表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/14

勇者らしさ

今回で仲間達がどんなキャラなのかを知って貰えたらなと思います

魔族の拠点を壊滅させた翌朝。

英雄扱いの達成感と、心地よい疲れを抱えて、ノーザは宿屋の硬すぎず柔らかすぎないベッドの中で目を覚ました。


――その瞬間。

体のどこかに“重み”と“柔らかさ”が密着している事に気付いた。


「…………!!」


(またか!!)


反射的に布団をめくり上げる。


もぞっ。


ヴィヴィの緋色の髪がふわりと揺れた。


「ノーザ〜♡ おはよう♡

 昨日の戦い、マジで惚れ直したよ〜♡」

ムギュ~ッ パッチュン パッチュン


そしてヴィヴィと対面するように、

ノーザにぴったり抱きついて離れないニーナが、目をとろんとさせながら頬を寄せる。


「おはようございます♡

 ……ふへへ……朝からノーザ様のこの匂い……♡」

ドタプン!ドタプン! ズリッズリッ…


「止めろと言うてるだろ!!」


ノーザの手刀が“ぴしっ”と空を切る。

だが抱きつく二人はまるで離れず、彼を挟み続けた


「ノーザ〜、いいじゃん少しくらい〜♡」ニュチ!ニュチ!

「ノーザ様の寝顔……尊かったです……♡」ユッサユッサ


「あ…」ドックン



――数分後。

食堂には、椅子に座らされ布団でぐるぐる巻きの二人と、

対面で腕組みをしているノーザの姿があった。


(反省タイム)


サンがパンをかじりながらじとりと見てくる。


「兄弟……堅物にもほどがあるやろ……」


ノーザは深々とため息をついた。


「……志を果たすまでは、酒も博打も女も遠慮するって決めてるんだ。」


リーは静かに頷き、

「御意。誓いを貫くは勇者の美徳……」

と二人は全面的にノーザ側に立つ。


ぐるぐる巻きのまま、ヴィヴィとニーナは必死に体を揺らした。


「ノーザの朴念仁!!

てかイヤなら抜いてから縛るな!」

「少しくらい構ってくださいっ!!」


ノーザは額を押さえる。


「……はぁ。今日こそは真面目に仕事するぞ。」


黒幕を討ち、村を覆っていた不安の霧がようやく晴れた朝。

ギルド前には、村人達とギルド職員がずらりと並び、ノーザ達を見送るために集まっていた。


受付嬢は、これまでいつもと変わらぬ笑顔だったが、

今日だけは少し寂しげな表情をしていた。


「……行ってしまわれるんですね。」


ノーザは軽く頭を下げる。


「はい。俺達は魔王の討伐を目指しています。

 短い期間でしたが、本当にお世話になりました。」


受付嬢は胸に手を当て、まっすぐノーザを見上げる。


「こちらこそ……。あなた達がいてくれて、本当に助かったんです。

 どうか……どうかお気をつけて。」


“ありがとう”の声があちこちから重なる。


「ノーザさん達のお陰で、この地方は救われました!」

「魔族に怯える日々が終わったんです……」

「いつか、また立ち寄って下さい!お礼の料理、いっぱい作りますから!」


そして、救い出した姉妹も駆け寄ってくる。

妹は目を潤ませながら、震える声で言った。


「皆さん……村のみんなを……助けてくれて……

 本当に、本当にありがとうございました……!」


「この御恩は、一生忘れません。」

姉が深々と頭を下げる。


ヴィヴィは照れくさそうに後頭部を掻いた。


「いや、礼なんていらないよ。あーしらはやるべき事やっただけさ。」


ニーナは優しい微笑みで姉妹の頭に手を置き、

「どうかこれからは、平穏に暮らしてくださいね。」

と声をかけた。


リーは静かに手を合わせ、

「南無……皆様に光がありますよう。」


そしてサンが大きく手を振る。


「ほな!またどっかで会おな!

