中継の街
この辺から時々過去作ネタが小ネタ程度に混ざってます
活気ある交易都市──バルンハイト。
昨日ようやく辿り着いたばかりの町で、ノーザ一行はまずそのギルドに会員登録を済ませた。
そして今日、さっそくこの町での“最初の任務”を受託する。
任務:東方防衛基地への補給路強化計画
内容:中継拠点建設のため、予定地である魔物の谷を攻略せよ。
町一番の道具屋。
旅支度と作戦会議のため、一行は店の奥にある簡易休憩スペースに集まっていた。
ノーザは地図を広げ、谷の位置と地形を確認していた。
「ここが“魔物の谷”…。補給路の要衝になる場所か。それは…ギルドも本腰入れるよな」
サンが隣で地図を覗きこむ。
「兄弟、聞いとるで。あの谷の魔物は神出鬼没巣窟で有名らしいわ。せやけどワイらCランクパーティなら十分イケるやろ!」
リーは棚のポーションを吟味しながら静かに言った。
「補給拠点ができれば、防衛も強化され周囲の村々の安全も物資の供給も盤石になろう…拙僧としても、ぜひ成功させたいところ」
ノーザは頷く。
「うん。この任務は絶対に失敗できない。
魔王を倒すためにも、まずは人々の生活を支える基盤を作らないと」
(ああぁ♡ノーザ様の志♡また惚れる♡)
「ほんなら、そろそろ買うもん決めよか!
矢束と保存食と……あ、兄弟、逃走用煙幕も念の為追加しとこ!」
「あーしは新しい革手袋買う!」
「拙僧は回復薬と……鎮静香を少々」
「後は……そうだな。聖水とロープ、それと地図をもう1枚」
各々が必要な品をカゴに放り込みながら、自然と表情が引き締まっていく。
新たな町での最初の任務。
本格的な“攻略”が、今始まろうとしていた。
必要なアイテムを吟味する中
サンが店先の棚を指差し、目を輝かせた。
「見ろや兄弟!!
火薬樽が“大特価の4割引”やって!!」
赤字覚悟の値札がぶら下がった樽が、ドーンと山積みになっている。
「……え、ほんとだ」
「どや? 次の“魔物の谷”……
爆破してまおうやないか?」
満面の笑み。
完全に悪い事を思いついた子供の目をしている。
隣でリーが腕を組み、意外にも真面目に考えだした。
「ふむ……確かに、魔物の谷は地形が複雑で殲滅戦は不利……。物騒が過ぎるかもしれぬが…入口を封鎖し、魔物を焼き払うというのは理に適っている……かもしれぬ」
「いやいやいやいや!」
ノーザが慌てて手を振る。
「爆薬なんて扱ったことないし!
暴発したら俺達ごと吹っ飛ぶだろ!!」
「なんや兄弟、ノリ悪いなぁ〜。
ロマンやで? ドーン!って」
「拙僧も少々興味はあるが……
ノーザ殿が不安がるのももっとも……」
割と爆薬に乗り気な二人、一方ノーザは渋る
「不安どころか“やったら死ぬ未来”しか見えないんだけど!!」
「あ、ほな試しに小さい方の樽だけ買うか?」
「買わない!!」
サンがまだ火薬樽を名残惜しそうに見つめていると、ニーナがすっ……と二人の間に割って入った。
腕を組み、凛とした顔で二人を窘めるように
「サンさん、リーさん。
ノーザ様は爆薬なんて使いません」
「え、なんでそんな断言すんねん?」
「ノーザ殿は危険な手段を嫌うから、か……?」
ニーナは胸を張り、誇らしげに語る。
「ノーザ様はね、敵がどんな悪魔だろうと
必要以上に痛めつけたりしません。
“足の骨砕いてから海に突き落としたりしないし”、
“魔物の尿路管に石詰めないし”、
“魔族の居城に毒ガスも撒かないし”、
“悪役令嬢口説いてお金貢がせたり”
絶対にしないんです。
全てに慈悲と誠実さと武人の誉を忘れない方なんです!」
サンとリーは顔を見合わせ、
「ま、まあ……ニーナちゃんがそこまで言うなら……」
「む、むぅ……心得た……」
と、言い切るとニーナは火薬コーナーから離れた。
ニーナさん、
君の将来の息子は今言った事全部やるぞ。
……母は知らぬほうが幸せかもしれない。
買い物に戻ると、別の棚で買い物をしていたニーナとヴィヴィ。
革手袋を選びながら、ヴィヴィがひそひそ声で切り出した。
「……ねぇニーナ。
ノーザの固有スキル、見たか?」
ニーナは真剣な表情で頷いた。
「ええ……“心頭滅却”……。
煩悩を断ち切るノーザ様の精神力の象徴。
ノーザ様の意志の強さが形になったようなスキル……。」
二人、同時に青ざめる。
「……あれじゃあ……どんなに言い寄っても振り向いてくれないじゃないか!?」
「そ、そうなんです!
