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ペテン師現る

ノーザ達、実力はあるけど実際まだ一冒険者に過ぎないんですよね

新しい武器が揃った翌朝。

宿のロビーのテーブルに、紅蓮剣と錫杖が並べられ、皆が覗き込みながら集まっていた。


リコの目にはスキルリストが見えている。


「いや~~、すごいよコレ!まさか武器そのものに複数も上級スキルが宿ってるなんてね!」


興奮して瞳が輝いている。


「見てこれ。まずヴィヴィの紅蓮剣!」


リコは紅蓮剣の刀身をスッと撫でる。

淡い火の揺らぎのような魔力が走った。


「剣自体に 火炎増幅 と 煌属性 の二つが刻まれてる。火を操る人にとっては文字通り“専用機”だよ。鍛造した職人さん天才じゃない?」


ヴィヴィが得意げに胸を張る。


「で、こっちはリーの錫杖!」


リコが錫杖の輪を軽く鳴らすと、やわらかい清音が響いた。


「ほら、音に反応して魔力が広がるんだよ

中に獣避けと霊気軽減の効果が入ってる。

リーには相性バッチリすぎるよ。武器と同時に“携帯結界発生器”だね!」


リーは目を細め、静かに錫杖を握り直す。


「……なるほど、これは拙僧でも扱えそうだ」


ニーナが感心したように手を叩く。


「リコさんの鑑定って本当に便利ですね!まるで鑑定士そのものじゃないですか」


リコは照れたように頭をかいた。


「職業柄ね。スキルを見るのは得意なんだ。

にしても……君たち、本当に面白い武器揃えてるよ。旅の質が違う!」


ノーザが苦笑しつつ紅蓮剣の鞘を眺める。


「俺達もこの先、どんどん装備を整えていかないとな……」


ヴィヴィは紅蓮剣を見つめながらニヤリ。


「任せなよノーザ! これで次の戦場はあーしの独壇場さ!」


ストロダンの朝は賑やかだ。

路地の屋台の串焼きの匂い、武具屋の槌音、冒険者の怒号と笑い声――

そうした雑踏をくぐり抜け、ノーザ達はいつものギルドの扉を押し開いた。


ところが今日は、空気が少しだけざわついていた。


受付嬢がこちらに気づくと、慌てて書類を抱えて走り寄ってくる。


「皆さん!ちょうどよかったんです、あの……急なんですが、このクエストをお願いできませんか?」


差し出された依頼票には、


《爆弾の材料を押収せよ》

――とある。


読み進めるノーザの眉がわずかに動く。


内容:

ゴリアット樹海の奥、かつて魔族の拠点だった廃墟で、爆薬の原料となる物資が大量発見された。

誰かが悪用する前に、安全に回収せよ。


受付嬢は事情を説明しながら、少し困った顔をした。


「本来ならこれは Bランク以上の依頼なんです。ですが今日に限って当ギルドのA・Bランクの冒険者は、全部“上級クエスト”に呼び出されまして。朝から全員いなくなってしまって……」


