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一度、剣を置いて槌を取れ

前半の話しで考えてて1番楽しかった話かもしれないです。

──遺跡・転移装置前


転送光がふっと消えた。


そこには、

ノーザとニーナの姿が確かに立っていた。


次の瞬間。


「──ノォーーザぁぁぁぁ!!!」

「ニーナちゃーーん!!」

「良かったぁぁぁぁ!!」


仲間たちとギルド職員の声が一斉に木霊した。


ヴィヴィが真っ先に飛びつく勢いで駆け寄る。

「うおおおッ!本当に戻ってきたぁぁ!!心配させんなよバカぁ!!」


リーは胸に手を当て、心底ほっとした表情。

「……仏の御加護……無事で何より……」


サンは涙目で鼻をすすりながら。

「兄弟!!ほんま心配したんやで!!どっか知らん世界飛ばされたらどうしよう思うたわ!!」


ギルド職員の若い男も肩を落とし、

「はぁ……本当に良かった……お二人の無事が確認できて……」


年配の女性職員は、涙をぬぐいながら。

「冒険者を失うのは……慣れてるつもりでも……でも貴方たちは……特別ですから……ほんとに……」


ラヴズも大きく鼻を鳴らす。

「ヒヒィン!!」(よかったぁぁ!!)

その鼻面がノーザの胸にぐいっと押し付けられた。


ノーザは皆を見渡し、苦笑しながら言った。

「……ただいま。心配かけたな」


ニーナも深く頭を下げる。

「本当に……ご迷惑とご心配を……すみません……」


ギルド職員たちは、緊張から解放されて崩れ落ちるように座り込み、

仲間たちはもうノーザの腕に掴みつくようにして安堵を表していた。


遺跡の静けさの中に、

“良かった”という声だけが、いつまでも反響していた。


仲間とギルド職員の安堵ムードが一息ついた頃。


リーが静かに問いかけた。

「それにしても……二人は、一体どこへ飛ばされていたのです?」


サンも黒い刀身に目を丸くする。

「ほんで兄弟……それなんや?めちゃくちゃ禍々しくて……めちゃくちゃ綺麗なその刀……」


ノーザは少し困ったように笑いながら、黒鞘を軽く持ち上げた。

「えっと……この刀は“黒刀六道りくどう”。日ノ本の……とある寺から預かったんだ。俺たち、転送されて……日ノ本の會桜って所にいたんだよ」


ニーナは丁寧に付け加える。

「その寺で偶然保護していただきまして……。その寺の方々が、この刀を“旅の行く末に必要になる”と……」


「日ノ本!?鎖国しとるあの!?何やねん……想像よりもはるかにややこしい所飛ばされてたんやな……」


「黒刀六道……聞いたことのない名だが……只者ではない気配が……」


そして──。


ヴィヴィが食いついた。

「まぁいいじゃん!詳しい話は後だよ後!ノーザ!!その刀、実際に装備してみようよ!!ほらほら!抜いて!腰に差してみて!!」


「えっ、いや……ここで実戦でも何でもないし……」


「いいから!!こういうのはノリと勢いなんだよ!!」


「兄弟、初装備は儀式みたいなもんや。見せてくれや!」


(ノーザ様の刀装備姿……きゃ……♡ 絶対似合います……♡)


周囲の視線が一斉に集まる。


ノーザは軽く息を吸い込んだ。

「……わかったよ。じゃあ試しに装備だけしてみる」


その手が黒刀六道の鞘に触れ──

腰へと静かに帯する。


その瞬間……


空気が、

わずかに震えた。


「……!」


ギルド職員たちも思わず息を呑む。


黒い刀身はまだ抜かれていない。

だが、ただ腰に差しただけで──

周囲に“何か”が広がった。


まるで禍々しさと神聖さが同居したような空気。


「……兄弟……なんか……空気変わったで……?」


「やはり…ただの刀では……非ず」


(はぁ……♡ カッコよ……♡ヤバ♡好き……♡)


「なっ……なんか……鳥肌立ったんだけど……」


ノーザは全く気づかないまま言った。

「ただの刀だと思うけどな……軽くて使いやすそうだよ」


──それは、

ただの刀ではない。


その証明は、次の瞬間に訪れる。


ノーザは、周囲が息を呑む中──刀の柄に手を掛けた。


「ちょっとだけ抜いてみるか……」


黒い刀身が、鞘から数センチ抜けた瞬間。

空気がビリッ──と震えた。


そして。



「ああああああぁぁぁぁぁ!!

