ヴァルケンを開放せよ
現代戦のような事をしようと思ってます。
今更なんですが自分って指揮官系主人公キャラが好きなのかも
――サウスダムでの最初の任務。
国境沿いの町、ヴァルケンを救出せよ。
地理的に常に魔族の脅威に晒され、これまで何度も侵略と奪還を繰り返してきた町。
奪い返しても、復興が終わる前に再び奪われる。
その連鎖の中で、人は減り、建物は壊れ、地図の上では「町」と呼ばれていても、実態はほとんど前線の廃墟に近かった。
正面から軍を動かせば、魔族は必ず察知する。
大規模な衝突になれば、町そのものが消し飛ぶ可能性すらある。
今回求められているのは殲滅ではない。
静かに入り、要点だけを制圧し、住民を生きたまま取り戻すこと。
地図の上に広げられたヴァルケン周辺の地形を、ノーザは黙って見つめていた。
山に挟まれた狭い谷間、視界は悪く、遮蔽物は多い。
待ち伏せにも、奇襲にも向いた土地だ。
「正面から行けば、間違いなく被害が出るな……」
低く漏れたその声に、緊張が混じる。
これまでの戦いとは明らかに違う。
力で押し切る場面ではないと、全員が理解していた。
鳥人部隊との連携。
夜明け前の侵入。
索敵、分断、無力化――必要なのは速さと正確さ、そして判断力。
ノーザは静かに息を吸った。
「……今回は、戦争じゃない。救出だ」
それは自分に言い聞かせるようでもあり、
これから動く仲間全員に向けた合図のようでもあった。
こうして、クレインパーティと鳥人部隊による
静かな作戦が始まろうとしていた。
ギルドの会議室は簡素だった。
分厚い石壁、長机、油灯が一つ。外の喧騒は遮られ、ここだけが切り取られたように静かだ。
机の上に広げられた地図を、ノーザは指でなぞる。
町の規模、地形、壊れた外壁、魔族の拠点と思しき印。線を追うたびに、表情が引き締まっていく。
「人口は三百弱……避難できた人は地下壕。残りは……捕虜になっている可能性が高いな」
淡々とした声だったが、言葉の端に重さがあった。
その視線を受け、隣で地図を覗き込んでいたニーナが静かに頷く。
「捕らわれた人々を危険に晒すのは避けましょう。正面衝突は論外です。出来る限り、気付かれずに」
慎重で、しかし迷いのない言い方だった。
それを聞いたサンが、腕を組んだまま天井を見上げる。
「となると……監視、侵入、哨戒。役割は分けなアカンな。全員で突っ込むのは悪手や」
低い声でそう言い切ると、今度はリーがゆっくりと口を開く。
「負傷者が出る前提で動くべきだろう。救出が目的なら、戦闘は最小限……撤退路の確保も必要だ」
戦場をいくつも見てきた者の判断だった。
一拍置いて、椅子に背中を預けていたヴィヴィが、顎に指を当てる。
「戦力的に考えると……前に出るのは、あーしとノーザとリーだね。サンは監視。ニーナは通信、ミネル達は後方支援」
誰も反論しなかった。
それぞれが、自分の役割をすでに理解している。
ノーザは一度だけ目を閉じ、短く息を吐く。
「……まだ全部は話さない。でも、今回は“勝つ”より“連れ帰る”だ」
その言葉に、会議室の空気がさらに張り詰めた。
戦いではなく、救出。
静かで、失敗の許されない任務。
誰も声を上げなかった。
ただ、それぞれが地図を見つめ、来たる夜に備えて思考を巡らせていた。
会議はそれ以上、長くは続かなかった。
決めるべきことは決まった。あとは――やるだけだ。
地図を畳み、机の上が片付いていく。
誰も軽口は叩かないが、空気は重苦しさとは少し違っていた。
ノーザは椅子から立ち上がり、会議室の扉に手を掛ける。