サンが腕を組み、少し周囲を見回す。


「確かに今日は静かやな……いつもはゴツい奴らがおるのに」


受付嬢は続けた。


「依頼そのものは緊急性が高いため、今日中に着手しないと危険なんです。

魔族残党の仕業か、あるいは別の犯罪組織か……まだ何も分かりません。

ノーザさん達、お願いできますか?」


ヴィヴィがニヤッと笑いながらノーザを肘でつつく。


「ほらノーザ、また“貸し一つ”ってやつだよ」


ニーナは真剣に依頼票を見つめ、小さく頷く。


「……魔族の残滓を放置するのは危険です。行きましょう」


リーは静かに錫杖を鳴らした。


「火薬は扱いを誤れば大惨事となる……拙僧も警戒しよう」


リコは依頼票に書かれた“爆薬”の文字を見て顔をしかめる。


「うわぁ……嫌な予感しかしないよ。でも、必要ならやるしかないか」


最後にノーザが皆を見回し、短く頷く。


「分かった。俺達が行こう。

……上級冒険者がこのタイミングで全員留守、か。妙だな」


受付嬢は胸を撫でおろした。


「ありがとうございます!本当に助かります!」


こうしてノーザ一行は、

“上級冒険者が消えた日”に浮上した不穏な依頼――

爆弾素材押収任務へと向かうことになる。


ゴリアット樹海へ向かう道中


渓谷沿いの細い山道を、六人と一頭の馬が進む。

樹々の間を抜ける風は生暖かく、火山麓の湿気を運んでいた。


ノーザが前を歩くリコに問いかけるように呟いた。

「AやBランクが総動員される任務って……一体なんだろうな。

爆薬押収よりもずっと重大な案件だってことだよな?」


リコは杖を肩に乗せながら振り返る。

「いやいや、まさかドラゴンでも出た?

上級冒険者をまとめて呼ぶなんて、普通じゃないしね」


サンが鼻を鳴らす。


「ドラゴン出たら国境沿いがパニックやろ。噂くらい聞くはずやで」


後ろでニーナが、小さく首を振りながら言った。


「聞いた話ですが……隣国の領主から“直接”ギルド本部へ依頼が届いたそうです。

内容は秘匿されているらしく、情報はほとんど出ていません。

ただ、緊急で即応できる上級冒険者が全員呼び出されたとか」


リーもまた周囲の気配を探りながら重い声を落とす。

「それほど急な依頼……裏に何かあると思った方が良い。魔族の動きが活発になっているのかもしれぬ」


ヴィヴィは腰の紅蓮剣を軽く叩きながら笑った。

「まあ、あーし達はあーし達で仕事こなすだけさ。

今回のはそんな危険じゃなさそうだしね!」


ゴリアット樹海・旧魔族拠点


濃い樹海の奥、獣道のような細い道を抜けた先に、ぽっかりと空間が開けていた。

朽ちた木造の櫓、黒ずんだ石壁、使われなくなった祭壇……

どう見ても廃墟だが、魔族の支配時代の残滓が色濃く残っている。


ノーザが足元の苔むした木箱を蹴って砕きながら、周囲を見渡した。


「ここが“旧拠点”か。人気はないな……火薬はどこだ?」


横にいたラヴズが地面に顔を近づけ、鼻孔を大きく震わせた。

しばらく匂いを追った後、短くいななく。

「フゴッ……!」(あっちだ、変な臭いがする……)


ノーザが頷き、その方向へ足を向ける。


「ラヴが言うなら間違いない。行ってみよう」


サンが肩の斧を構えつつ警戒を強める。


「火薬の臭いやったら独特やしな。湿気で腐っとる可能性もあるで」


リコは手帳を開きながらメモを取り、少し青ざめて言う。

「火薬の材料って、混ぜ方によっては不安定なんだよね……爆発しないように慎重にいこう」


ニーナが魔力を巡らせて周囲の気配を探る。


「魔物はいませんね……でも、何か……妙な魔力が残っています」


リーが錫杖を軽く鳴らすと、乾いた澄んだ音が響き、不吉な瘴気が霧散した。


「邪気は微量……しかし、誰かが触った形跡がある。最近だ」


ノーザは眉を寄せ、ラヴズの示す方向に視線を向けた。


その先には──

朽ちた倉庫のような建物が、ぽつりと佇んでいる。


「……火薬はまだ残っているのか。それとも誰かが取りに来たのか……」


緊張がじわりと高まりつつ、仲間達は倉庫へと向かう。


倉庫の内部は薄暗く、湿気がまとわりつく。

だが、奥に積まれた木箱だけはやけに新しい。


ノーザが慎重に木箱を開ける。

中には黒い粉末が袋詰めされ、ぎっしりと詰まっていた。


サンが小声で口笛を吹く。


「……おいおい、これ全部火薬やで。量エグいな」


リーが眉を寄せる。


「これほどの量……魔族は大量破壊兵器を使おうとしていたのか……」


リコは袋を一つ手に取って鑑定した。


「質は高いね。爆発反応は強め。扱いを間違えると……うん、全員吹っ飛ぶやつだね」


ノーザはラヴズを下がらせ、仲間に視線を送る。


「よし。ニーナ、通信頼む。指示を確認して処理しよう」


ニーナは深く頷き、静かに目を閉じた。

魔力の糸が空気を震わせ、遠くギルドの管制室へと繋がる。



通信魔法・ギルド管制室

(……もしもし、こちらピサロ。旧魔族拠点にて爆薬を発見しました。処理手順の確認をお願いします)


(……こちら管制。音声届いています。

まず確認ですが──振動式のトラップ反応はありませんね?)