 あががががががががが!!!」


遺跡入口周辺に響いたのはノーザの絶叫だった


「ノ、ノーザ様ぁぁ!?!?」


「なんだよそれ!?呪いの刀とかじゃないよね!!?」


「いや待てや!!

 兄弟これ……苦しんでるんか?

 なんか……めちゃめちゃ昂ぶってるような!?」



「うぉぉぉ……ッッ!!なんだこれぇ!!」


ノーザの全身から、今までにない魔力と武の気配が噴き上がる。


リーが気配を感じ取り、目を見開いた。

「……これは……!

 ノーザ殿が“刀スキル”を獲得して以降、

 刀を一度も使っていなかったため、スキルに割り当てられるはずの経験値が蓄積し続けていた……!」


ニーナも理解したようだ

「まさか……その“行き場失い溜まりに溜まった経験値”が……一気に!!今、刀を抜いたことで……

経験値が一括開放されているのです!!

これは、急激なレベルアップ……!」



「ぐあああ……ッ!?

 ……いや……でも…ちょっと……気持ちいい……かもしれない……ッ!」


サンも分かったようだ

「なるほど!!これはあれや!!

パチンコと同じやな!何も出ぇへん時に

“突然確定演出出た時の脳汁ドバァァァァ!!”

ってなるアレや!!」


ヴィヴィが

「サン!ちょっと黙れ!」


「あああああ……ッ!!

 なんか……来る……来るぞこれぇぇぇ!!」


刀から黒い衝撃波が漏れ、地面にひびが入る。



「ノーザ様ぁぁぁ!!」


そして──


光が、爆ぜた。


刀術スキルが一気に成長していく。

画面風の表示が次々と脳内に流れ込む。


刀術 Lv1 → Lv4

二刀流 Lv2 → Lv3

新技 “六道斬り” を習得しました。



「はぁ……はぁ……ッ!!

 な、なんだ今の……!?

 体が……軽い……

 いや……強くなった……!」


息を乱すするようなノーザ

サンがその肩を支える


「兄弟!!完全に覚醒しよったで!!

 黒刀六道、えげつない武器やな!!」


(ふへぇ……♡ 新しい刀を手にしたノーザ様……あぁぁ……強くて……格好良くて……♡好き♡)


「……いや、俺もビックリしてる……」

バタっ……

その後、ノーザは快楽か、疲労困憊か…

ノーザは気絶した

意識を取り戻したのは──

もう翌日の朝だった。


薄く差し込む朝日。

宿の天井。

ぼんやりとした頭。



「……ん……朝か……?」


ゆっくりと息をつこうとした、その瞬間。


──背中から、腰から、胸元から。

妙な“気配”がする。


(……誰かが……触ってる……?)