あれでは色仕掛けも……押しの強さも……
全部ノーザ様が精神で弾いてしまいます……!!」
「あーーーもう!なんかスキル剥がせる職業とか無いのかい!?」
「あります!“スキルチューナー”というレア職が……!その人を探し出して──」
「次は“プレイボーイ”とか“色欲増幅”とか付けて貰おう!」
「それです!ノーザ様がエッチになれば……!!」
──その瞬間。
背後から冷たい声が落ちた。
「聞こえてるぞ……」
「ひっ」
振り返れば、
ノーザは買い物カゴを持ったまま、
目だけ笑っていない。
「お前ら……
俺に何を付けようとしてるんだ?」
「い、いやその……これは純粋な…研究で……!」
「つまりノーザがあーし等にもっと興味を持ってくれれば旅も円満で……!」
「反省しろ」
女子二人、耳を引っ張られ店の隅へ連行。
「「痛ぁい!!」」
その日の午後──“魔物の谷”に到着
馬と歩調を揃えながら数時間。
太陽が西へ傾き始めた頃、ノーザ一行はついに目的地へ到着した。
断崖絶壁の上──
そこから見下ろす谷は、思わず息を呑むほどの光景だった。
風が涼しく吹き抜け、緑の葉がこすれる優しい音が響く。
谷底には透き通った川がゆるやかに流れ、太陽光を反射してきらきらと輝いている。
鳥のさえずりが遠くに聞こえ、白い花が岩肌に咲いていた。
「……ここが“魔物の谷”、か」
名前から想像していた荒れ地や瘴気とはまるで違う。まるで“自然の楽園”のようだ。
「なんだい……ただの綺麗な河谷じゃん。
魔物の巣って感じじゃないけど?」
サンも目を細めて川を眺めた。
「水が澄んどるなぁ……魚も泳いでるで。
ほんまにここが危険地帯なんか?」
リーは地形を観察しながら静かに言う。
「自然の魔力濃度が高い土地というものは、
外観が穏やかでも“内側”が異常ということもあります。油断は禁物ですぞ」
ニーナは川の流れを見つめながら、小さく呟く。
「……魔力の流れが、少し不自然です。
水は澄んでいるのに、空気の層が歪んでいる……。
隠蔽系の魔物が潜んでいる可能性があります」
ノーザは剣の柄を握り、気を引き締めた。
「よし、行こう。
見た目が綺麗でも、ここは確かに“魔物の谷”だ。
……全員、気をつけて」
ノーザたちは崖の縁まで進み、下をのぞき込む。
しかし躊躇は一切なし。
リーが静かに両手を合わせ、跳躍力強化魔法を唱えた!
「では──参る。猿田彦跳躍術!」
仲間全員の身体がふっと軽くなり、脚に力が満ちていく。
「おおっ!?マジで身体が軽い!!うわっ!たのしっ!!」
ヴィヴィは興奮のまま、すでに崖を軽快に跳んでいく。まるで赤い山猫。
サンも同じく跳躍し、岩肌を蹴って飛び移りながら笑った。
「ホンマや!崖を飛び回る山羊みたいやでこれ!