その背中を、仲間たちが自然と見ていた。
ここまで来た。
逃げずに、折れずに、仲間を失っても歩みを止めずに。
ヴィヴィが、わざとらしく肩をすくめる。
「ま、やるしかないよね。あーしら、こういう役回りだし」
軽い口調だったが、視線は真っ直ぐだった。
サンは小さく笑って、方天戟の柄を叩く。
「兄弟が先頭に立つなら、ワイらも腹くくれるわ」
リーは何も言わず、ただ一礼する。
それだけで十分だった。
ニーナは一歩近づき、そっと声を落とす。
「無事に帰りましょう……全員で」
ノーザは振り返り、仲間一人ひとりを見渡した。
胸の奥に、静かな熱が灯る。
「……行こう」
短い一言だった。
だがそれは、これまでの旅と、これから始まる戦いを背負った言葉だった。
扉が開く。
外の光が差し込み、次の一歩が待っている。
――いよいよだ。
ここからが、本番だった。
夜明け前の冷たい風が、野営地を撫でていた。
装備の最終確認が終わり、空気が一段階、張り詰める。
その時、上空から羽音が降ってくる。
数名の鳥人が静かに着地し、先頭に立つミネルが一歩前へ出た。
強い眼差しでノーザを見据え、はっきりと声を張る。
「ノーザ!」
続いて、背後の鳥人たちが一斉に胸に拳を当てる。
「さあ!隊長!ご命令を!」
一瞬、時間が止まった。
ノーザはきょとんと瞬きをし、思わず視線を泳がせる。
「え……? え〜……俺、そういう役向きじゃないんだけど……」
間髪入れず、横から軽い笑い声。
「ええやない兄弟!今さら何言うとるんや」
反対側では、腕を組んだヴィヴィが当然のように頷く。
「実際、作戦の中心はノーザでしょ。
ほら、司令官」
逃げ場はなかった。
ノーザは小さく息を吸い、背筋を伸ばす。
視線をミネルへ戻し、迷いを振り切るように口を開いた。
「……わ、分かった。ミネル、鳥人部隊を率いて敵の配置と数を調べてくれ。交戦は避けて、情報最優先で」
一拍の沈黙。
次の瞬間、鳥人たちの声が揃う。
「了解!」
羽音が再び空へ溶けていく。
その背を見送りながら、ノーザは無意識に拳を握りしめていた。
胸の奥が、少しだけ熱い。
不慣れでも、逃げない。――それだけは決めている。
少し離れた場所で、ニーナが両手を胸の前で組み、うっとりと頬を緩めていた。
(デュフ……司令官のノーザ様……♡)
そんな視線に気づくこともなく、ノーザは地図に目を落とす。
もう、後戻りはしない。
命令を出した瞬間から――彼は、背負う側に立っていた。
夜明け前。
光の無い時間帯を選び、ヴァルケンの上空に二つの影が滑り込んだ。
ミネルは羽ばたきを完全に殺し、村を見下ろしていた。フクロウ特有の視力が、闇の中に潜む輪郭を一つずつ拾い上げていく。視線が止まり、静かに喉を鳴らす。
「……地上警備の魔族兵が六。巡回は二人一組、間隔は不揃い」
その声は低く、風に溶ける。
隣を飛ぶもう一つの影が、羽根をわずかに震わせた。
クロナは目を閉じていた。アブラヨタカの鳥人。音を“聞く”のではない。夜に向けて放った微細な反響が、頭の中で立体に組み上がっていく。建物、柵、地面の凹凸。生き物の呼吸すら、地図になる。
「見張り台が四。南と西が高所。即席の木製だね」
少し間を置き、翼を傾ける。
「バリケードは三箇所。正面道路と、倉庫裏、それから……地下壕の入口付近」
ミネルが一瞬だけ嘴を噛んだ。
地下壕に人がいる。
二人は言葉を交わさず、同時に高度を落とした。村の外れ、影の濃い場所へと滑り込む。そこには、待っていた合図があった。
地上。
物陰に伏せるノーザは、鳥人たちの帰還を感じ取った。羽音は無い。それでも、空気が変わる。