 兄弟、この辺の飯うまかったから、また食べに来よな!」


ノーザは最後に村を振り返り、深く息を吸う。


「……行こう。次の地方へ。」


ドラグーンラヴズが嘶き、仲間達が歩き出す。

村人たちの声が、風に乗って背中を押した。


「ありがとう!」

「英雄たちよ、行ってらっしゃい!」


ノーザ達は笑顔で応えながら、

新たな目的地へと続く街道を歩み始めた。


村を後にし、舗装もされていない北方の街道を歩いて数時間。

森の切れ間から不穏な気配が漂った。


ガサッ……ガルルッ……!!


複数の赤い目が茂みの奥に並ぶ。


「来るぞ!魔物の群れだ!」


言い終わる前に、三匹のグレイウルフが飛びかかってきた。


ノーザは迷いなく前に出る。

木刀とニルヴァーナの二刀を構え——


「はあっ!」


刃と木刀が残像を残しながら、狼たちを正確に切り裂く。

ヴィヴィが横から駆け込み、拳に炎を纏わせて一匹を殴り飛ばした。


「邪魔なんだよ!!」


氷の矢が降り注ぎ、ニーナが息を整えながら呟く。


「この程度なら問題ありませんね。」


リーが後衛を守り、サンが矢で逃げ道を塞ぐ。


数十秒ほどの短い戦い。

魔物達は霧のように消え、地面に素材だけが残った。


「よし、片付いたな。」


ノーザが剣を収めた瞬間——

突然、ギルドカードが淡く光り出した。


ノーザはレベルが上がった!


さらに続けて、普段は見慣れない文字が浮かび上がる。


《新武器スキルの習得が可能になりました》


「……武器スキル?

 なんだこれ?こんなの初めて出たぞ。」


ノーザがカードをひっくり返してみたり、叩いてみたりする。


サンが呆れたように笑った。


「兄弟……知らんかったんか?

武器スキルっちゅうのは、レベルが上がった時に解放されて覚えるんで?」


「え!? そうなの!?

 誰も言ってなかったぞこれ!!」


ニーナが髪を整えながら、当然という顔で口を開く。


「一般的にはギルド教本にしっかり書いてありますよ?ノーザ様……もしかして、読み飛ばしました?」


ヴィヴィが腹抱えて笑う。


「いや〜ノーザ、自分の才能に全フリしてるよね〜!スキルシステムすら知らない勇者とか聞いた事ないよ!」


サンは肩をすくめて続ける。


「まあ兄弟は“体で覚えるタイプ”やしええけどな。

 ほら、カードに触れてみぃ。スキル一覧が開くはずや。」


ノーザは恐る恐るカードに指を触れた。


ヴィヴィが興味津々といった顔で前に出た。


「まあ、何があるか見てみようよ!」


ノーザも大きく頷く。


「あ、そうだな。」


ギルドカードに指を当てると、ふっと光が走り——

まるで“空中に浮かぶメニュー画面”のように文字が並んだ。



《スキルを選択してください》

New 【槍スキル】

New 【ブーメランスキル】

New 【刀スキル】



ノーザは眉をひそめ、興味深そうに画面を見つめた。


「刀か……木刀の強化に使えるかな?」


少しワクワクして独り言を漏らす。


その瞬間、

ニーナが信じられないという顔で振り向いた。


「え? そもそも……持ってなかったんですか!?

 ノーザ様、あんなに強いのに!?」


ヴィヴィが爆笑しながら背中を叩く。


「マジ!? ノーザ、刀スキル無しで刀なんて扱ってたの!?そりゃ変態級の才能だよ!」


サンも腹を抱えて笑った。


「兄弟、それもう“素の能力”だけで戦っとったってことやん……!」


リーは感心したように手を合わせる。


「……天賦の才とは、まさにこのこと……南無。」


ノーザは顔を赤くしながら、画面を見つめたまま呟く。


「……そ、そうなのか……?普通に使えてたし……」


ニーナが額に手を当てて深く息を吐く。


「ノーザ様は本当に……規格外です……

 でも……そこが……好きです……♡」


ヴィヴィがすぐに噛みつく。


「いやいやいや!!