手探りで布団の中を確認すると──

少し強めの握力に……残ったヴィヴィの体温としっとりした布の感覚

「あ…ノーザ…おはよう…」シュ…シュ…


「……ヴィヴィ……?それ……

 ちょっと触るの……やめて……」


ヴィヴィは眉尻を少し下げ、

いつもの強気とは違う声で小さく答えた。


「……あーし、心配だったんだよ……」シコシコ


「え?」


ヴィヴィの手が、ぎゅっと力を込める。


「事故とは言え、急にどっかに飛ばされちゃうし……帰ってきたと思ったら、刀抜いた瞬間にのたうち回って……そのままぶっ倒れるし……」ニギニギ…


顔はそむけているのに、声だけは震えていた。


ノーザは一瞬だけ目を丸くした。

普段は火のように元気な彼女の、こんな弱いところを見たのは初めてだ。


「……ヴィヴィ……」


ノーザはまだ完全には起き上がれず、

身体を軽く起こそうとして、またベッドに沈んだ。


「……昨日よりは楽だけど……まだ体がだるいな……」


ヴィヴィは、さっきまでの照れが嘘のように真剣な表情に戻った。


「無理すんなよ。……ほんとに……いなくなられるの……嫌なんだから……」スリスリ



「…………ありがとな、ヴィヴィ…」ドックン


「……っ……! う、うんっ……!あ…これ履いてくから……よいしょっと…」ヌチャ…


静かで、少し甘くて、だけどまだ関係は壊れない。

そんな微妙な距離感の二人の朝は、ゆっくりと始まった。


一秒後には。


ヴィヴィは布団ぐるぐる巻きの繭状態になっていた。


「ノ〜ザ〜〜〜!!なんでぇぇえぇ!!」


ノーザは眉をひそめ、しかし優しく答えた。


「……気持ちだけは受け取るよ、ヴィヴィ。

 でもな……

 あんまりベタベタするのは禁止。

 俺には“志”があるんだ。

 魔王を倒すって決めた以上、色恋に流されるわけにはいかない」


布団の中でバタバタ足を動かすヴィヴィ。


「はぁ!?そんなの関係ないだろ!!

 あーしの気持ちは真剣なんだよ!!ほどけぇぇ!!」


しかしノーザは首を横に振るだけだった。


「だめ。……俺は、志を果たすまで“酒も女も博打もやらない”って決めてるんだ。」


いつもの台詞である


「うっ……!またそれぇぇ!!

 ノーザの堅物ぅ〜〜!!」


「落ち着いたら朝飯に行くぞ。

 ……反省、ちゃんとしとけよ」


そんなやり取りを、

ちょうど廊下を通りかかったニーナが扉の隙間から見ていた。



(むふ……♡ノーザ様、今日も尊いです……♡

そしてヴィヴィさん……自爆なさって……ぷふっ♡)


「おーい!早ういくで!」

「本日は全員招集である」


澄んだ朝の空気の中、

谷沿いの大地にはギルド職員、冒険者、運搬係、木こり、鍛冶屋まで──

この地方で動ける人間が総出で集まっていた。


職人たち、魔法で浮かぶ資材、

他パーティの冒険者達の掛け声。

全体がひとつの巨大な生き物のようにうねっていた。


そして、前に進み出たのは

今回の責任者──国の“防衛大臣”。


白髪交じりの髪をきっちり整え、

戦場の地図を背負う男の声は、地鳴りのように響いた。


「ギルドの諸君!

 そして、この国を支える冒険者の皆よ!!」


その声に、皆が作業の手を止める。


「この中継拠点は……

 東の防衛線に立つ兵たちの“命の道”となる!!

 補給が途絶えれば、前線は崩壊する。

 崩壊すれば、魔族は北の村々まで一気に迫る!」


群衆の肩が引き締まる。

「民の生活を守るのは、

 何も剣を持つ兵だけではない!

 今日ここに立つ──

 諸君らの腕と汗!そして誇りだ!!」


熱が走る。

「この拠点は必ずや“希望の灯”となる!

 この国を暗闇から救い出す、最初の一歩だッ!」


一拍置いて、

拳を突き上げ、叫ぶ。


「皆の者……我に力を貸してくれ!!

 ここを、守りの砦にするのだ!!」


瞬間──。

「うぉぉぉぉぉおおおお!!!」


魔法使いが杖を振り上げ、

職人たちが木槌を掲げ、

冒険者たちは武器を突き上げた。



「よっしゃああ!!やったるでぇぇ!!」


「尽力しよう。これもまた、衆生救済……!」


「ノーザ!今日も暴れるよ!!」


(ノーザ様の……決意のお顔……好き……♡)


そしてノーザ。


「……よし!行くぞ!

俺たちの手で、この国を守る拠点を作り上げよう」


全員が雄叫びを挙げる

「おおおおお!!!」


建設予定地の広場には、

工業ギルド土木部の職人たちが腰に工具を

ぶら下げ、建築部の作業員たちが図面を広げ、

冒険者は武器を背負ったまま並んでいた。


ざわざわ……と全体が動く中、

ひときわ声の通る男が前に出た。


現場監督、土木ギルド主任の“ロウガン親方”。


がっしりした腕、

魔物より怖そうな顔(しかし実は優しい)。


「おーい!!全員、聞けぇ!!