ほら兄弟!置いてくで!」
リーは涼しい顔で三回転しながら降りていった
そしてノーザとニーナ。
ラヴズへそっと触れ、浮遊魔法を唱えた!
浮遊魔法―――レッドブルウィング《翼を授ける》
赤い光がラヴズを包み──
ふわり、と馬体が宙に浮いた。
「うおっ!?
凄いなこれ!!ラヴ……飛んでるよ!!」
ラヴズ(なんか変な魔法かかったんだが……悪くはない)
ニーナはノーザの背中にしがみつき、恍惚とした表情で見つめていた。
(ふへぇぇ〜〜♡
空飛ぶ馬に跨るノーザ様……
かっこよすぎましゅ……♡♡)
「ニーナ?なんか顔赤いよ?」
「っ!! いえ!!なんでも!!」
こうしてノーザを乗せた空飛ぶラヴズは、
ヴィヴィ・サン・リーの跳躍組を追い越す勢いで、
谷底へ一直線に降下するのであった。
跳躍組が軽やかに降り立ち、
ラヴズは羽ばたくようにふわりと着地した。
そこは河谷の底。
小石が敷き詰められた河原で、
清流がさらさらと音を立てて流れている。
ノーザは周囲を一望した。
「……一見したところ、魔物は居ないみたいだけど……」
谷底は美しい。
苔むした岩、澄んだ水、揺れる葦。
風の音と水音だけが響いている。
だが──ニーナの眉がぴくりと動いた。
「……いえ。散っていますが、気配が複数あります。
この範囲全体に……ばらばらと」
「どこだい?あーしには何も見えないよ」
リーは目を閉じ、気配を感じるように静かに呼吸した。
「……確かに、いる。
姿は見えぬが、谷の“気”が乱れておりますな」
サンは矢を一本だけつがえた。
「兄弟……これは“隠れとる”か“潜っとる”感じやな」
ノーザは二刀の柄をそっと握り締める。
「じゃあ……まずは調査からだ。
ニーナ、気配の位置をレーダーみたいに教えてくれない?」
ニーナはすぐに魔力を練り、周囲へ放った。
「はい、解析魔法!」
青白い光が波紋のように谷底へ広がり、
岩影や水辺、草むらから“反応の粒”が浮かび上がる。
「うわ……いるね、めっちゃ」
「ほう……これは本格的な巣やな」
ノーザは深呼吸した。
「まずは……このエリアを全部調べよう。
魔物が潜んでる場所、地形の危険な場所、
補給拠点が作れそうな土地……全部探すぞ」
「任せて下さい、ノーザ様。
反応の強い順に案内します」
風が谷底を駆け抜け、
木々がざわりと揺れた。
まるで──
“この谷にはまだ見えない何かがいる”と告げるように。
ニーナが指し示す方向へ、5人は慎重に進んでいた。
谷底の空気は澄んでいるのに、どこか肌がざらつくような不快感がある。
その時。
木々を揺らすような重い気配が近づく。
「……来ます!!」
ニーナの警告と同時に──
岩陰から何かが飛び出した。
猿型の魔物が地面を這うように突進してきた。
「うわっ!?でっかい猿かよ!」
ノーザは即座に構える。
「……ん?
