未来へと続く夢:最終決戦! A・Aの力!④
スペキュラティの数は10や20ではない。まるで腕の中の海にいるかのようだ。圧倒的な数という根源的な恐怖が襲いかかるが、陽給といれば恐れるものではない。盾を、ビームを、爆弾を空想して切り抜けていく。
だが、捌ききるのも限度があった。陽給の運動神経でも、火動の空想力でも避けきれなかった腕が、レッドグロウの首を掴み、床へと頭部を叩きつけた。
「ぐはっ!?」
「ぐっ……!」
頭部に強い衝撃。棺内部に頭を打ち付ける。本当に頭の割れる痛覚と共に、額から液体の伝う感覚。くらりとする体を奮い立たせ立ち上がろうとするが、棺は動かない。
レッドグロウは伏したまま動かなくなっていた。背筋に嫌な汗が伝う。それはつまり、
「陽給! 大丈夫か!」
大切な相棒に、何かがあったということ。
……返答はない。
陽給が傷付いた。怒りよりも焦りが上回っていく。モニター越しのレッドグロウに、内部から生えたトゲが生えていく。今や見る影もない。……自分の怒りの空想が、ここまで機体を傷付けたのか。コアだけのせいではない、己が……!
量産機はトゲを警戒してか、近づいてこない。だが、このままでは勝機もない。嘲笑うように、ディールが叫ぶ。
「ようやく黙ったか。火動、先の事実を補強しよう」
「黙れ……!」
「あの女、火ノ原唯架は初めて君を見た時、真っ先に潰そうとした! 生体電池の間の記憶はない、当時と全く変わらない! 君と奴の関係は、所詮憎悪と嫌悪で満ちているのさ!」
一瞬、脳裏に昨日の光景が甦った。こちらを見て、視線を逸らす顔。あの敵意の瞳と同じならば、信じる通りもないのか。
「……、好き勝手言いやがって……!」
そんなはずがない。
倒れていたレッドグロウの腕が動く。ひどく損傷していたが、敵のいる場所くらい気合で分かる。火動が創り上げたレールに乗ったロケットパンチが、ディールのいる機体を撃ち抜く。
「何故!? 何故動く!?」
「お前をブチのめしたいからだ!」
「陽給!」
復活した陽給の声が響く。
「お前の言う過去なんて2度も信じるか! 俺は俺の見た母さんを信じるんだ!」
母の表情は硬かったが、倒れる直前に見せた笑顔。そして公園でディールを蹴っ飛ばした帰りの、安心した顔。そんな顔で、何の恨みを抱けるというのか。
レッドグロウが青く光り輝く。
やがて現れたのは、損傷から全快した上、両肩からブースターを取り付けた姿。炎はまるで、不死鳥の翼のように広がった。
「すっげー! 羽根みたい!」
「陽給! 頼む!」
「いくら追加空想しようと、ただの機体で生体コアを砕けるはずがない! 不可能だ!」
再び量産機が襲い掛かる。それより速く、レッドグロウはコアへと駆け抜ける。羽根が風を受け、光の如く突き抜けていく。
「みんなで創ったレッドグロウの力、なめないでよね! ばちっとお仕置きしてやるから!」
突き抜けたままの力で、ディールの機体を叩き潰した。断末魔もなく棺を残してスペキュラティは粉々に砕け散った。
「アマテルのアナザーパワーと私たちのアナザーパワー! しっかり見なさいよ、コアオバケ! 悪は夏の記憶で、空想で、打ち砕く!」
ありったけの力を込めた拳で、生体コアを撃ち抜く。鋼鉄の拳が届く瞬間と、唯架が願い、コアが崩壊する瞬間が重なった。
放たれていたエネルギーは今もレッドグロウを崩壊させようとしていたが、それすらも2人の「空想を実現させる力」に敵うはずがない。
陽給が叫ぶ。きっと思いつくまま、空想の限りを込めて。
「夏を爆ぜさせて、レッドグロウ!」
いつも通り理解を超えた言葉だったが、思いは同じだった。こんな暗緑に、この夏の赤い記憶は決して負けない……!
使い慣れた武装を、巨神の手の平に出現させる。陽給とレッドグロウの腕が孤を描き、エネルギーを散らすように爆弾を炸裂させる。文字通り、夏の経験も記憶も爆ぜさせるように。
暗緑の濁流が、赤橙の光に飲まれていく。
全てが目映いほどの閃光に包まれ、何かが崩壊する音が響いた。
次回はエピローグです!