 これより、補給路強化計画・中継拠点建設、

 本日の作業内容の確認を行うッ!!」


全員の視線が集中する。


「まず土木部は基礎工事!

 川沿いの地盤を固めて、杭を打つ!

 魔法でやる場所と手作業の場所、間違えるな!」


「了解ッ!!」



「建築部は本部棟の資材の仕分けと仮組みだ!

 柱、梁、壁材、魔力導管……ぜーんぶ別だぞ!

 くれぐれも“混ぜるな危険”だ!」


「了解!」


次に、冒険者側へ視線が移る。


「そして冒険者諸君!!」


ノーザ達も背筋を伸ばす。

「君らの仕事は──

 作業員の護衛、危険区域の巡回、魔物の除去、資材運搬の補助!細かい内容はパーティごとに割り振る!」


紙束が配られる。


「なお、冒険者各位は戦力としては頼りにしているが……指示なしに勝手な行動は禁止!

特に“爆破しようとする奴”!!」


「それから!

魔法使いの皆!!

広範囲魔法は絶対に使うな!

地形ごと吹き飛んだら基礎工事からやり直しだ!!」


最後に、白髪の親方は深く息を吸い込んだ。


「よし……以上が本日の作業予定だ!!

 この拠点は、前線の兵士を守る“命の砦”になる!!」


皆の表情が引き締まる。


「だがな──

 どんな立派な砦でも、死人が出たら意味がない!!」


一拍置いて。

「安全第一!! 安全作業で頑張ろう!!」


「頑張ろう!!!!!」


木槌の音、資材の転がる音、魔法の光──

大工事が、ついに本格スタートした。


河谷の風は涼しく、工事の騒音が絶えず響く。

杭の打ち込み、資材の運搬、魔法の光。

その外側で、ノーザ達警備組は安全確保のため巡回していた。


「盗賊さん、俺はあっちの林の方を調べてきます」


盗賊Aが短剣を片手に叫んでいた

「おう!そっちは死角になりやすいから気ぃ付けろよ!」


盗賊Bが地形図を見ながら座標を確認

「魔物の足跡や、陥没しそうな地面があったら呼んでくれ。危険区域は後で封鎖するからな!」


ギルド職員が全員に周知をする

「確認したらチョークで印を付けてください!