あれ……見たことない魔物だぞ?」
サンも弓を構えながら眉をひそめた。
「兄弟、ワイもあんなん知らへん。
図鑑にも載らんような姿やで?」
リーも目を細めた。
「気配と形状が一致しませんな……
本来この場にいたような種ではような……」
魔物は雄叫びを上げ、岩を投げつけてきた。
「っ!来るぞ!」
ノーザは前へ飛び出し、
二刀交差の一閃で岩を斬り裂く。
「さっさと倒すよ!!」
ブレイズナックルを叩き込んで魔物をよろめかせ、
サンの矢が目を貫く。
リーがトドメの踵落としを決め、
魔物は崩れ落ちた。
──しかし。
倒れた魔物の身体を見て
ノーザが小さく呟いた。
「……なんか……変だな」
ニーナも膝をついて観察する。
「……やはり。
この魔物の瘴気はこの地の物ではありません…」
「は?どういう事だい?」
ニーナは真剣に言った。
「つまり──この魔物、何処か異境の地から来た可能性があります」
倒れた猿型魔物を観察しながら、
リーがそっと指で妖気の流れをなぞった。
「……この魔物、見た目も纏う妖気も……
本来この地に棲む種ではありません。
この谷の自然環境と“適性”が合っておらぬ」
「つまり……誰かが“持ち込んだ”ってことか?」
リーは無言で頷く。
ニーナは周囲の魔力を再び探査する。
「……谷全体に、広く薄く……“外部由来の魔力”が漂っています。この気配……辿れます」
「ちゅうことは、その“元”を探せばええんやな」
「案外近いかもね!ほら、どんどん行くよ!」
「うん…行こう。
この谷の異変の根っこを、突き止めなきゃ」
風景が変わる──不自然な“一本道”
谷底をさらに奥へ進むと、
景色は徐々に変化していった。
自然の岩石が削れたような跡、
左右対称に積まれた石、
まるで“誰かが道を整備したかのような”人為的構造。
「おい兄弟……これはもう確定やな。
自然にできる形ちゃうで、これ」
「谷底にこんな一本道、誰が作ったってんだい?」
ノーザは剣の柄に手を置いたまま、
慎重に歩みを進める。
ニーナが突然立ち止まり、息を呑んだ。
「……あります。
魔力の発信源が、この先に──ひとつ、強く。
まるで……呼吸してるみたいに脈動してます」
「結界か、封印か……あるいは研究施設か……」
「行こう」
そして──“それ”は姿を現した
一本道を抜けた先。
谷の奥深く、
崩れかけた古代の石造建造物が姿を現した。
苔に覆われ、半ば地中に埋もれているが、
柱の装飾や石の加工は明らかに“文明の痕跡”。
「……遺跡だ……?」
「谷の底にこんなデッカいのが埋まってたのかよ……」
サンは笛でも吹くように口を尖らせて言った。
「兄弟……魔物の谷に遺跡なんて、ロクな予感せぇへんぞ……これ絶対なんかあるやつや」
ニーナは身を震わせながら呟く。
「魔力反応……ここです。
この遺跡が、魔物の異常発生の“中心”になっています……!」
リーは静かに構えを取った。
「ノーザ殿……参りますか?」
ノーザは深く頷いた。
「もちろん。
この遺跡の中に、谷の秘密がある。
俺たちで暴こう──行こう、みんな!」
風が吹き抜け、遺跡の奥から
まるで“誰かの呼吸”のような低い脈動音が響いてきた。
遺跡入口──さらなる“異常”
古代遺跡の入口は、崩れた石柱が斜めに倒れ、
まるで洞窟のように口を開けていた。
ノーザたちが慎重に足を踏み入れた、その時──
ガタッ……。
乾いた音が暗がりから響いた。
「っ!?来るよ!!」
闇の中から、よろよろと動く影。
──それは。
ボロ布をまとった案山子だった。
しかし目の部分だけ不気味に光り、腕は刃物のように尖っている。
「案山子……!?魔物……ですか!?」
「いやいやいや……ここ山ん中やで!?なんでや!?」
案山子は軋みながら、ぎぃ……ぎぃ……と音を立てて迫ってくる。
ノーザは炎魔法を唱えた!