ミネルが静かに着地し、すぐに膝をついた。視線は上げない。報告は簡潔でいい。
「配置、把握した。即応部隊はいない。油断してる」
クロナも続き、指先で地面に簡易図を描いた。迷いの無い線。
「捕虜は地下。見張りは少ないけど、通路が狭い。正面からは不利」
ノーザは一度だけ深く息を吸った。
夜明け前の冷気が肺を満たす。
頭の中で、情報が噛み合っていく。
敵の数。配置。救うべき場所。
視線を上げ、鳥人たちを見る。頼りきるでも、突き放すでもない。覚悟だけがそこにあった。
「よくやってくれた。ミネル、クロナ。予定通り行く」
短い言葉だった。
だが、それで十分だった。
鳥人たちは同時に翼を広げる。
闇に溶ける準備は、もう終わっている。
こうして、ヴァルケン解放作戦は――
誰にも気付かれぬまま、静かに動き出した。
夜明け前の路地。
崩れた石壁が影を作り、冷たい空気が張りつめていた。
ニーナの声が、魔力を抑えた通信で耳に届く。
「……次の角。巡回一。間隔、短い」
ヴィヴィは小さく息を吐いた。
足音を殺し、腰の鞘から短剣を引き抜く。刃は細く、光を飲み込むように黒い。
曲がり角の内側。
死角に身を貼りつけ、重心を落とす。
これは正面から叩き潰すための武器じゃない。
ヴィヴィが持つ、ただ一つの“暗殺スキル”。
短剣スキル――アンフェアダガー《不名誉の短剣》。
角を曲がった瞬間、魔族兵の喉元がそこにあった。
声を上げる暇はない。
一歩。
半身。
刃は肋の隙間を正確に突く。
骨も鎧も鳴らさない角度。
刃を返し、即座に引き抜く。
魔族兵は息を漏らすことすらできず、壁にもたれたまま崩れ落ちた。
血が石畳に触れる前に、ヴィヴィの手が口を押さえ、静かに寝かせる。
数秒。
周囲に変化はない。
ヴィヴィは短剣を拭い、影へ溶け込んだ。
いつもの豪快な笑みは、そこには無い。
低く、通信に囁く。
「……終わった。次、行けるよ」
作戦は、まだ音を立てていない。
地下へと続く石段の影を、ノーザは息を殺して進んでいた。
壁越しに、人の気配。町民が籠城している地下壕は、もうすぐそこだ。
耳元で、微かな魔力の震え。
「ノーザ様、巡回二。横並びで接近中。三、二、一……今です」
足音が重なった、その瞬間。
空間が、弾けた。
セラフィックバースト――
ノーザの姿は一瞬で消え、次の瞬間、巡回兵の背後に現れる。
間合いは、零。
新たに会得した蹴技が、迷いなく放たれた。
蹴撃スキル 降三世蹴り
瞬間移動からの放たれたドロップキック、二人の膝と腰を同時に打ち抜く。
骨が鳴る音すら、夜に溶けた。
崩れ落ちる二つの影。
地面に伏せたその瞬間、ノーザはもう踏み込んでいる。
右手のニルヴァーナ。
左手の六道。
二刀が、同時に突き出された。
音もなく、確実に。
二つの刃はそれぞれの急所を貫き、巡回は抵抗する間もなく沈黙した。
刃を引き抜き、血を拭うこともせず、ノーザはすぐに身を翻す。
「排除完了。地下壕への通路、確保」
一拍置いて、落ち着いた声が返る。
「確認しました。町民の反応なし。気付かれていません」
ノーザは小さく息を吐き、暗闇の奥を見据えた。
夜闇に紛れ、リーが屋根を音も無く駆ける
しかしその早業をニーナの通信が正確に誘導していた。
「地下壕、距離、110」
(行意)
リーは最短ルートで町民が籠城を続ける地下壕を目指す、
地下壕前、魔族兵が入口を交代で常に包囲した形、敵の目を盗み補給に向かうのは不可能な状態だった