(はい、反応はありません)


(了解。では導火線を火薬から切り離し、個々を冷却保護してください。

爆薬は0度以下の状態で運搬可能になります)


(承知しました。一旦通信を終了します)


魔力の糸が静かに消えた。



危険物処理


ニーナが指先を滑らせると、周囲の空気が急激に冷え始めた。


「……行きます。アイス・シェルター」


淡い蒼光とともに、複数の氷の箱が地面からせり上がる。

冷気は一定の温度に保たれ、箱の中は完全に0度以下。


サンが唸る。


「これは便利やな……運搬用の冷蔵庫やんけ」


リコが感心したように目を輝かせる。


「魔法で温度管理できるなんて……やっぱりニーナさん、凄い魔術師だよね」


ニーナは淡々と箱の蓋を開け、火薬袋を慎重に入れていく。

リーも隣で導火線を手際よく切断し処理する。


ノーザは周囲を警戒しながら言った。


「よし、残りも運び出す。氷箱なら安全だ、ギルドまで一気に持って帰るぞ」


ラヴズも短くいななき、荷運びに協力する姿勢を見せた。


樹海に、氷箱の澄んだ音と仲間達の動く気配だけが響く──

静かで、しかし不穏な“前兆”を孕んだまま。



ゴリアット樹海・帰還の途


氷箱を括りつけ、ノーザは仲間と共に樹海を後にする。

冷えた空気と氷箱の淡い蒼光が、緊張の名残をわずかに漂わせていた。


サンが後ろを振り返りながら言う。


「……しかしホンマに何も出ぇへんかったな。

護衛ゼロとは拍子抜けやで」


ラヴズの蹄が乾いた枝を踏み、パキ、と響く。

その音が妙に大きく感じられるほど、樹海は静まり返っていた。


ノーザが眉を寄せながら少し距離を置いて周囲を見渡す。


「危険物の回収にしては……あっさりし過ぎてる。

魔物も、盗賊も、魔族の残党もなし。

樹海の魔物が“この時間帯だけ”いなくなるなんて……普通じゃない」


リコが氷箱に腰かけ、軽く笑ってみせる。


「まあ、平和なのはいい事じゃない?

がっつりAランク以上が総出なら、敵も隠れてるのかもね」


リーは険しい顔でつぶやいた。


「……それでも静かすぎる。

魔族拠点の残骸だ。必ず“気配”は残るはずなのだが……」


ニーナも歩を進めながら背筋にわずかな寒気を覚える。


「……嫌な感じですね。

敵が出てこないより、出てきた方が“楽”な時もあります」


ノーザは樹海の出口が見えたところで、仲間に声をかけた。


「よし、油断せず街に戻ろう。

……この静けさ、帰ったら何か起きてる気がする」


夕日が差し込む樹海の出口。

そこを抜けた瞬間──まるで背後に何かが潜んでいたかのような、

嫌な余韻だけが、ずっとノーザ達の背中に張り付いていた。


街の門をくぐった瞬間、ノーザ達は息を呑んだ。


空が、赤い。

煙が、空を覆い隠している。

建物が炎に包まれ、瓦礫と化した路地を人々が悲鳴を上げて走り抜ける。


「避難を急げぇぇ!!押すな!落ち着いて進め!!」


「お母さん!お母さん!!」


「魔族だぁぁ!!家が!!家がぁ!!」


サンが戦慄してつぶやく。


「……なんや、これ……戦場やないか……」


ノーザは受付嬢を見つけ駆け寄った。

彼女は必死に避難誘導しながら泣きそうな顔で叫ぶ。

「ノーザさん!!

上級冒険者が……皆、隣国の救援依頼で街を離れて……そしたら……突然、魔族が……!!

