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北の鶴

続きです、過去作のライバル(笑)はイヤな奴だったので今作はまぁ、まだマシなキャラにしてます。

広場を包んでいた喧騒が、嘘のように静まった。

四戦四勝――その事実が、否応なく観衆の期待を煽っていた。


最後に残ったのは、両陣営の大将。


ノーザは、静かに一歩前へ出た。

腰に手をかけ、迷いなく二振りの剣を抜き放つ。


ニルヴァーナ。

黒刀六道。


二刀が陽光を弾き、刃鳴りが空気を震わせる。


観衆の誰もがそう思った。

これがクレインパーティの核。

これが、ここまで勝ち上がってきた男の“型”。


アルベルトはその光景を真正面から見据え、わずかに目を細めた。

そして、口元に薄い笑みを浮かべる。


「噂通りだな……それが二刀流か」


アルベルトの声は低く、しかしよく通った。

挑発でも、軽視でもない。

純粋な“評価”だった。


ノーザは剣を構えたまま、短く息を吐く。


「そうだ。俺はこれで戦う」


その一言に、余計な飾りはなかった。

誇示もなければ、虚勢もない。

ただ事実を述べただけの声音。


――だが。


ノーザは理解していた。

目の前の男が、今までの相手とは“格”が違うことを。


アルベルトは剣を抜いた。

同時に、もう片方の腕に構えられた盾が前に出る。


剣と盾。

紋章が刻まれた重厚な装備。

まさしく、重装騎士――王道の型。


その立ち姿は揺るがない。

一歩も引かず、重心は低く、隙が無い。


「俺はアルベルト。ラークナイツ団長だ」


盾を前に、剣を斜めに構える。


「攻防一体――これが俺の戦い方だ」


“守り”を捨てない戦士。


ノーザの二刀流は、攻撃のための型。

アルベルトの剣盾術は、崩れないための型。


噛み合えば、長期戦は避けられない。


ノーザは小さく笑った。


「いいな。正面から受けてくれる相手は嫌いじゃない」


アルベルトも、盾越しに微笑を返す。


「こちらこそだ、ノーザン・クレイン。

 君がなぜ“勇者タイプ”と呼ばれるのか――この目で確かめさせてもらう」


両者、動かない。

剣も、盾も、まだ振るわれない。


だが――


次の瞬間、必ず何かが壊れる。


観衆は息を呑み、

仲間たちは視線を逸らさず、

そして――


ノーザとアルベルトは、同時に踏み込んだ。


ノーザが先に動いた。


二刀が交差する軌道。

速い――それでいて重い。

空気を切り裂く音が、二重に重なる。


しかし――


アルベルトは一歩も退かない。

盾を前に突き出し、角度をわずかに変えただけ。


乾いた衝撃音。

刃は確かに当たった。

だが、斬り裂いた感触は無い。


盾が、完璧に受け止めていた。


ノーザは着地と同時に距離を取る。

眉がわずかに動いた。


「……堅い」


今のは探り。

だが――ただの防御ではない。


アルベルトの盾は、受け流し、殺し、反撃に繋げる位置にあった。


アルベルトは静かに剣を構え直す。


「速さも威力も申し分ない。だが――

 二刀流の守りは脆い」


盾が、前に出る。


「次は、こちらから行くぞ」

アルベルトが踏み込んだ。


盾を前に、しかし守り一辺倒ではない。

剣が盾の縁から滑り出る――防御と攻撃が同時に来る型。


重い。

だが、遅くはない。


アルベルトの剣が、ノーザの喉元を狙う。


ノーザは下がらない。

二刀が交差し、剣を“挟む”。


カンッ、と乾いた音。

その瞬間、ノーザの身体はすでに横に流れていた。


軽い。

まるで重さを感じさせない身のこなし。


ナレーションが熱を帯びる。

ノーザの二刀流は、ただ振るう型じゃない。

受け、いなし、流し、そして――消える。


アルベルトの剣が空を切る。


「……なるほど」