数は見張りが3体、リーは素早く一人の耳の中に中指を突き刺した。それに気付いた頃には、二人目の魔族の首があり得ない方向に捻じ曲げられ、三人目の魔族兵は帯を首に巻きつけられ失神する。
この間5秒、リーの戦い方だった
(入口確保…ニーナ殿、頼む…)
町外れの高台。
瓦礫と低木に身を伏せ、サンは弓を構えていた。
夜気は澄み、風はほとんど動かない。
その隣で、鳶の鳥人――メイセイが片膝をつき、空気を読むように翼をわずかに広げている。
「風向き良し……風速〇・二。揺らぎ無し」
囁きは、ほとんど風と同化していた。
「了解や」
短く返し、サンは弦を引く。
肩、肘、指先。
長年の狩りと戦場で染み付いた動きが、無駄なく繋がる。
視線の先には、見張り台。
篝火のそばで油断した魔族兵が、外を眺めている。
メイセイの視線が、微かに角度を示す。
「……今」
弦が鳴ることは、なかった。
放たれた矢は、風を裂く音すら置き去りにして飛ぶ。
鳶の補正、風の読み、距離の計算――すべてが噛み合った一射。
矢は喉元を正確に貫いた。
声は上がらない。
身体が崩れる前に、もう一本。
二本目の矢が、別の見張りの影を射抜く。
灯りの揺らぎだけが、変化を告げていた。
高台に、静寂が戻る。
「……制圧完了や」
サンが弓を下ろすと、メイセイは満足そうに翼を畳んだ。
「命中、誤差無し。さすがだね」
「そっちの目と風読みが最強や」
二人は言葉少なに視線を交わし、次の見張り台へと意識を移す。
その頃にはもう、
町の上空でも、路地の影でも、
作戦は同時多発的に進行していた。
誰にも気付かれぬまま、
ヴァルケン解放への歯車が、静かに、しかし確実に回り続けていた。
路地の影で、ノーザは片膝をついたまま耳に意識を集中させていた。
通信魔法越しに、短い報告が重なる。
「……見張り排除、完了」
続いて、別の方向からも同じ調子の声。
「こちらも終わったよ」
地上の制圧は、想定より早い。
ノーザは小さく息を吐き、視線を上げた。
地下壕の入口。
避難していた町民たちが、仲間の誘導で静かに退避を始めている。
「……よし」
通信に乗せる声は、短く、しかし明確だった。
「地上の味方、退避確認……ニーナ、やれ」
少し離れた建物の陰。
ニーナは兵舎へと変わった石造りの建物を、まっすぐ見据えていた。
窓は塞がれ、扉には魔族の紋章。
中にはまだ、相当数が残っている。
胸の奥で、魔力が渦を巻く。
これは隠密の終わりであり、同時に作戦の合図だ。
「……行きます」
低く呟き、両手を掲げる。
空気が震え、雷鳴が“まだ鳴らないまま”集束していく。
次の瞬間――
雷撃魔法
イクスパルション・サンダー──追放の雷
今回は落雷ではない。
横殴りに奔る、純粋な雷の奔流。
兵舎の壁を貫き、内部を蹂躙するように走り抜けた。
――轟音。
遅れて、悲鳴。
建物の内側から、魔族の断末魔が重なり合う。
衝撃で扉が吹き飛び、炎と煙が噴き出した。
瓦礫と共に、数体の魔族が外へと転げ出る。
鎧は焦げ、身体は痙攣している。
「敵襲だ!!」
ようやく上がった叫びは、すでに遅い。
その声を合図に、ノーザは剣を構え直した。
ヴィヴィも、影の中で短剣を収め、次へ動く。
静かな作戦は、ここで終わった。
だがこれは、失敗ではない。
計画通りの“切り替え”だ。
ヴァルケン解放作戦――
第二段階、突入。
地下壕の前で、ノーザは剣を振り切りながら短く指示を飛ばした。
迫り来る魔族の残党を視界の端に捉えたまま、声だけを投げる。
「よし!残党は俺が抑える!ヴィヴィは市民を逃がせ!」
すぐに返事が返る。
路地の奥で、ヴィヴィが一歩前に出た。
「任せな!」
地下壕の重い鉄扉に両手をかける。