こんなの、罠だったんです!!」


リーが険しく言う。


「……上級冒険者が“手薄になる時間”を狙いすました襲撃……誰かが……それを読んでいた……」


その瞬間──空が異様に揺らめき、

焼け落ちた建物の屋根の上に “影” が浮かび上がる。


その影は、細身の青年のような姿。

鈴の音のような軽い笑い声が、燃える街に不気味に響いた。


「いやぁ~~~実に見事だったよ?

君たち人間は、本当に“信用”という言葉が大好きだねぇ?」


ノーザ達が見上げると、そこに立っていたのは──


魔族幹部〈ペテン師〉ロキシス


奇妙な仮面をつけ、両手をひらひらと揺らしながら芝居めいた動きで深く一礼する。


「領主の“救援要請”?

あんなの、ぼくの作った“紙切れ一枚”でみんな信じてくれるんだもの。

ほんっと、人間ってチョロいよねぇ~~?」


ヴィヴィがロキシスを睨み付ける

「アンタ……!!この街を……!!」


ロキシスは肩をすくめて笑う。


「いやいや、責めないでよ。

ぼくはただ──

“上級冒険者が消えた街がどうなるか” を見たかっただけさ!」


ニーナが怒りの震える声を押し殺す。


「……あなたのせいで……どれだけの命が……!」


ロキシスは指をひとつ鳴らし、街の奥から次々と魔族兵が現れる。

その人数は、明らかにこれまでとは格が違う “部隊規模”。


「さぁ、“Cランク冒険者ご一行さん”。

ぼくを楽しませてごらん?

できるなら──だけどね?」


ノーザの拳が震えた。


「……お前だけは絶対に許さない……!」


ロキシス、クスクスと笑いながら舞台の幕が上がるように両腕を広げた。


「さぁ、開演だよ。

ぼくの“嘘と死”のステージへようこそ──」


炎と絶望の街で、久々の幹部戦が幕を開ける──。


燃え盛る街を背景に、ロキシスは無邪気に肩を揺らした。


「さてさて、どう出るのかなぁ?

ぼくの“ステージ”は弱気な観客はお断りだよ?」


しかし──

ノーザの眼には一切の怯えがない。


静かに息を吸い、二振りの武器を手に炎の向こうを真っすぐ見つめる。


「行くぞ……」


その声音に、仲間全員が背筋を震わせた。


サンが首をかしげる。


「ところで兄弟……なんで最近は一刀流だったんや?

ワイずっと気になっとったんやけど?」


ノーザは肩の力を抜いて、いつも通りの軽い調子で答えた。


「……ならし運転?」


「は?」


「新しい武器に慣れるために“あえて封印”してただけ」


そう言いながら──

ノーザの両腰の二本の刀剣が、炎の揺らぎの中で静かに抜き放たれる。


片手に、黒き波紋を宿す 黒刀六道

もう片手に、未だ眠る聖性を秘めた ニルヴァーナ


その瞬間、焔を裂く風が吹いた。



ノーザの二刀流スキルがLv4に上がった!

二刀流時も各武器の専用技が使用可能になった!



ロキシスがピタリと動きを止める。


「……へぇ。

“本気”を見せてくれるわけだ?」


ノーザは前へ歩き出す。


「お前みたいな外道相手……容赦はしない」


ロキシスの笑みが深く歪む。


「へぇぇぇ……?

人類領の後半に入った途端、随分と強気じゃないか。でもねぇ、ノーザン・クレイン……流石は注目株の若手くんだ!……でも言っておくけど──」


ロキシスの分身が 3体 に霧散して増えた。


「二刀流の達人ほど、幻術に弱いんだよ?

見える“本数”が増えるほど、脳が処理できなくなるからね」


ヴィヴィが警戒の声を上げる。

「ノーザ!!惑わされるなよ!!」


リーが静かに祈るようにつぶやく。

「……来る……!」


ニーナがノーザの背を見つめたまま握り締める。


「ノーザ様……落ち着いて……!」


しかし──

ノーザの心は微動だにしない。


一歩、また一歩。

二振りの刀を水平に構え、炎に照らされて影が伸びる。


ロキシスの姿が三つ、五つ、十に増えた。

嘲るように同じ声が重なる。


「さぁノーザン・クレイン……ど〜れが本物でしょ〜か?」


──その瞬間。


ノーザの二刀が、焔を裂く風のように一度だけ“流れた”。


刹那、分身たちの身体が

“形を保ったまま” すべて縦横にスッと抜ける。


遅れて──

影が崩れるように霧散した。


「……へぇ。

いきなり“全部”落とすとは思わなかったな」


ノーザは応じない。

ただ、刀を下段に滑らせて構え直す。


ロキシスの目がギラリと光り、掌に魔力が集束した。


「じゃあ……これならどうかな?