「行くぞ……!アグニ!!」
彼の手から赤い火球が放たれ、
案山子の胸を貫いて内部の藁を一瞬で燃やし尽くす。
「ギ……ギギ……」
そのまま崩れ落ち、黒焦げになった。
ますます不自然
ヴィヴィが近寄り、串刺しになった残骸を見下ろす。
「……おかしいね。
こんな魔物、森にも遺跡にもいるようなタイプじゃないよ?」
案山子の布をめくってみる。
中は……明らかに人里で使われていたような材料。
サンもしゃがみ込んで腕を組む。
「せや。
どっちかって言うなら“人里荒らしの雑魚”やで。
畑や農村襲うやつ。
こんな山深いとこに居る理由が無いわ。」
リーも首を振る。
「猿型の魔物といい……
ここ、何かがおかしい。
本来の分布とは全く違う魔物が混ざっている」
ニーナは空気を両手で触るようにして答える。
「魔力の流れに……人為的な調整を感じます。
誰かが、魔物の配置を操作している……?」
静寂の中、遺跡の奥から……
ドクン……と低い脈動が響いた。
「兄弟……奥に“元凶”がおるで、これは」
ノーザは頷き、二刀の柄を握りしめる。
「よし……この遺跡の正体、暴いてやる。
全員、構えて進むぞ!」
風が流れ込み、案山子の残骸がカラカラと転がった。
ノーザたちは崩れた通路を抜け、
半ば地中に埋もれた広間へとたどり着いた。
石の床はひび割れ、天井からの光が薄く差し込む。
壁には古代文字のような紋様が刻まれ、
中央には──
巨大で奇妙な機械が鎮座していた。
金属と石材が融合したような構造。
中央には丸い台座。
周囲には細長い柱状の器具が並び、
かすかに青い光を放っている。
ヴィヴィ「……な、何これ?武器……じゃないよね?」
サン「いや、これは鍛冶屋でも見たことあらへん代物や。
古代文明のもんか?」
リーも慎重に周囲を歩き、装置を観察する。
「動力構造が……現代の魔導機とは全く違う……。
だが、停止して久しいようですな」
ノーザはニーナへ視線を向けた。
「ニーナ、わかる?」
ニーナはゆっくり機械へ近づき、
掌をかざして魔力を感知し始めた。
すると──
「……っ!?」
青い光が一瞬、脈動した。
ノーザ「ニーナ!大丈夫か!」
ニーナ「い、いえ……これは……」
目を見開き、震える声で言った。
「……転移魔力の気配がします……」
一同「転移魔力……!?」
ニーナは機械全体に魔力を流し込みながら続けた。
「間違いありません……
これは“古代の転移装置”……
恐らく、場所と魔力を指定して
物体や生物を強制的に転送する機械です……!」
「なんだって!?
じゃあ……猿の魔物や案山子も……」
サンが口をへの字に曲げた。
「遠くからここに……ぶっ飛ばされた可能性もあるっちゅうわけやな」
リーは苦い表情でうなずく。
「人為的な魔物の移動……
この谷の魔物分布が狂っている理由は……この装置か」
ノーザは装置の中心に手を置いた。
丸い台座は冷たく、しかし微かに脈動している。
「……これを動かした“誰か”がいるってことか。
魔物を谷に送り込み、人間の領地を混乱させるために……?」
ニーナが機械に触れ、魔力の流れを追っていく。
表情は徐々に険しく、しかしどこか困惑も混じる。
「あの……ノーザ様。やはり転移魔力です。
でも……おかしいんです」
「何が?」
「この魔力……
術者の意志を持った形跡がありません。
人間や魔族が操作したなら、必ず“魔法式の痕跡”が残るはずなのですが……」
リーが横でうなずく。
「確かに。魔法というものは必ず“気配”が残る。
しかしこの装置……完全に無機質な動き」
「つまりどういうこっちゃ?」
ニーナは台座の隙間に手を入れ、内部構造を探るように魔力を流し込んだ。
そして、ぽつりと呟く。
「……自動運転ルーンが作動してます。
本来なら“定期的に遠隔地を探索し、素材を転送する仕組み”だったみたいです」