アルベルトの口元がわずかに上がった。


「二刀を“防御”としても使うか」


ノーザはすでに背後。

だが、斬らない。


――まだだ。


ノーザは距離を取る。

視線だけが、相手を射抜いている。


互いに踏み込みすぎない。

決定打は出さない。


これは殺し合いではない。

技と技の測り合い。


探り合いは、まだ終わらない。


だが――

確実に、ギアは上がり始めていた。


間合いが、わずかに開いた。


その瞬間――

ノーザが先に動く。


ノーザの魔力が一気に跳ね上がる。

地を蹴り、剣を下げたまま、片手を前に突き出した。


「征け!」


――大火力魔法・プロメテウス。

巨大な火球が放たれる


観衆がどよめく。

「近接戦だけじゃないのか……!」


だが――

アルベルトは一歩も退かない。


盾を下げ、剣を逆手に構え、静かに詠唱。


「迎え撃て!」


――飄風魔法・ラークウィンドウ。


アルベルトの足元から風が巻き上がる。

旋回、圧縮、加速。

ただの防御魔法じゃない。


切り裂くための風


巨大な火球と、暴風の刃が――

正面から激突する。


轟音。

爆風。

視界が、白く弾けた。



火と風

どちらも一歩も譲らない!


爆炎が風に削られ、

旋風が熱に焼かれ、

相殺――否。


互いの魔法が、拮抗したまま爆散した。


煙の中。


先に姿を現したのは――

盾を前に、足を踏み締めるアルベルト。


その向こう、

二刀を構え直すノーザの影。


アルベルトが低く笑う。


「……やはりだ。君も“前線級”だな、ノーザン・クレイン」


ノーザは剣を下げない。


「そっちこそ。

ただの騎士団長じゃない」


ここからが、本当の勝負だ。


魔法は挨拶。

次に来るのは――


爆煙が晴れきらない中、

観客席の端で、腕を組んだサンが口笛を吹いた。


「アイツも兄弟と同じ“勇者”らしい能力やな〜」


軽い口調だが、目は笑っていない。

魔法の質、詠唱の短さ、そして何より――迷いがない。


隣で、ヴィヴィが鋭く目を細める。

戦場を見る目だ。


「ただ……アイツはカーミラと比べると守り重視だね……ノーザ……」



ヴィヴィは見抜いていた。


アルベルトの立ち回りは、一貫している。

前に出過ぎない。

決して深追いしない。

攻める時でさえ、盾の位置が崩れない。


ヴィヴィが続ける。


「カーミラは“斬って終わらせる”タイプだった。

でもあの団長は……“負けない戦い方”をしてる」


一瞬、視線がノーザに向く。


「ノーザは逆だよ。

勝ちに行く時は……踏み込む」


サンがニヤリと笑う。


「せやから噛み合うと厄介や。

守りの勇者と、攻めの勇者……やな」


これは単なる腕比べじゃない。

“勇者”という同じ系譜に立つ者同士が、

異なる哲学で刃を交えている。


煙の向こう。

アルベルトが盾を構え直す。


ノーザが、二刀を低く構え直す。


ノーザは、深く息を吸った。

二刀のうち、六道を前へ。

構えは――平正眼。


それは六道斬りの中でも異質

精密性・最低

連撃性能・皆無

だが、

一点に叩き込まれる破壊力は、最大!!


観る者が、違和感を覚える。


「来るぞ……」

ヴィヴィが思わず呟いた。


ノーザの足が――踏み込んだ


「なら……!」


六道斬り――

四ノ型・馬頭観音!!


馬頭牙衝ばとうがしょう


地を蹴り砕くような突進!

一直線!

迷いなし!

狙うは一点!

盾ごと貫く覚悟の突き刺し!!



――しかし!!


「まだだ!」


アルベルトの声が、戦場を裂いた。


盾が動く。

ほんの数センチ!

角度を変えただけの、防御!


ガァァン!!

六道の切っ先は弾かれ、

そのまま――


ゴッ!!


盾によるカウンターが、ノーザの胸を打ち抜いた!


宙を舞うノーザ!

地面を転がる!