避けれるものなら避けてみなよ!!」


空気が震え、

連続して 八発 の魔弾が弾け飛ぶ──!


高速ではない。

だが奇妙な軌道で曲がり、絡みつくように追いすがってくる。


「ノーザ!!」

「曲射弾……っ!?」


ノーザは左右に跳び、地面を滑り、魔弾を紙一重で避けながら前へ進む。


だが──ただ避けているのではない。


六道の刀身が、僅かに震えている。


ノーザの声が静かに落ちる。


六道斬り──二ノ型


踏み込みの気配が、まるで水面に落ちた雫のように広がる。


人間道・准胝観音


ロキシスの目が見開く。


ノーザの動きは──

遅い。あまりに、遅い。

すべてが“スローモーション”のように見える。


「……なにそれ?

避けられるの?ねェ?」


ロキシスは一歩、二歩、後退しながら気づく。


遅いのに、なぜか当たらない


錯覚とも違う。

まるで最小限の動きで全てを見切るような……

そんな不気味な動きだ。


ノーザが最後の名を告げる。


准胝人道四苦八苦


回避しながらゆっくりと確実に迫る刃

曰く、六道斬り 最遅の一撃

ロキシスの頬を紙一重でかすめた。


「……ッ、な……なんだ今の……!」


ノーザは淡々と刀を引いた。


「回避に徹しながらゆっくりと距離は縮む、必ず斬る結果にたどり着く、それが人間道の型……」


「……説明いらないよ!?

そんな気持ち悪い技……!!」


背中を冷汗が流れる。

六道の刃がゆっくりと、しかし確実にロキシスへ迫る。


最遅の斬撃──

じわじわ忍び寄る“避けられない未来”。


ロキシスは歯を食いしばり、魔力を全開にして迎え撃つ。


「なら……回避できない距離!!

来いよォォ!!」


影が膨らみ、カウンターの魔弾が一点に収束する。

ロキシスの正面で、六道の刃と魔弾が交差し──


金属音と爆裂音が同時に響いた。


その一瞬。


ロキシスは確かに“手応え”を感じた。


「取った……ッ!!」


だが──違和感。


ノーザの気配が、

正面から完全に消えている。


「……は?」


視界の中にノーザがいない。


急に、周囲の空気が静止する。


どこだ?

上か? 左右か? 地面か?