 今の“好き”は聞き捨てならないんだけど!?」


ノーザは完全にスルーして、メニューに指を伸ばす。


「ええっと……じゃあ刀スキルを習得して……木刀での戦闘力を強化してみるか。」


浮かび上がる光の文字に、ノーザの瞳が輝いた。


ノーザが指を伸ばし、浮かぶ選択肢から【刀スキル】を押した。


――ふわりと光が弾け、ギルドカードに新しい文字が刻まれる。



《習得 刀スキル:Lv1》


ノーザは木刀を握り直し、軽く素振りしてみた。


「…………あれ?

 なんか変わった感じは……しない……?」


不思議に思い、もう一度ギルドカードに触れて詳細を開く。


小さく、冷たく、無情な文字が浮かぶ。


《お使いの木刀は、形状から“剣”に分類されます》

※刀スキルの適用外です


その瞬間——

サンが腹筋を崩壊させながら笑い転げた。


「アッハッハッハ!!なんや兄弟!!

 じゃあそれ木刀ちゃうやん!!

 ただの木の剣やんけ!!」


ノーザが真顔で反論する。


「木剣とはあんまり言わないだろ!!

 ギルドカードにも木刀って書いてあったし!!

……確かに刀らしい反りとかは無いけど…」


ヴィヴィも爆笑しながら膝を叩く。

「ノーザ〜!スキル無駄遣いしてるじゃん!!

 なにやってんの!!」


ニーナだけは胸に手を当て、優しい顔で言う。


「……そんなノーザ様でも……私は好きです……♡」


サンがすかさずツッコむ。


「いやフォローになっとらん!!」


リーだけは静かに手を合わせた。


「南無……無駄な学びもまた道の一つ……」


「絶対今日は一日からかってくるだろ……」


ノーザは頭を抱えた。


――こうしてノーザは、旅の途中で“初めてのスキル無駄遣い”を経験した。


ノーザが己の失敗に頭を抱えているその横で、

サンのギルドカードも淡い光を放ち始めた。


「……お?

 なんや、ワイもレベル上がったみたいや。」


カードの浮遊文字が並ぶ。



サンはレベルが上がった!


《新武器スキルの習得が可能です》



「てか、兄弟だけやのうて……

 ワイも武器スキル選べるみたいや。」


表示された選択肢を、サンは目を細めながら読む。



《スキルを選択してください》

New 【棍棒スキル】

New 【戟スキル】

New 【ハンマースキル】


サンは眉をひそめた。


「……戟ってなんや?」


ノーザは木刀を握りながらさらっと答える。


「槍と鎌を合わせた複合武器だよ。

 槍より攻撃範囲が広くて、リーチもあって、

 慣れたら強いって言われてる。」


サンの目が一気に輝いた。


「槍と鎌!?

 なんやそれ……めちゃオモロそうやん!!

 ワイ、これにしよか!」


迷いゼロで選択。


指先がスキル欄をタップするように触れる。


淡い光が弾けた。



《習得 戟スキル:Lv1》


サンはすぐさま腰の斧を持ち替え、

戟を使うイメージで大きく薙いだ。


「うおっ!?

 なんか身体がわかっとる感じするわ!

 これ絶対たのしいやつやで!!」


ノーザが感心して笑う。

「サン、適性あるんじゃないか?

 その武器、たぶん一気に上達するぞ。」


ヴィヴィは大笑いしながら肩を叩く。

「あはは!サンに似合ってるよ!

