未来へと続く夢:「栄光」の未来②
「ヘカトンケイルは本来、地下遺跡を守る武装なんですね。バロット家に受け継がれた兵器のようなものです。こんなうねうねの機械は技術的にオーパーツだって? まぁ、そうなんですが。この世にはまだまだ知らない事がたくさんあるんですよ。棺だって数百年前の遺跡から発見されたでしょう?」
話しながら、マリーゼはヘカトンケイルを操作する。大量のチューブが壁のように折り重なっていく。びっしりと折り重なったチューブはややグロい気もした。整備斑がそれをモニターする。
「さ、できましたよ。この壁ヘカトンケイルも一時的なもの。火動さんの空想が解けると溶けてしまいますから、早めに奪還してきて下さいね」
見れば見るほどオーパーツだ。そんな溶ける機械なんてあってたまるか、とも思う。
けれど。
「ありがとう、マリーゼ」
思えば、面と向かって話すのはこれが初めてだ。ずっと番匠や整備斑と一緒に話していた。改めて礼を言うのは少し照れたが、彼女の献身がなければ手段は手に入らなかった。
「あれ、大事なものなんだろ」
「司令にも言いましたが、どうってことないですよ。これも世界のためでしょう?」
そう言って、彼女は笑った。穏やかな、当然のこととして受け入れている笑顔。
「さ、お母様に威勢の良い姿を見せてきて下さい。親であれば、子の成長はどうであっても嬉しいものですから」
「……あぁ」
マリーゼを始めとしたアマテルも、火動と母を応援してくれている。
その事実は、とてつもなく嬉しかった。
「……レッドグロウの勇姿、見ていてくれ」
「えぇ。ばっちり高画質で納めますからね!」
◆
そして、整備班と賢、マリーゼ、アノニで作り上げた棺。今までのつるりとした表面ではなく、蔦で編み上げたような複雑な表面をしていた。
パイロットスーツに袖を通す。「思い出の詰まった品だから捨てないで! ステーキハウスに飾ってもいいから!」とマリーゼに言っていてよかった。もう一度使う時があるとは思っていなかった。
(本当は、使わないほうがいいんだけど)
けれど。こんな時でも、このぴっちりした感覚がテンションを上げてくれる。バレーの試合の前みたいに、必ず自分はできるというエネルギーを与えてくれる。
「先ほども言ったとおり、この棺の耐久度は1回分しかありません。これが最後と思って下さい」
「やれるやれる! 前みたいに中央まで行って、火動ママを取り返してくるだけだもんね!」
「あぁ」
ようやく火動とママさんの和解が見えてきた瞬間なのだ。必ず取り戻さないと!
「アイリスで調整したが、性能は元の棺と変わらねぇ。いけるぜ!」
「賢君のカンすごかったな……マジで必要な部品発掘するんだからよ」
「えへへ……火動、陽給、僕はここから応援してるよ!」
賢は、なんかすげー力を持つ少年、だけじゃない。陽給の大切な友達だ。応援するってだけで、陽給の精神パワーは満タンになる!
「俺たちもよ! 応援だけってのが辛いトコだけどな」
「だいじょーぶ! 帰って来たらステーキちょうだい! デザートにアイスもつけてね!」
「おうよ!」
整備斑達は敬礼する。陽給は心の奥が熱くなってくるのを感じた。みんながいる! 絶対に守って、絶対に火動ママを助けて、絶対にあの男におしおき! して帰って来なければ!」
火動が棺に乗り込む前、陽給は彼に向かって手を上げた。
「火動、根性のハイタッチだよ! 気合い入れる時には必ずしなきゃね!」
言うと、彼は微かに微笑んだ。今の今まで、固く焦った表情ばかりだったのが、少し綻んだ。状況は状況だが、進もうとするだけでは何かを取り逃してしまうだろう。いわゆるフラグが回収されないってやつだ!
手と手が重ねられた。軽快な音がする。
「じゃあ、行ってきます!」
「あぁ! 最後の発進だ!」
司令が豪快に叫ぶ。
陽給の周囲を青い光が包み、「レッドグロウ」を創り上げていく……!