次の瞬間、ロキシスは理解する。


──背後だ。


ロキシスが反射で振り返る。


そこには、剣を掲げたノーザの姿。


新剣術スキル セラフィックバースト


神聖な光の残滓を帯びたニルヴァーナが振り下ろされる。


それは“速い”のではない。

「消えて」「現れる」斬撃。


光の翼を引くように

無音で背後から落ちる一撃。


刃が地面を割り、石畳が一直線に砕け散る。


ロキシスのマントが、

数瞬遅れてサクリと斬り裂かれた。


致命傷ではない──

しかし、ペテン師ロキシスでさえ、


「…………っ、ちょっと待って……

今の……本当に人間の動き……?」


震えた声を漏らすしかなかった。


ノーザは淡々と刃を構え直す。


ロキシスは笑うしかない。


「……冗談だろ……

おいおい、なんだよその二本……。

反則じゃんか……」


ノーザの真骨頂、

二刀での本気がわずかに露わになる。


ノーザの奇襲を受け、ロキシスは後退しながらニヤリと笑った。


「やれやれ……正面からやり合うのは分が悪いね。

じゃあ“魔族らしく”行こうか?」


ロキシスが両腕を広げる。


空間が歪み、黒い魔弾が無数に生成される。

数え切れないほど──まるで夜空に散らばる星のよう。


次の瞬間、全ての魔弾が街の一般市民へ向かって放たれた。


「さあ!!守らないと……大変だよォッ!!」


一気に地獄と化す市街地。


幼い子どもを抱えて逃げ惑う母親、

倒れた兵士を必死で支える仲間──

パニックが一瞬で街を飲み込んだ。


ノーザは歯を食いしばる。


「クソ……!!皆、頼む!!!」


仲間たちが即座に動く。


ニーナが氷壁を展開し市民の盾となる。

リーは結界を張り迫る魔弾を祓う。

サンは方天戟で魔弾を叩き落とし、

リコは自らに盾スキルを埋め込み市民を守る。

ヴィヴィは炎で迎撃する。


しかし──


人数が圧倒的に足りない。


ひとつの魔弾が、市民の背中へとまっすぐ迫る。


その瞬間。


空気が震えた。


地面に“影の円”が広がり、満月の紋様が浮かぶ。


女の声が響く。

転移魔法──フルムーン・コリドー《満月の回廊》


影の紋様から、すらりと長い脚が現れ、

しなやかな体躯が影から浮かび上がる。


銀髪が月光のように揺れる。


魔剣士カーミラ


影から現れた瞬間、彼女の剣が閃き、

迫っていた魔弾を全て切り裂く。


破裂音が遅れて街中に響いた。


「た、助かった……!?」

「……あの人……!」


カーミラはその視線を意に介さず、静かにノーザへ歩み出る。


瞳には怒りと反省の色。


「……不覚。

あの程度のブラフに惑わされるとは…」


焦げた街の匂い、泣き叫ぶ人々。

その全てが彼女の胸を刺していた。


ノーザは彼女を見て、ほんの一瞬だけ安堵する。


「カーミラ……助かった。」


風が止まり、

ロキシスだけがニヤつきながら拍手する。


「おお〜怖い怖い。

武闘大会の“準優勝者”さんのお出ましかぁ?」


カーミラは冷ややかにロキシスを見据えた。

「ペテン師……貴様は絶対に許さない。」


決戦準備が整う──。


瓦礫の上で構えるロキシスが薄笑いを浮かべる。


「へえ……手を組むんだ?

良いね良いね……強い者同士が仲良くするの、ボク大好きだよ」


その声に、カーミラが並んで立つ。


月光のような銀髪が揺れ、魔剣に黒炎が灯る。


「ノーザン・クレイン。

協力させてもらおう……この男は手強い。」


ノーザは二刀──ニルヴァーナと六道を交差して構えた。


「ありがとう、カーミラ……行くぞ!」


ロキシスが指を鳴らす。



「じゃあ!最高のステージを用意しよう!さあ踊ってくれよぉ!!」

周囲に幻影が無数に現れ、

本物と偽物が入り乱れる“ペテン師の迷宮”が展開する


ロキシスの幻影たちが一斉に襲いかかる。


しかし──


二人の剣士は微塵も惑わされない。


カーミラが低く囁く。


「……影が揺れていない。右の列は偽物。」


彼女の魔剣が黒い三日月を描き、

三体の幻影をまとめて切り捨てた。


ノーザも即座に反応する。


「左の列は“足音”が無い……!」


六道の軌跡が複雑な円を描き、

幻影の急所を正確に斬り裂く。


「ちょ、ちょっとぉ!?

なんでわかるのさ!?それ、見えてるの!?」


ノーザは冷静に笑う。


「剣士を騙すには……お前の技量が足りない。」


カーミラも静かに言い放つ。


「貴様の幻惑は、ただの視覚欺瞞。

剣士は“視覚だけ”で敵を見ているのではない。」


二人の剣撃が、ロキシスの作り出した迷宮を切り裂いていく。


砕け散る幻影。

逃げ場を失うロキシス。


ノーザが六道を構えなおし、低く息を吐く。


「行くぞ……」


カーミラの魔剣に、闇のオーラが螺旋状に巻きつく。


「合わせる……来い、ノーザ。」


二人の間に一瞬だけ静寂が走った。


ロキシスは青ざめる。


「ちょ……ちょっと待って!?