「探索?素材?敵じゃなくて?」
「はい。恐らく古代の人々は、ここを採掘拠点か研究拠点として使っていたんでしょう。
その名残で、遠くの森や村から“素材”を吸い寄せるように転移していた……」
「でも魔物ばっかり送られてきてるぞ?」
「誤作動です。
“素材判定”が狂って……魔物を“資源”として読み取っているんです」
「なるほど……だから谷に場違いな魔物が溢れたのか」
一同は一安心と装置を見た
「……ひとまず、危険はなさそうだな」
「けどこの装置……明らかにヤバそうやで兄弟」
「勝手に止めていいの?壊したら弁償とかありそうじゃない?」
「触らぬ神に祟りなし、か……」
ノーザは腕を組み、周囲の仲間を見渡した。
「ここは……ギルドに確認を取った方がいいな。
古代遺物なんて勝手にいじったら、後々大問題になりかねない」
「……はい、魔法通信、試してみます」
ニーナは深呼吸し、意識を集中する。
「届くか?」
「……今、繋げます……」
彼女の瞳が淡く輝く。
(……ギルド、ギルド……冒険者ギルド中央管制へ……転移通信、開放……)
“ピッ”という魔力の反応。
その後から
ギルド職員の声が魔法通信越しに聞こえる
(はい、こちら冒険者ギルド・中央管制室です。
通信はクリアです、どうぞ)
(あ、もしもし? お世話になっております。
クレインパーティの魔法使い、ピサロと申します)
(はい、ニーナ・ピサロさんですね、登録確認しました。では要件をどうぞ)
(実は、任務中に 古代遺物と思われる転移装置を発見しまして……状況をご報告の上、対応をご相談したいのですが、担当の方はいらっしゃいますか?)
(確認します。……
はい、通信代わりました続けてどうぞ)
(ありがとうございます。
現在、魔物転移の誤作動と思われる挙動があり、周辺への影響が懸念されます。
こちらで停止処理を行ってもよろしいでしょうか?
また、専門職員の派遣予定があれば指示を頂ければと思います)
(状況、了解しました。転移装置の誤作動は大規模災害の恐れがあります。
応急的な魔力遮断が可能なら、現場判断で行ってください。専門調査隊は明日には派遣できます)
(承知しました。それではこちらで魔力遮断を試みます。派遣隊の皆様には、入口付近に待機していただければご案内いたします)
はいありがとうございます。現場の安全第一でお願いします。以上、通信終わり)
通信が切れる。
一連の報告が終わると
「……ふぅ。以上です、ノーザ様」
「ありがとう、大丈夫そうだね」
転移装置の周囲をぐるりと回り込み、仲間たちは電源らしき魔力炉を探していた。
「兄弟、こっちや!なんか怪しい光っとる箱あるで!」
「魔力の流れ……ここが核か」
「よし、遮断する。みんな離れてくれ」
ノーザが装置に手を伸ばした、その瞬間だった。
ヴィィィィィィ……ン……
……ッッッッ!!
古代装置が突然、暴走するように唸りを上げた。
「……なっ!? 動き出した!?」
「魔力が逆流して……制御できません! ノーザ様、下がって──っ!」
装置から奔った光が、二人を呑み込むように広がった。
「兄弟!! ニーナちゃん!!」
「ノーザ!!やだ!行かないでよ!!」
「転移魔法だ……!止められぬ!!」
光に包まれ、ノーザは仲間へ最後の指示を飛ばす。
「皆……!落ち着け……ギルド職員を呼んで来て……!!
すぐ戻──」
言い終わる前に、ノーザとニーナの姿は掻き消えた。
「ノーザァァァ!!」
「なんということだ……!転移装置、暴走……!」
そしてラヴズが悲しげに嘶く。
「……っ、絶対連れ戻すで。
兄弟も、ニーナちゃんも……どこ飛ばされたんか分からんけど……!」
「当たり前だろ!? ノーザじゃなきゃ嫌なんだ!!」
「まずはギルドへ連絡し、専門家の派遣を……!」
絶望と焦燥のなか──
一同は走り出した。
次回は飛ばされた先から