 専門班がすぐ調査に入りますので!」


「了解!気を付けて行ってきます!」


河原を歩くノーザ。

軽快に動けるよう腰の木刀を携えている。


足元には動物の足跡、川のせせらぎ、少し崩れた岩肌。

普段なら気にも留めない風景だが、

今はひとつひとつが「リスク」かもしれない。


「……この辺り、魔物の気配は薄いけど……

 最近崩れた跡があるな……」


地面をしゃがんで指で触る。

湿り具合、石の割れ方、草の折れ方──

冒険者としての経験が生きる。


「昨日か……一昨日か……この谷、思っていた以上に地盤が弱いな……」


ノーザはチョークを取り出し、

“危険区域・立入注意” と地面に文字を書く。


盗賊Aの声が遠くから響く。

「おーい、ノーザ!異常あったかー?」


「ここ、足場が崩れやすいです!あとで補強お願いします!」


ギルド職員が反応

「確認します!ありがとうございます!」


現場の誰もが忙しい。

しかし、ノーザの目と足で守られた安全な一歩が、拠点建設の基礎を支えている。




建設現場の片隅。

テーブルの上には地図、帳簿、契約書。

土木班と交易班の職員たちが集まり、

ニーナはその中心で静かに資料を並べていた。


「ここからバルンハイトまでは……このくらいの距離ですね。標高差も考えると、馬車で三日半……」


商人Aがメモを取りながら取りながら原価を計算していた

「では輸送コストは……大体このくらいになりますね!」


商人Bもコスト見直しを提案する

「じゃあ、近隣の牧場や農家さんに当たりましょう。この条件で契約してくれそうな所、いくつか心当たりがあります!営業、行ってきます!」


商人Cが予算額の提示

「国から出ている武器の調達予算は……

 1億ダストです。

 これなら警備兵の武器も心配ありませんね」


「ええ。問題ありません。

 ただし、魔物の出没がこのルートにも多少ありますので……そこは後で冒険者班と協議します」


──真剣な時のニーナは、仲間たちすら少し近づきがたい。

魔法だけではない。

数字も地形も、物流の流れすら読み切る知性。

ノーザが前へ進むために必要な“準備”を、

いつも彼女が支えていた。




採石場には今、腕に覚えのある力自慢だけが集められていた。

岩山を前にして、全員の目がギラつく。


ロウガンが豪傑達に合図を出す

「基礎造りには大量の砕石が必要になる!

 さあ、遠慮はいらんッ!思いっきりやれ!!」


──その言葉を合図に、力自慢たちの“拳”が一斉に火を噴いた。


ヴィヴィが踏み込み、地面が“ドン”と鳴る。


「オラァァァ!!」


拳を握った瞬間、肘から肩、背中の筋肉が一斉に波のように収縮し──

“爆発音”のような衝撃が走る。


岩壁が“めりっ”と穴を開け、蜘蛛の巣状にヒビが走り……

バラバラと砕け落ちる。


粉塵が舞い、熱気が吹き上がった。



武闘家の正拳突き

「ハァァァァッッ!!」


正拳突きが岩肌に突き刺さる。

金属のような硬質音。

しかし拳はまるで鋼鉄の杭のように深々と沈み込んでいく。


続けて二撃目、三撃目。

“連打”が岩の内部を砕き、

内部から“ボンッ”と破裂して崩れ去った。



拳法家の掌底

「呀ッ!!」


掌底が空気を裂き、“風圧の刃”すら生む。

叩き込まれた掌底の衝撃波が岩を揺らし、

バキバキと音を立てて角ごと砕け散る。


破片が飛び、後ろの木にめり込むほどの威力。



バーバリアンの肘打ち

「ウラァ!!」


肘が岩にめり込み、その瞬間、

岩の色が変わったかと思うほど深く亀裂が走り──

まるで岩自体が“沈んだ”かのように崩壊。


破片が滝のように地面に降り注ぐ。



バーサーカーの膝蹴り

「グハハハ!!行くぞぉッ!!」


助走も取らずにジャンプ、岩に向けて落下しながら膝蹴り。

異様な破砕音が響いた。


膝が食い込んだ箇所が“陥没”し、

裂けた岩の継ぎ目から大岩が丸ごとスローモーションのように崩れ落ちる。



崩れ落ちる岩山

巨大な岩山が、

まるで“手で粉々にした砂糖菓子”のように崩れ落ちていく。


粉塵が太陽光を遮り、

風が吹き抜けるたびに白い霧のように流れていく。


そして──


ヴィヴィが胸を張りながら

「どうだい!?あーしが一番割っただろ!!」


拳法家も涼しい顔で

「うむ、心地よい破壊だったな。」


「歯応え無ぇ石だぜ!!もっと硬ぇの持ってこい!」

「ウラァ!……次の岩はどこだ!?」

暴れ足りないと言わんばかりの

バーバリアンとバーサーカー



一方その頃

魔物の谷の奥。

霧が薄く漂う岩壁のふもとに、

一帯だけ緑が濃く広がる“薬草群生地”があった。


日差しが差し込み

草木が青々と茂っている


リーはその中心で、

一つひとつ丁寧に草を手に取り、指先で匂いと葉の形を確かめていた。


「殺菌効果……よし、こちらは高い抗菌作用があります、──む、こちらは解熱。葉の裏の白い産毛が特徴……ふむ、種類は申し分ない」


共に来ていた薬師が称賛する

「さすが僧兵殿……鑑定が的確だ。では調合は私に、

この量なら基地内の医療室でかなりの薬を自給できますね」


「戦において兵の健康は何より重要。

しかし輸送路が整うまで医薬品を外から頼る事になる、調剤は現地でも可能なのですか?薬師殿」


薬師は胸を張って応える

「基地完成前でも調剤できるよう全力を尽くします!科学者殿も技術協力してくださるようですからね」



薬草採集から戻ってきた二人は他の冒険者も交えて

医療体制の会議のような空気になっていた


テンプル騎士が人員配置の書類を見つめ

「竣工後は医療スタッフも常駐する予定だ。

 救護兵、外科医、聖職者も派遣される」


科学者が必要な機器を見た定めている

「テンプル騎士さんのグループ組織からも派遣して貰えるんですよね?ではこちらでポーションの醸造設備も作りましょう。解毒・鎮痛・応急治癒……常備数は最低100本が目安です」