これ、本気すぎでしょキミたち!!」


足を引きずりながら後退するロキシス。


迷宮は全て破られ、幻影は消え失せ……

もはや逃げ場は無い。


ノーザ・カーミラ

「──終わりだ!」


逃げるロキシス──だが、逃がさない


ロキシスは背後の空気を舐めるように読み取り、

殺気の向かう方向とは逆へ弾丸のように跳んだ。


「クッソ……ここまで、とは……!!

今日は引かせてもらうよ!!!」


闇の残光が尾を引き、瞬く間に距離が開く。


その動きを見たサンが、口の端を吊り上げた。


「──逃がさんで!!」


瞬時に弓を構え、

一直線に矢が走る。


ロキシスは振り返りもせずに手を伸ばし、軽々と掴み取った。


「甘い甘い!!

この程度の攻撃くらい、幹部であるボクなら見切れるさ!!

残念だったね狩人君!!!」


勝ち誇るロキシス。


だが──


サンはさらに大きく笑った。


「アホめ!

それは爆弾矢やで!!」


「……え?」


次の瞬間、ロキシスの手元が白光に包まれた。

「ぎゃああああああ!?」


闇色の身体が地面をバウンドしながら吹っ飛ぶ!


ロキシスが着地した地点を見たニーナの瞳が大きく揺れた。


「まずい……!火薬の近くに!」


大量の押収火薬が積み上げられている場所へ、

ボロ雑巾のように投げ出されるロキシス。


そこで誰よりも早く動いたのはリー。


鋭いステップで滑り込み、

足元の木片を蹴り上げる。


「ヴィヴィ殿──!」


木片は完璧なパスでヴィヴィの胸元へ飛んできた。


ヴィヴィの紅蓮剣が燃え上がる。

ヴィヴィは左足を上げ、右足軸足にして

剣をフルスイングした。


「……燃えちまいなァァァ!!」


紅蓮剣の炎で木片に着火。

木片は鋭いライナーで

火薬の山へ真っ直ぐ落ち込んだ。


「ちょ、ちょっと待っ……話し合お──」

爆 散


爆炎が地を揺らし、巨大な火柱が上がる。

衝撃波が街中に轟き、空が一瞬、真昼のように照らされた。


完全に巻き込まれたロキシスは、

叫び声すらかき消され──粉々に爆散した。


炎の渦の中で、ノーザの仲間達が顔を見合わせる。


「ふう……これでええやろ?」


「ま、相手が悪かったね!」


「見事な連携……」


カーミラが剣を納めて呟く。

「……あれほどの策士でも、仲間の連携には勝てなかったな。」


ノーザは煙の向こうを見つめ、刀を静かに収めた。


ストロダン、危機を脱す


街を包んでいた黒煙は徐々に薄れ、

兵士たちが消火と救助に奔走していた。


住民たちは疲れた顔のまま、それでも安堵を浮かべている。


あの暴虐な闇の爆散以降──

この地域での魔族の影は完全に消え去った。


表彰式


ギルド本部の大広間。

避難民や兵士、冒険者たちで埋め尽くされる。


壇上に上がるノーザ、ニーナ、ヴィヴィ、リー、サン、リコ

そして一歩離れて佇むカーミラ。


ギルド長が深く礼を取った。


「……本日、ストロダンは壊滅の瀬戸際だった。

だが皆がここに立っていられるのは──

君たちが、あの魔族幹部ロキシスを討ち取り、

街を救ってくれたからだ。」


どよめきが広がり、拍手が波のように広がる。


ギルド長は大きく巻物を掲げた。


「ここに──クレインパーティを正式に Bランク冒険者 と認定する!!」


途端に大広間が揺れるほどの歓声が沸き起こった。


ヴィヴィが拳を突き上げた。

「やった!!ついに来たね、Bランク!!」


サンは腹を抱えて笑い、仲間の背中をバシバシ叩く。

「兄弟、ついにやったな!ストロダン入りして数日でBランク昇格とは、えげつないで!」


リーは胸元に手を当て、目を閉じる。

「皆が無事で……本当に、何よりだ……」


ニーナはノーザの袖をぎゅっと掴む。

「ノーザ様……誇らしいです……!」


ノーザは少し照れながらも、皆へ頷いた。

「……みんなのおかげだよ。

でも、まだ目標はずっと先にある。

ここは通過点だ。」


受付の喧騒の奥で、

カーミラがゆっくりとノーザの前に歩み寄った。


「……ノーザン・クレイン。

あの戦い、剣士として胸が熱くなった。

私も、君たちの昇格──心から祝福する。」


ヴィヴィがニヤッと笑う。


「また戦いたいって顔してるよ、カーミラ」


「当たり前だ。次は負けん。」


二人が固く握手する。


ギルド長の最後の一言


「諸君!本日の殊勲者たちに最大の拍手を!