 てか絶対暴れまわるじゃん、あーし楽しみだわ!」


ニーナは頬に手を当てて微笑んだ。

「自由な発想……いいと思います。

 サンさんも強くなりましたね。」


リーは静かに合掌する。

「戟とは……古より武の象徴……

 相応しき者の手に渡るべくして……」



「よし。じゃあこのまま町に向かって、

武器屋行こ!!戟買わんと始まらんやろ!!」



武器屋へ続く石畳の道を歩きながら、

ノーザはギルドカードに浮かぶ自分のスキル一覧を眺めていた。


――ノーザン・クレイン

冒険者

【戦闘スキル】

・剣術 Lv4

・刀術 Lv1

・二刀流 Lv2

・蹴技 Lv3

・騎乗戦闘 Lv4


【魔法スキル】

・火術 Lv2

・雷術 Lv2


【固有特性】

・心頭滅却(煩悩耐性)


「……改めて見てみると、こうして数字になってるのって面白いな。

 なぁ、今更だけど……みんなのスキルも見せてくれない?」


ノーザがそう言うと、仲間たちは足を止め、

それぞれ自分のギルドカードを取り出した。


サンが一番に笑いながら答えた。


「ほな、ワイからいくで兄弟!」


サンがギルドカードを胸の前に掲げると、

淡い光が弧を描き、文字が浮き上がった。


――サン・グリーン

狩人

【戦闘スキル】

・弓スキル Lv4

・斧スキル Lv3

・戟スキル Lv1


【特性】

・急所狙い

・超視力

・料理術

・農家技術


リーが目を見開き、そっと眉を寄せる。


「こ、これは……!

 戦闘の腕も相当だが……“農家技術”とは……?」


ヴィヴィが指さしながら爆笑した。

「え、ちょっと待って!

 “農家”ってなに!? スキルなのそれ!?

 しかも結構上位っぽい感じに位置してるじゃん!」


サンは悪びれもせず、むしろ誇らしげに胸を張った。

「やろ? ワイこう見えて、地元じゃ

 猟師と農家の兼業やったんやで?」


ノーザがぽかんとした顔で聞き返す。


「え……。

 じゃあサンって、戦闘もできて……

 料理も上手くて……農業までできるのか?」


サンは豪快に笑った。


「兄弟!地元の連中はみんな

 畑耕して、獲物仕留めて、料理して、

 冬は木こりして、春は山菜採るんや!」


ニーナは感心したように微笑む。


「素晴らしい能力です……。

 料理術と農家技術……ノーザ様の旅にとても役立ちますね。」


ヴィヴィがすかさず噛みつく。


「いやいや!

 役立つのはわかるけど、

 戦闘スキルより存在感ヤバいんだけど!!」


リーは腕を組んで唸った。


「ふむ……。

 “急所狙い”と“超視力”が並んでいるあたり……

 本物の猟師の証……」


ノーザが苦笑しながら頷く。


「……サン、なんというか……強いのか器用なのか……

 よく分からないやつだな……!」


サンは「ほめ言葉や」と笑って肩をすくめた。


ヴィヴィが勢いよく一歩前に出た。

緋色の髪が揺れ、満面の笑みでノーザの腕をつつく。


「じゃあ次はあーしだよ!見てくれよノーザ♡」


ギルドカードを掲げると、光が走り、文字が浮かび上がる。


――ヴィヴィアン・スカーレット

戦士


【戦闘スキル】

・剣術 Lv3

・短剣術 Lv2

・闘拳術 Lv3


【属性スキル】

・炎属性


【特性】

・怪力


ニーナが思わず声を上げた。

「えっ……炎属性!?

 ヴィヴィさん、てっきりあれ“魔法”だと思ってましたけど……!」


ノーザも驚いたように振り返る。


「ヴィヴィ、あの火炎斬りとかブレイズナックル……

 あれ、スキルだったのか?」


ヴィヴィは笑った。

「ははっ!そうだよ!威力の上乗せの為に覚えただけだよ!あーしに“魔法連発”なんか出来るわけないだろ?」


胸を張って一言。


「MPたったの4だぞ?

 魔法なんて一発撃ったら終わりだよ!!」


サンが盛大に吹き出した。


「4!? 兄弟!聞いたか!?

 ニーナちゃんの百分の一くらいちゃうか!!」


ヴィヴィのステータスを見てみんなが盛り上がっている中、

ニーナが“スッ……”と横目でほくそ笑んだ。


「まぁ……怪力スキルはゴリラのヴィヴィさんにはお似合いですね」


完全に挑発のトーンだった。


ヴィヴィのこめかみがピクッと跳ねる。


「あぁ……? 今なんつった、ニーナ?」


ニーナはすまし顔のまま微笑む。


「ゴ・リ・ラ、と申し上げましたけれど?