「薬草の保管庫も必要です。乾燥設備もあれば長期間の備蓄が可能に」


「保存法は拙僧が指南いたそう。

 湿度管理、虫除け、光の遮断……“適切な環境”こそ薬の質です」


それを見ていたギルド職員…

「……本当にありがたい……

 この方々がいる限り、この基地は必ず役に立つ」


新拠点予定地。

谷底には清らかな渓流が走り、広い平地には草が揺れていた。

サンは腕まくりしながら地図を開き、

農民と立地を見ていた


「まず水やな──渓流の水量は十分や。

 この流れならせきを組んで水路引いたら飲み水も生活用水もいけるわ!」


「水が確保できるなら、畑はこの南側やな。

 土は悪くねぇべ、開墾すれば十分耕作できるだ」



「よっしゃ、野菜は基地の自給率上げるんに欠かせへん。 土壌は後でワイが見といたるわ」


さらにそこに魔法使い、鍛冶屋も加わり設備の計画を見ていく

「非常時の火の確保はどうします?炊事房や鍛冶場は炎魔法持ちいますかね?」


「武器の修理は勿論だか、矢とかの消耗品は基地内で製造できるようにしとくべきだろうよい」


ギルドスタッフが確認する

「新採用の方に魔法使いさんがいますね、あ、あと農具鍛冶さんもいますね!」


厩舎・馬関係の打ち合わせ

獣使いとサンが費用と必要な設備の確認


「飼葉代、馬具代、厩務員の人件費……必要なのは…」


「中継拠点やから帰る時は身軽で帰った方が良いからなぁ、交代用員の馬も買えるかいな?」


その言葉に、周囲の職員や冒険者たちが

「ほぉ……」と感心して頷いた。


最初はただの河原だった土地に、人々の動きが日々のリズムを刻み始める。


最初の一週間。

測量班が杭を打ち、縄を張り巡らせ、地図に記しを加えていく。

冒険者たちは周辺の魔物を掃討し、土地を確保する。

土木部の職人たちは巨大な岩を砕き、道を切り開き、地面を均していく。


二週間目。

材木が運ばれ、丸太が削られ、梁が組まれる音が響く。

建築部の職人が掛矢を振り下ろし、

骨組みが次々に組み上がる。

サンが中心となった水路工事が進み、

谷の清流は新しい井戸と貯水槽へ静かに流れ込むようになった。

薬草班が作った仮設の医療所には、ポーション醸造釜が据え付けられ、

リーは薬師たちと協力しながら備蓄を整えていく。


三週間目。

ヴィヴィら戦士組は大量の石材を運び込み、基礎が固まっていく。

ノーザは周囲の警備路を整え、馬道を作るため斜面の草を刈り込む。

ニーナは帳場で契約書や物資計算を片付け、

商人やギルド、地元の人々を繋ぐ調整に奔走した。


四週間目。

木材の香りが漂い、建物の壁が貼られ、屋根瓦が一斉に上げられる。

鍛冶場の炉が火を灯し、兵舎に寝台が並べられ、

厩舎では馬が落ち着いたように嘶く。

照りつける日差しの下、汗と土にまみれた顔がどれも誇らしげだった。


そして、一か月後。

谷底には堂々たる一つの砦が立ち上がっていた。


大量の荷馬車が交錯するホーム

水路は巡り、井戸は潤い、畑は整えられ、

倉庫と兵舎、医療所、鍛冶場、厩舎──

どれも無駄なく、堅牢で、美しい。

夜になると松明が灯り、谷全体が柔らかく黄金色に光った。


それは、ノーザ達、ギルド連合、そして無数の無名の手が

汗と誇りで築き上げた“最高の拠点”だった。


夕陽が谷を黄金に染める中、

拠点中央の広場に人々が集まった。

ギルド連合、冒険者、土木工、建築職人、商人、医療班、そして警備の戦士たち……

この一か月を共にした仲間たちがずらりと並ぶ。


