エピローグ:秋の始まる空
コアが溶け、母が倒れ込む。陽給とレッドグロウはそっと受け止める。
要塞は崩れ始めていた。コアが消えた影響だ。もう悪夢の要塞を維持するものは何もない。
火動は一瞬悩んだ。生身の母をどうするか。グローブのようなもので母を包んで滑走するか。先ほどのように一瞬で追加空想できればいいが、この瓦礫の量ではそれも危うい。
レッドグロウの片腕が動いた。お腹部分を軽くく。
すると。
「うわぁ!?」
棺が開いた。強風が吹き込んでくる。開くのかそれ!? レッドグロウに乗ってそれなりの期間が経つが、そんな機能知らなかった。というかメイカーも風で吹き飛ばされそうなのだが!
「火動、棺の中もう一人分くらい入れるよね? そうだと言って!」
「入る!」
正直きついが、迷っている暇などない。
「火動ママ、ちょっと狭いけど我慢してね!」
「え、あ、うん?!」
母親も棺にイン。強制的に距離が縮まる。超強制的に。もう気まずいとか言ってられない。レッドグロウは陽給の操縦を受け、瓦礫を避けて進んでいく。
沈黙の中、先に口を開いたのは母だった。
「昨日、聞いたわね。あなたのこと、どう思ってるか」
頷く。
「……先も言った通りよ。あなたには生きていて欲しい。ファーレンから逃がした時、そう思ったの」
「……」
火動は何も言わない。ただ母の次の言葉を待つ。
「でも、申し訳なく思う。あなたに破壊者の細胞を入れてしまったことを」
「……だから、あんなに気まずそうにしてたのか」
「……えぇ。悪いのはファーレンだと分かっていても……」
「……あいつ、割と良い奴だった」
「え?」
「最後の最期で、相方を庇った」
サヴバーシヴの最期を思い出す。そのまま瓦礫の中に消え去ることもできたのに、相方をこちらへ託した。それに、幻聴のように聞こえてきた声。ぶっきらぼうだがどこか優しかった。
「俺も、クローンって知った時、最初は怖かった。でも、陽給や皆に受け入れてもらえた。だから、今はどうでもいい」
「火動……」
「それに、母さんと会えて……嬉しかった」
もごるがもうこれでいい。
堪らなく恥ずかしくなる。ひょっとして、複雑な生まれだから気まずかったのではなく、単なる反抗期だったのか……!?
「私も、火動に会えて嬉しいわ」
母は笑った。初めて見る、すがすがしい笑顔だった。心の奥にあった不安が消えていく。
「そうね。元が何だろうと、あなたはあなた……ずっと忘れてた」
そして。
「帰ったら、今までのことを聞かせてもらえるかしら?」
◆
唯架は心から安心した。やっと言えた。棺の狭さから、息子の成長を感じる。外の景色がうっすらと見える。砕けた要塞はもう見えず、秋が始まる空が見えていた。