魔法もほとんど使えず、脳筋で人間1人を片手で持ち上げて振り回す……

そういうところ、愛らしいですよ?」


「誰がゴリラだコラァァ!!」

ヴィヴィが勢いよく迫る。


「てめぇのこそ役に立たない無駄な乳垂れ下げた

乳牛だろが!!!」


ニーナの眉がぴくりと跳ねる。


「に、乳牛!?私より遥かに小さいからって……嫉妬しないで下さい!!」


ヴィヴィは食い下がる


「んな…っ!!小さくねぇし!Dはあるし!

それに羨ましくねぇし!そんな意味の無いモン!!」


ニーナは深呼吸して、

しおらしいフリをしながらノーザに縋るような目を向ける。


「ノーザ様……ひどいです……

 ヴィヴィさんが私を“乳牛”なんて……」


「事実だろ!!」


(……なんでこの二人、いつも“修羅場”になるんだ……?)



リーが静かに手を合わせると、

カードのステータスが淡く光り、彼の能力が映し出された。


「次は拙僧か……」


リー・シガー

僧兵


【戦闘スキル】

・打撃技スキル Lv3

・投げ技スキル Lv3

・関節技スキル Lv2


【魔法スキル】

・回復魔法

・スピード魔法



【特性】

・軽業

・体捌き


これぞ、“僧侶”を超越した“僧兵”、強いては

“総合格闘家”とも見える内容が並ぶ。


サンが口笛を吹いた。


「相っ変わらず武闘派やなぁ、リーちゃん……

 僧侶っていうよりプロレスラーのステータスやでこれ」


ヴィヴィも腕を組みながら頷く。


「そりゃ人を片手で掴んで投げる訳だよ……

 投げ技レベル3ってなんだよ」


ノーザは真面目に感想を述べる。


「リー、回復と格闘の両立すごいな。

 戦闘中のサポートも、護衛も、全部任せられるよ」


リーは軽く頭を下げる。


「いや、拙僧はただ……

 “仲間を守りたい”その一心で修行してきただけ……」


ニーナは少し目を丸くした。


「リーさん、スピード魔法も使えるんですね。

 あの跳躍力、まさか魔法補助だったんですか……?」


リーは静かに微笑んだ。


「その通り、それに、

 “拙僧は戦わねば回復できぬ”たちでな……

 どうしても前に出てしまう…」


「いや、それただの“武闘派の性”やろ」


「てか回復役が最前線で投げ技連発すんなよ!」

「戦う僧兵がいても……よいだろう……?」


ノーザの心の声が言った

(……まぁ強いからいいけど、

 本当に“普通の僧侶”ってどこにいるんだ……?)


最後にニーナが誇らしげに胸を張る(※揺れる)。


「では……僭越ながら、私も」


カードに触れると、眩しいほど大量の項目が表示された。


ニーナ・ピサロ

魔法使い


【魔法スキル】

・炎魔法

・氷魔法

・水魔法

・雷魔法

・大地魔法

・闇魔法

・攻撃力強化

・素早さ強化

・防御力強化

・浮遊魔法

・瞬間移動魔法


【特性】

・魔術の心得

・呪力耐性


沈黙――そして全員の声が重なる。


「「「多いなぁ……」」」


「なんやこれ……“魔法の総合商社”かいな?」


「いや、ちょっと待ちなよ!?

 強化も攻撃も補助も移動も出来るって……

 魔法使い1人の範囲じゃないよねぇ!?」


「瞬間移動……?浮遊……?全てを操るかのようなような構成……」


ノーザはぽりぽりと頬をかく。


「……ニーナ、こんなに魔法使えたんだな……

 今までの戦闘、手加減してた?」


ニーナはさらりと微笑む。


「いえ。ノーザ様の前では全力です♡

 ノーザ様を守るための努力……毎日しておりますので♡」


ノーザは思った

(……いや万能すぎるだろ!俺が一番普通じゃないか……?)


