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ひだまりのFランク冒険者  作者: みなと劉


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110/346

110話

朝、カーテンの隙間から差し込む光で目を覚ました。窓の外では、小鳥たちが賑やかに歌い、その横の塀の上で三毛猫が「ふわぁ〜」と大きな欠伸をしている。囀りと欠伸の音が混ざり合い、なんとも可愛らしいハーモニーを奏でていた。

「(ふふ、平和な朝だね……。さて、今日もお散歩に行こうかな)」

リルドは軽く身支度を整え、穏やかな足取りでギルドへと向かった。

ギルド内は、数日間にわたるリルドの「受付代理」期間が終わり、どこか平穏(あるいはリルド・ロスによる脱力感)を取り戻していた。リルドは掲示板から、『薬草採取』と『ポーション小の納品』の二枚を剥がし、カウンターへ持っていく。

「おはよう、受付さん。今日からまた冒険者に戻るよ」

「あ、リルドさん! おはようございます。……なんだかリルドさんがカウンターの中にいないと、少し寂しいですね。はい、受理しました。気をつけて行ってきてくださいね!」

リルドはいつもの草原へ向かい、まずは依頼の分と、ポーションの材料となる薬草を丁寧に採取した。

「(さて、ここでお散歩がてら作っちゃおうか)」

リルドはリュックから愛用の乳鉢と、透き通った「濾過石」を取り出した。

普通、ポーション作りには大掛かりな設備が必要だが、リルドは全盛期に培った精密な技術を使い、野外で最高品質の調合を行う。

まずは乳鉢で薬草の繊維を潰し、最も有効な成分だけを抽出する。そこに「濾過石」を通すと、石の魔力が微細な不純物を吸着し、驚くほど澄んだ液体へと変わっていく。

「(……うん、不純物はほぼゼロだね。これなら効き目もいいはずだよ)」

かつて「万能の作り手」でもあった彼にとって、ポーション小を作るのは、まるでお茶を淹れるような気軽な作業だった。

夕刻、リルドは摘みたての薬草と、宝石のように澄んだ『ポーション小』を手にギルドに戻った。

「ただいま、受付さん。納品物を持ってきたよ」

「おかえりなさい! ……ええっ、このポーション、なんですか!? 普通の『小』はもっと濁っているはずなのに、まるで高級な香水みたいに綺麗……」

受付嬢が瓶を光にかざして驚愕している。リルドは「あはは、不純物をちょっと丁寧に取り除いただけだよ」と、いつものように謙遜して笑った。

「これなら怪我をした人も、すぐに元気になると思います。ありがとうございます、リルドさん!」

報酬の銅貨を受け取ると、リルドは夕暮れ時の涼しい風を感じながらギルドを後にした。

「さて、僕も今夜は、薬草の清々しい香りを思い出しながら、温かいスープを飲んでゆっくり休もうかな」

万年Fランク冒険者の日常は、ポーションの一滴にさえ慈しみを込めながら、穏やかに更けていく。


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