございます、リルドさん! 『薬草と発酵石の採集』ですね。発酵石は湿った岩場にしかないから足元が滑りやすいですよ、気をつけてくださいね」

受付さんから受理印をもらうと、僕は採集用の籠を背負い、目的地である森の深部へと移動を開始した。

依頼書の場所に到着し、仕事開始だ。

「視野拡大」を使い、湿り気を帯びた岩影に隠れるように光る発酵石を見つけ出す。さらに「嗅覚向上」を研ぎ澄ませて、特定の薬草が放つ微かな青い香りを辿っていく。

特別な力を使って一瞬で籠を一杯にすることはない。僕は指先に伝わる土の感触を楽しみながら、一株ずつ、石の一つずつを、感謝を込めて丁寧に拾い上げていった。

「(……よし、これで全部だね。良いものが採れたよ)」

籠を背負い直し、木漏れ日の中をのんびりと帰り道についた時、森の主の一頭であるウルフと出会った。

ウルフは僕を見つけると、警戒するどころか尻尾を振り、親愛の情を込めて僕の頬をぺろぺろと舐めてきた。

「あはは、くすぐったいよ」

僕は笑いながら、そのふかふかな首元を優しく撫でてあげる。ウルフは気持ちよさそうに目を細め、僕の手のひらに頭を預けてきた。

ふと視線を感じて顔を上げると、少し離れた場所で魔獣を警戒していた冒険者たちが、武器を構えたまま呆然と立ち尽くしていた。けれど、僕とウルフが戯れるあまりに穏やかな光景に、彼らも自然と毒気を抜かれたようで、最後には「……なんだ、あいつ」と苦笑いしながら、ほっこりとした表情で僕らを見守っていた。

夕暮れ時、僕はギルドに戻り、いつものカウンターで報告を済ませた。

「ただいま、受付さん。薬草も発酵石も、質の良いものがたくさん採れたよ」

「おかえりなさい、リルドさん! ……あ、さっき戻ってきた冒険者たちが言っていましたよ。森で『狼の聖者』みたいな人を見たって。それ、やっぱりリルドさんのことですよね?」

「あはは、ただの仲良しなお友達だよ」

報酬の銅貨を受け取り、僕は心地よい疲れと共に背伸びをした。

「さて、僕も今夜は、ウルフの温もりを思い出しながら、温かいスープを飲んでゆっくり休もうかな」

万年Fランク冒険者の日常は、森の友人と心を通わせながら、穏やかに更けていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