こうして一行は次の町への道中を行く

丘を抜けた先、石畳の進む通り

二階建ての堂々とした建物に大きな看板が掲げられていた。


《武器工房・ダルムス》


店先から金属音が響く。

炉の熱気と油の匂いが、いかにも“本気の武器屋”だと伝えてくる。


「ここがこの地域で一番大きな武器屋か……」


「兄弟、予算は大丈夫かいな?

 武器屋は洒落にならん値段するで?」


「旅の資金としてギルドの口座に積み立ててあるからな。

 こういう時のために使おうと思ってたんだ」


ヴィヴィがぱぁっと笑った。


「ねぇ、気前いいじゃん!流石ノーザ!

 こういう時にビシッと決めてくれる男ってカッコいいよ!」


ニーナはニコニコしながらも内心は

(装備一式……ノーザ様にはもっと似合う物を……♡)

と完全に人妻の買い物モード。


「では拙僧は回復道具を……」

「いやリーちゃん、今日は武器屋や!まずは武器やで!」


「よし……みんな、今日は戦力強化だ。

 好きなものを見てくれ!ただし必要以上はなしだぞ!」


武器屋の扉を開ける——

カランコロン、と鐘の音。

棚には剣、槍、杖、鎧、珍しい異国武器まで揃っていた。


まさに“RPGのショッピングタイム”が始まる。


武器屋の奥の棚には、他の武器とは扱いが違うように

壁に掛けられた巨大で曲線の美しい刃があった。


「おお……これが“戟”っちゅうやつかいな……」


柄は長く、先端には槍の穂と、

片側には大きく湾曲した刃がついている。

どっしりとした重量感と、飾り抜きのない戦場向けの造り。


サンは手に取ると、片手で軽々と振ってみる。


ブンッ!


鉄を裂く鋭い風切り音。


「うわ、ええなこれ。これ何でもありやないか?

 “斬る・突く・薙ぐ”全部いけるやん!

 兄弟、これ買うで!!」


「お、おう……早いなサン」


「そいつは“方天戟”だ。扱う者を選ぶ武器だが……

 兄ちゃんの腕なら問題ないだろうさ」


「任しとき!今日からワイは“”三刀流や!」


満面の笑みで金を払うサン。

まさに“衝動買い成功の顔”。


サンが方天戟に夢中になっている横で、

ヴィヴィは棚の端に並ぶアクセサリー類を何気なく眺めていた。


そこで、ひとつだけ異質な存在が目に留まる。


金属の腕輪に、紫電のような紋様。

表面には雷のような細い亀裂が走り、時折――ビリッ、と光る。


「……お? なんだいこれ?」


店主が気づいて近づく。

「お嬢、それは“召雷の腕輪”。

 装備者の武器に、初歩的だが雷の付与効果が乗る。戦士向けの中では破格の逸品さね」


「雷……!?あーしの“火”に加えて……雷まで……?」


目が輝き、今にも飛び跳ねそうな勢いで振り返る。


「ノーザ! ねぇ、ねぇノーザ!

これ買って良いか!? いや買う!いや、買わせて!」


「はは、落ち着けって……

うん、いいよ。旅の資金はその為にあるんだから」


「よーっし!!店主!これ買うよ!!」


「毎度あり!いい買い物だよ、お嬢さん」


ヴィヴィは嬉しそうに腕にはめ、拳を握りしめた。


バチッ。


指先に微かな青い火花が散った。


「……へへ……最高じゃんか……!!

 あーしの拳に雷なんて……ロマンの塊だよ!!」


ヴィヴィは“召雷の腕輪”を購入した!

ヴィヴィは新たに “雷属性” を獲得した!



その頃――


武器屋の隅にある女性向け装備コーナー。

ニーナは妙にソワソワした動きで、女性店員に近づいていた。


「す、すみません……こっそり伺いたいのですが……」


「はい? どうされました?」


ニーナ、小声で。


「“大きいサイズの下着”…売ってます……?