軋む音が一瞬遅れて響き、錠ごと扉がねじ切られた。
暗闇の奥から、息を呑む気配。
そこへ、力強い声が通る。
「準備はいいね!」
壕の中。
既にリーは潜り込み、倒れた者、動けない者の傍に膝をついていた。
錫杖を床に置き、素早く回復の祈りを施していく。
「無論」
短く答え、立ち上がる。
その眼に迷いはない。
「歩ける者は自力で走られよ。動けぬ者はこちらで担ぐ」
混乱しかけていた市民たちの空気が、わずかに落ち着く。
その瞬間を逃さず、リーは老人を肩に担ぎ、もう一方の腕で幼子を抱え上げた。
外へ跳躍。
僧とは思えぬ身軽さで地上に躍り出る。
「出口まで一直線だ!」
背後から、ヴィヴィが回り込む。
盾代わりに前へ立ち、迫る魔族を睨みつけた。
「ほらほら!立ち止まるな!」
地下壕から次々と人が溢れ出す。
泣き声、荒い息、それでも足は止まらない。
リーは走りながら、負傷者の容態を一瞬で判断し、必要な者だけを担ぎ上げる。
無駄のない動き。
修行で鍛え上げられた身体と、命を救うための判断力。
その背を、ヴィヴィが必死に守る。
瓦礫の向こうで、剣閃が走った。
ノーザが残党を引き受けている。
戦場の只中で、
町は、確かに“生き延びている”。
焼け落ちた兵舎の残骸を背に、ノーザは一歩、前に出た。
ニーナの雷撃から生き延びた魔族たちが、半円を描くように囲む。
剣を構えた者。
槍を突き出す者。
恐怖を怒号で塗り潰そうとする者。
――数は、十を超えている。
ノーザは深く息を吸い、静かに吐いた。
視線は一点にも留まらない。敵全体を“面”で捉えている。
「……修羅道」
低く、噛み締めるような声。
六道とニルヴァーナが同時に鳴った。
六道斬り――三ノ型。
十一面観音
十一面修羅輪連
踏み込みと同時に、世界が歪む。
前。
左斜め前。
右。
背後。
上段。
下段。
死角。
死角の死角。
刃が、増えたかのように錯覚する。
実際には、ただ速いだけだ。
速さと精度が、人の認識を置き去りにしているだけ。
魔族の槍が突き出される前に、持ち主の肩が落ちる。
剣を振り上げた瞬間、手首が宙を舞う。
背後から迫った影は、振り向きもされずに胸を貫かれる。
円陣が、崩れる。
いや、解体されていく。
血と鉄の音が重なり、地面に次々と倒れる影。
数で押すという発想そのものが、間違いだったと理解する頃には――
最後の一体が、後ずさった。
逃げようとした瞬間、足が止まる。
いつの間にか、目の前にノーザが立っていた。
一閃。
音もなく、魔族は崩れ落ちた。
ノーザは剣を下ろし、周囲を一瞥する。
もう、立っている敵はいない。
息一つ乱さず、血を払う。
その背中は、淡々としていて――
だからこそ、恐ろしい。
数は、意味を持たない。
この場に立つのは、修羅の道を歩む剣だけだった。
やがて、通信魔法越しに声が届く。
市民の避難、完了。
ノーザは短く頷き、剣を収めた。
戦闘は終わった。
闇が少しずつ薄れ、東の空が白み始めていた。
上空から羽ばたきの音。
先に降り立ったミネルが、胸を張って叫ぶ。
「ノーザ! 皆、町の出口まで逃れたよ!」
続いて、メイセイが高度を上げながら振り返る。
「私はギルドの救護班を呼んで来る!」
そのまま翼を翻し、サウスダムの方角へ一直線に飛び去っていった。
最後に、少し遅れて降りてきたクロナが、仲間たちを見回して笑う。
「皆! お疲れ様!」
瓦礫の町に、ようやく“終わった”という空気が流れる。
夜明け前の静けさの中、ノーザは深く息を吐いた。
――ヴァルケン解放、成功。
次回は復興パートです