壇上に立った大臣が深く息を吸い、声を張り上げた。


「──本日、この地に“東方補給中継拠点”が正式に完成した!」

「前線の兵士たちを支え、国民に安寧をもたらす希望の砦だ!」

「この偉業は、ここにいる全員の汗と努力の結晶である!胸を張れ、人類の戦士たちよ!」


その言葉が谷に響き渡った瞬間、

大歓声が巻き起こる。


ノーザは満面の笑みで大地を踏みしめた。

「良かった……本当に良かった!」


横で短剣を肩に担いだ盗賊が拳を突き上げる。

「うおおっしゃあ!やったぜ!!」


商人たちは帳簿を抱えたまま涙目で笑っていた。

「これで……これで人類の物流が守られますね……!」


巨体のバーバリアンは酒樽を頭上に掲げる。

「祝杯やあああ!!飲めェ!!」


リーは胸に手を当て、静かにしみじみと呟く。

「……楽しい労働だった……皆、良い顔をされている……」


白衣姿の科学者が感極まって両手を合わせた。

「本当に……皆で作った拠点ですね……!」


石工の老人職人は鼻をすすり、

武闘家は隣の仲間と肩を組み、

魔法使い達は魔法で小さな花火を打ち上げる。


和やかで、誇らしくて、どこか温かい──

達成した者だけが味わえる“仕事の終わり”の幸福が、谷全体を満たしていった。


夜の谷に灯る無数の焚き火。

出来上がったばかりの拠点の広場には、長テーブルが何十も並べられ、

サンと農民、料理人たちが総出で運んだ巨大な釜や鍋が湯気を立てていた。


「ほら皆!並ぶんや!今日は食い放題やでぇ!!」


サンが振るう大きな木杓子から、香草たっぷりの肉煮込みが溢れ出す。

焼きたてのパン、採れたて野菜のサラダ、川魚の炙り、巨大な肉塊の丸焼き──

今までの苦労を吹き飛ばすかのように豪勢な料理が次々と並んでいく。


農民たちが笑顔で皿を差し出す。

「今日は全部持ってきたぜ!皆で食ってくれ!」

「これが出来る日をずっと待ってたんだ!」


職人たちが酒樽を抱えて駆け寄る。

「飲め飲め!今日ぐらい羽目外していいんだよ!」

「完成祝いだ!飲み干せ!」


焚き火のそばで、ノーザはようやく深く息をついた。

胸の内にあった張りつめた緊張のようなものが、ゆっくりと溶けていく。


「……やっと、終わったんだな」


隣でニーナが湯気立つスープを手渡す。

柔らかく微笑んでいた。

「はい。ノーザ様……お疲れ様でした。皆が笑っています」


その笑顔につられて、ノーザも自然と目元が緩む。

焚き火の光に照らされて、ニーナの茶髪のウェーブがゆらりと揺れていた。


少し離れた場所では、ヴィヴィが巨大な肉骨を引っつかみながら叫ぶ。

「最高だねこれ!!ノーザ!早く来なよ!めっちゃ美味いよ!」


リーは酒を断りながらも、皆の円に混じって微笑んでいた。

「久方ぶりの……心からの祝杯……」


職人達、冒険者達、農民達、ギルド職員──

立場も種族も関係なく、全員が肩を組み、語り合い、笑っていた。


ここが“希望の拠点”となる。

そんな確信が、焚き火の音とともに夜空へと昇っていく。


ノーザは空を見上げ、そっと呟いた。


「……よし。ここからだ。もっと強くなって、魔王まで辿り着く」


その決意に応えるように──

仲間たちの笑い声が、温かく谷に響き続けていた。

この時代の世界観は他冒険者も所属は違えど世界平和を目指すのは同じってスタンスでやってます。

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