 その……Jカップで………」


女性店員は得意げに応対した

「あ、あぁ〜……そっち系ですね♡

 ありますよぉ〜お客様のサイズなら……」


「ほ、本当ですか!?」


(わかるわ……この子、絶対勝負下着買う気だ……)


そこへ、ノーザの声が


「ニーナ、買うなよ?」


「!?!?!?!?!?!?」


ムギュッ…

Jカップが揺れる


気付けば仲間に包囲されていたニーナ


「な……な、な、な……なぜ分かったのですかノーザ様ぁ!? いや!分かったとかではなく…べつに……ノーザ様に見せると決まってたわけじゃ……いや決まっては……!」


「うるさい!!それ以上言うな!!!ぜったい買うな!!」


「兄弟〜、顔真っ赤やでぇ〜ww」


「この牛女、また変なこと考えてるね……!」


「違います!!ノーザ様に見せるとか挟みやすいとかじゃなく――」


「装備品以外は買うの禁止!!!!!」


「実質装備品ですけど……」



買い物に戻る

ノーザは木刀とニルヴァーナを腰に下げたまま、輸入武器コーナーを探して店内を歩いていた。

だが──いくら見ても、刀だけがどこにも無い。


「すみません、刀って置いてありますか?」


店員は少し気まずそうに首を振った。


「刀ですか…申し訳ありません。当店……刀は扱っておりません」


「え……?」


そこへ店主が奥から出てきた。


「悪いね兄ちゃん。

刀は日ノ本の技術じゃなきゃ造れねえが、

その日ノ本が長いこと鎖国状態にあってな。

“本物の刀”てのは市場にほとんど出回らねぇんだ」


続けざまに店員も

「更に日ノ本の刀は刃物としての性能も美術品としての価値も非常に高く、既に流通している分はほぼ全てが収集家や富豪の手元にあります」


「……そうですか……」


ほんの少しだけ、肩が落ちる。

刀スキルを取ってみたものの、肝心の刀には巡り会えない。


「ドンマイ、ノーザ。良い刀、いつか見つかるよ!」


「ノーザ様が手に取るべき刀は……きっともっと特別な物のはずです♡」


「兄弟は“縁”が強い男や。いつか出会えるで」


「……うん、そうだな。焦る必要は無いよな」


静かに鞘のニルヴァーナへ手を添える。


──この剣の“正体”に、ノーザはまだ気付いていなかった。


武器屋をあとにして、夕暮れの街道を宿へ戻る五人。

新しい武器を手に浮かれるヴィヴィとサン、その後ろをニーナがノーザにぴったり寄り添い歩いている。


そんな中、ノーザは腰の木刀をそっと撫でた。


「実はさ、この木刀……俺の幼馴染が、冒険者になったお祝いにって特注で作ってくれた物なんだ」


ふ、と優しい笑顔を浮かべる。


「だからさ、大事にしたいんだ。

 傷んできたし、旅も激しくなってきたから、そろそろ“代わりの武器”をって思ってたんだけど……

 まさか刀がこんなに無いとはな」


ノーザの笑いは穏やかだが、どこか遠い。


「ノーザ……そんな大事なもん持ってたんだね」


「ええ話やんか兄弟。そういう縁は大事にせなアカンで」


「やはりノーザ殿は多くの絆を持たれる…」


ニーナは一歩下がり、少しだけ胸に手を当てた。

(……スミさん、ですか。ノーザ様の大切な人……)


ジェラシーか、理解か──複雑な色が瞳に宿る。


「まぁ、焦らず探すよ。

 いつか“ぴったりの一本”に巡り会えるさ」


夕陽に照らされた木刀の柄が、どこか誇らしげに輝いた。


そのまま五人は宿屋へ向かって歩き出す。

今日も騒がしく、明日もきっと騒がしい。

だが──確かな一歩を踏みしめて、ノーザの旅は続いていく。

今作の新しい試みでスキルの概念を作りました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