夏井さんとしれー⑥
額の欠けたガンマルムが、緑の粒子となって消える。
ドッグの床に降りるやいなや、紅は頭を下げた。
「ごめんなさいっ、みなさん!」
「まぁ、うん……」
「機体にちょっとヒビ入っただけだしな……」
「俺達無事だから、な……」
言いながら、全員視線を逸らす。
完全な失敗だ。敵の前で盛大にコケた挙げ句、勝ったとはいえ仲間に武器を当ててしまった。完全なオウンゴールである。
「しれーも……大事なガンマルムを壊してしまって……!!!」
「いいんだ。戦闘になれば、壊れるのは当然だろう」
司令は真面目な顔をしている。
怒られる。いや、怖いのはそれじゃない。
「しれー、次もあたしにやらせて下さい! この失敗を取り返したいんです!」
「……夏井君が言うのならば、そうさせてやりたいが」
司令は紅の脚へと視線を落とす。
「膝、擦りむいているだろう」
「こ、これくらい大丈夫ですっ!」
慌てて生地を引っぱって隠す。しかしぴっちりした生地では隠しようもない。こけた衝撃でコックピットにぶつけた膝は、痣になった上に少し血が滲んでいた。
なんてドジなんだろう。さっきは終わった高揚感があったが、いざ落ち着くと自己嫌悪が溢れてくる。今になって傷の痛みが自己嫌悪を助長する。
痛い。
でもこれくらいなんでもない。
恩人の為なら。そして。
「次は、ちゃんとやりますから……だから……!」
捨てないで、そんな感情でいっぱいになる。
涙が溢れ、頬を伝う。
「いいや、君の為だ」
「でも……」
しゃくり上げる紅の肩を、司令は優しく叩いた。あの冬の日と同じ温かさ。
「アマテルがなぜアマテルと呼ばれる理由を知っているか?」
「い、いえ」
それは聞かされていなかった。
というかみんな知らなかった。
「太陽のごとく遍く世界を照らし、ファーレンから人々の笑顔を守るためだ。だから太陽の神の名を取り、アマテルと名付けられた。……最も、名付けたのは私だがな」
「え、司令だったんすか?」
町田が呟く。
「だから、君が傷付くのは本望ではない。君の笑顔がなくなれば、神話のアマテラスのごとく影に覆われてしまう」
「しれー……」
「今まで通り、後方支援に回ってくれ。笑顔を、これ以上無くすわけにはいかないんだ」
「……はいっ!」
紅は涙を拭いた。
泣いてるんじゃだめだ。恩人が望んでいるのは、戦果を挙げることじゃない。私の、
「これからもよろしくお願いします、しれー!」
とびっきりの笑顔だ。