ストロダンは救われた──

クレインパーティ、万歳!!」


「「「万歳!!!」」」


冒険者たちの喝采が大広間を満たし、

ストロダンの夜は感謝と祝福の熱気で輝き続けた。


ギルド併設の大酒場。

今日ばかりは誰もが労いと歓喜に満ちていた。


テーブルには山盛りの肉料理、焼き魚、巨大ジョッキの酒。

街の復興の兆しと、Bランク昇格の余韻が溶け合い、空気はやけに温かい。


サンは既に三杯目を空にし、大声で笑っている。


「クハハハ!!兄弟!今日ぐらいは飲めや!!」


ノーザは困ったように笑い、手を振る。


「いや……俺は、ちょっと……」


横でニーナがノーザの腕に密着して座っていた。

瞳をきらきらさせ、酒の勢いもあって距離が近い。


「ノーザ様……♡

こうして無事に今日を迎えられたのも……全部ノーザ様のおかげです……♡」


ノーザは顔を真っ赤にしながら咳払いをする。


「わ、分かったから……少し離れよ? な?」


ヴィヴィは豪快に肉を噛り、

その横でリコが悪戯っぽい笑みで煽っていた。


「ヴィヴィ、実は酒弱いんじゃないの? そんな顔してるけど?」


「るっさい!! 今日は飲むんだよ!!

優勝者だよ!?Bランクに昇格だよ!?

ノーザが横にいるから調子いいんだよ!!」


「ええやんけ!もっと飲めぇぇ!!」


「やっぱり君、脳筋だね」


「誰が脳筋だ!!」


テーブルはずっと賑やかで、笑い声が途切れることはなかった。


そして──静かに座るカーミラ


周囲の喧騒とは対照的に、カーミラはひとり淡々と酒を飲んでいた。


「……美味い。」


無表情に近いが、口元がゆるむ。

凛とした横顔に似合わず、空のボトルが数本、既に足元に転がっている。


ヴィヴィが半ば呆れ、半ば尊敬の視線を送る。


「カーミラ……あんた……何本飲むつもりだい……?

てかなんでそんなケロっとしてんだよ……?」


カーミラは静かにジョッキを置いた。


「酒は……好きだ」


その一言に、サンが腹を抱えて笑い、

リコは「全然酔ってる感じがしない…」と呟き、

ヴィヴィは「うぅ……勝てる気がしない……」と肩を落とす。


リーだけは酒を断り、静かに湯飲みを持ちながら言った。


「……今日は皆、よく働いた。命ある酒宴は……良いものだな。」


ノーザも麦茶を片手に頷く。


「……本当に。

街も、皆も無事でよかった。」


カーミラがわずかに目を細め、ノーザを見た。


「……礼を言う。

あの戦い……胸が震えた。

剣士として……忘れられぬ夜だ。」


ノーザは少しだけ照れながら、静かに笑った。


「また戦おう。

次は……俺の方が学ばせてもらうかも。」


カーミラの頬が、酒のせいか、それとも──

ほんの少し赤く染まった。


「……楽しみにしている。」


宴は続き、夜は更けていく


どんちゃん騒ぎ組の笑い声、

ニーナの甘いささやき、

カーミラの静かな杯、

リーの穏やかな微笑み──


その全部が、

この日の平和を象徴するように混ざり合い、

夜空の下に溶けていった。


クレインパーティとカーミラが肩を並べた最初で最後の宴。


明日にはそれぞれの道へ戻る。

だが今は──ただ、共に生きている喜びを噛み締めるだけでよかった。

カーミラって現時点だと多分最強キャラかもしれないです。


カーミラの見た目↓

福島ナガト https://www.pixiv.net/users/118222108

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