「っぐ……!」


息が詰まる。

視界が揺れる


観客席で、ニーナが一歩踏み出す。


「ノーザ様!!」


だが――

アルベルトは、追わない。

盾を構え直し、静かに言い放つ。


「力は認めよう……だが――

精密性を捨てた割には威力は無いな」


アルベルトが一歩、深く踏み込んだ。

盾を前に、剣を後ろへ引く――それは攻防一体の構え。


「……これで終わらせる」


次の瞬間、空気が軋んだ。

盾の紋章が淡く光り、剣に魔力が走る。


奥義。

派手さはない。

だが、積み上げた年月そのものを叩きつけるような――確実に“仕留める”ための一撃。


ノーザは、理解した。

受ければ崩れる。

避けても、次が来る。


「……っ!」


思考より先に、身体が反応した。


セラフィックバースト。


ノーザの姿が、ふっと消える。

視界から消失――ではない。

“位置”がずれたのだ。


アルベルトの剣が、虚空を斬る。


「な――」


次の瞬間。

死角。


アルベルトの背後に、ノーザが現れる。


ニルヴァーナが、横薙ぎに振るわれた。


金属音。

剣が弾き飛ばされ、地面に転がる。


アルベルトは即座に距離を取った。

盾を構え直し、呼吸を整える。


ノーザもまた、深く息を吐く。

追わない。

ここで畳みかけても、決め切れないと分かっていた。


二人は、向かい合う。


剣を失ったアルベルト。

だが、盾は健在。姿勢も崩れていない。


攻撃が通らないノーザ。

だが、機動力と切り札はまだ残っている。


互いに、分かっていた。


――勝負は、まだ五分。

――そして、ここからが本番だ。


アルベルトが静かに言う。


「なるほど……

君は“崩す”戦い方をする」


ノーザは二刀を構え直し、短く答えた。


「……アンタは、崩れない」


風が吹き抜ける。

観衆が息を呑む。


守りの勇者と、切り崩す勇者。

均衡は、まだ破れていない。


膠着。

刃も、盾も、互いを決定打に出来ない。

観衆のざわめきが、次第に重くなる。


――その時だった。


裂帛の嘶き。


「ヒヒーン!」


土煙を巻き上げ、戦場へと飛び込んでくる影。

それは、ノーザの愛馬。


「ラヴズ!?」


ノーザの声に応えるように、ラヴズは前脚を高く掲げる。

その瞳は、迷いなく主を見据えていた。


「ノーザ殿……!」


リーが息を呑む。

サンは思わず笑った。


「ラヴちゃんが乗れって言うとるで!」


次の瞬間。

ノーザは迷わなかった。


地を蹴り、鞍へ。

身体が収まった瞬間――すべてが噛み合う。


人と馬。

思考と脚力。

剣と突進。


観衆の中から、怒号が飛ぶ。


「馬は反則だろ!!」


ざわめくラークナイツ。

だが――


アルベルトは、盾を構えたまま一歩も引かない。


「構わない……来い」


その声に、嘲りはない。

ただ、騎士としての覚悟だけがあった。


ラヴズが地面を蹴る。


――突撃。


加速。

風が裂ける。

ノーザの視界から、余計なものが消える。


「行くぞ……!」


二刀が揃い、切っ先が一直線に定まる。


人馬一体。

剣士と騎馬が融合した瞬間。


六道斬り――

四ノ型・馬頭観音。


馬頭牙衝!!


一直線の殺意。

盾ごと、騎士ごと、打ち砕くための突貫。


アルベルトは吼えた。


「――受けて立つ!!」


盾を前に、全身で迎撃の構え。

騎士団長の誇りが、ここに集約される。


衝突の瞬間。


――勝負は、

今、決まる。

人と馬が一体となった突進。

ラヴズの脚力が地を砕き、ノーザの二刀が一点へと収束する。


最強の突き。


刃が、盾の中心を捉えた。


――砕音。


鉄壁を誇った盾に、無数の亀裂が走る。

次の瞬間、それは防御ではなく――破片になった。


弾け飛ぶ金属片。

観衆の息が、一斉に止まる。


アルベルトの身体が、大きく後退する。


「……見事だ」


崩れた盾を捨て、なお前へ出る。

剣を失い、守りを失い、それでも騎士団長は退かなかった。


「――だが!」


最後の意地。

気迫だけで放たれる突撃。


しかし。


ノーザは、もう見ていた。

力の流れも、重心も、覚悟の向きも。


「……!!」


一歩、踏み込む。


刃ではない。

拳でもない。


当て身。


首筋へ、最短距離、最小動作。


――アルベルトの視界が、揺れた。


膝が折れ、身体が前のめりに崩れる。

重装騎士は、そのまま地に伏した。


気絶。


完全決着。


一瞬の静寂。


そして――


「勝者!!」


ゴツい将校の声が、広場に響き渡る。


「ノーザン・クレイン!!

