今へと続く夢:日々の終わり②
「うあ、まだ生き残りがいたのか!」
「柞磨さん?」
陽給が驚いた声を上げる。
来たのは警備員ではなく柞磨だった。いつも整備班の格好をしていたから、私服では気付かなかった。その上帽子を被っている。ぱっと見では分からなかった。後から野田も来る。
「2人もコットンキャンディー買いに来たの?」
「んな訳あるかっ! 唯架さんの護衛だよ!」
「言ってくれたら一緒に食べたのにー!」
陽給が空気の読めない声を上げると、柞磨は苦笑を浮かべた。
「陽給ちゃん、護衛って意味分かる? 分かったらそいつからどこうか、縛り上げるから」
◆◇◆
「もうすぐ司令の車が来る。テメェ、動くんじゃねぇぞ」
柞磨はディールを睨みつけた。パステルカラーのエプロン姿はシュールだったが、ファーレンの副幹部だ。縛られていても、何をしでかすか分からない。
無論、ディールも思案していた。
(まさかあの女……生きていたとはな)
生体コアは要塞の崩壊時、一緒に潰れたものだと思っていた。同時に、アマテルの目からディールは逃れられたと思っていた。だからこそ、逃亡など続けずこんな場所で菓子など売っていたのだが。
(生体コアの制御権は私にある……!)
生きていると分かれば、もうこちらのものだ。制御権さえ取り戻せば。後はどうにでもなる。
腕時計を操作する。この男は縛りが甘い。簡単なマジックの応用で縄は解けていた。
「柞磨、こいつ!」
「テメェ、何してやがる!」
2人が取り押さえた時には遅かった。
◆◇◆
「火動ママ、元気出して! 気を取り直して、駅前にクレープ買いに行こうよ!」
「そ、そうね」
「あいつならもうメッタメタにやられてるから! アマテルの5分の6が、ケンカ上等で鳴らした過去があるんだって!」
「6分の5だろ」
火動がツッコミを入れる。
微笑ましいやりとりに、口元が緩む。
もう、ファーレンと唯架は関係ないのだ。あの男がいたのは例え菓子屋のエプロンでも恐ろしかったが、火動と陽給ちゃんがぶん殴ってくれた。アマテルの人達もいる。
ちらりと火動の様子を伺う。やはり無表情だったが、唯架の視線に気づくと頬を掻いて視線を逸らした。はっきりと分かる、照れた男の子の仕草だ。
唯架は微笑んだ。
きっとこの先、関係もよくなるはず。唯架自身が笑顔でいれば、きっと火動も自然な表情を見せてくれる。
と。
首筋から、バチリと音がした。電流が体を走る。唯架に分かったのはそれだけだった。
視界がブラックアウトした。
次週に続きます!