 ――クレインパーティ、全勝!!」


爆発する歓声。


地鳴りのような拍手。

叫び、口笛、武器を打ち鳴らす音。


「うおおおおお!!」 「強ぇぞ!!」 「馬ごと突っ込む勇者がいるかよ!!」


ラークナイツの団員たちは、悔しそうに、しかし誇らしげにアルベルトを見つめていた。

誰一人、敗北を恥じる顔ではない。


ヴィヴィは拳を突き上げる。


「やったねノーザ!!」


サンは大笑いしながら肩を叩く。


「兄弟、派手すぎやろ!!」


リーは静かに目を閉じ、頷いた。


「見事……それに尽きる」


ニーナは胸に手を当て、安堵の息を吐く。


「……本当に、無事でよかったです」


そして。


ノーザは、倒れたアルベルトを見下ろしながら、剣を収めた。


強敵だった。

対等だった。

だからこそ――胸を張れる。


この勝利は、侮辱ではない。

互いの誇りを賭けた、真っ当な決闘の結果。


ヘルヴェティアの空の下。

二つの勇者が交差した戦いは、喝采の中で幕を閉じた。



火の周りに、自然と人が集まっていた。

鉄と汗と緊張の匂いは消え、代わりに立ちのぼるのは香ばしいソースの匂い。


鉄板の前で腕まくりしたサンが、得意げにひっくり返す。


「ほら出来たで!お好み焼きや!粉もんはええぞ!」


じゅう、と音を立てるそれに、さっきまで刃を向け合っていた者たちの視線が一斉に集まる。

ラークナイツの団員たちも、最初は戸惑いながらも皿を受け取った。


セラフィーナが一口かじり、目を丸くする。


「うん、美味しい!これが……粉もの……!」


隣ではエルンストが無言で頷き、次の一切れを箸で掴んでいた。


「美味い……!何処の国の料理だ、これは……!」


アルベルトはゆっくり噛み締めるように食べ、ふっと表情を緩める。


「……ノーザ。素晴らしい食事会に招待してくれて、感謝する」


焚き火の向こうでノーザが肩をすくめて笑う。


「いいよ。今日は本当に為になった。ほら、遠慮せず食べて。サンの料理は最高だからさ」


ヴィヴィは既に二枚目に突入していた。


「勝負の後にこれは反則だね!戦いより胃袋がやられるよ!」


リーは静かに湯気を眺めながら、ぽつりと。


「……剣を交えた相手と、同じ卓を囲む。悪くない文化だ」


ニーナは皿を配りつつ、どこか嬉しそうにその光景を見渡している。


リコは少し離れた場所で、楽しげに談笑する両陣営を眺めながら、小さく息を吐いた。


ミネルは初めて見る料理に興味津々で、翼をたたみながら覗き込んでいる。


「人間って……戦った後に、ちゃんと一緒に食べるんだね……」


誰かが笑い、誰かが皿を差し出す。

敵と味方の境目は、今はもう無い。


こうして夜は更けていく。

剣ではなく、食卓の上で結ばれた縁を残して。


――ヘルヴェティアの星空の下。

戦いの記憶は、少しずつ温かなものへと変わっていった。


夜が更け、宴も終わりに近づいた頃。

焚き火は小さくなり、笑い声も穏やかなものへと変わっていた。


その後――

ラークナイツはヘルヴェティアに留まる選択をした。


彼らは自らの慢心を恥じ、そして認めた。

己たちは強い。だが、まだ足りない。


統一された装備、規律、戦術。

それだけでは守れないものがあると、あの一戦で知ったからだ。


ラークナイツはヘルヴェティア正規軍の軍事訓練に参加した。

市街戦、山岳戦、補給線の維持、民の避難誘導。

「敵を倒す戦い」ではなく、「民を守る戦い」を学ぶために。


それでも彼らは、騎士であることを捨てなかった。

剣を誇り、盾を信じ、己の名に恥じぬ在り方を貫いた。


やがて彼らは目指す。

冒険者でも、兵士でもない。

騎士団としての冒険者――ワンランク上の存在へ。


一方その頃。


ヘルヴェティアの街道を行く、ひとつの旅団があった。

統一感のない装備、種族も立場も異なる仲間たち。

だが、その歩みは確かで、迷いがなかった。


ノーザン・クレインと、その仲間たち。

クレインパーティは、次なる地へ向かっていた。


如意輪天一閃とは、ようは天翔龍閃だ。

馬頭牙衝とは、ようは牙突だ。


ミネルの見た目投稿するの忘れてました。↓

https://www.pixiv.net/users/118222108

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