表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/41

今へと続く夢:日々の終わり①

 火動が部屋で一人寝転んでいると、隣から騒音が来た。


「一緒に公園行こ! コットンキャンデー売ってるの!」


「一人で行け!」


「そんなこと言わずに! 男手が必要なの! 火動ママ、お菓子食べに行こ!」


「誘うのか!? 昨日の状況、お前も見てたろ!?」


 メンタルが強すぎる!


「だからスイーツで和ませるのさ! 火動、俺は行かないって顔してるけどさ」


 陽給の顔が、邪悪に歪む。といっても顔立ちは可愛らしい系なので凄みはないが、このポジティブ野郎からの脅しは間違いなく効く。火動のカンが告げている。


「本当は、甘いもの好きなんでしょ?」


「好きじゃねぇ!」


 否定するが、陽給の表情は変わらなかった。


「見てれば分かるよ。副指令にショートケーキで釣られてたし司令と来た時もケーキ真っ先に食べてたし」


「ぐっ……」


 なんだかカッコ悪いと隠していたが、無意識がそうさせていたのか。


 不覚……!


「さぁ、ミコちゃん達にバラされたくなきゃ一緒に来るんだ!」


「お前の友達くらい、どうでも」


「黒獅子君、じゃなかった、棗君にバラそう「行く」


 あいつにだけは弱味を握られたくなかった。



◆◇◆



「コットンキャンディーって、わたあめのでっかい奴なの!」


「そ、そうなのね。詳しいのね、陽給ちゃん」


 陽給という子は明るかったが、火動はずっとそっぽを向いて黙り込んだままだ。家の構造から、2階でのやりとりは1階に筒抜けだった。無理矢理連れて来られたのだから、仏頂面でも仕方ない。昨日と朝のことは気にかかるが……。


(……焦らない、焦らない)


 母に言われた言葉を思い出す。今はとにかく、陽給ちゃんの気遣いに合わせよう。誘ってくれたのは、火動とのことがあったからだ。


「わたあめなんて、高校生の頃に食べたっきりよ」


「あー! 先週お祭りがあったのに! もーちょっと早く発見されてれば、わたあめ屋さん行けたのに! もったいなかったですね!」


 陽給ちゃんは心からしょんぼりして叫んでいる。手に持った日傘がぶんぶんと揺れる。本当に明るい子だ。


「わたあめなら、これから食べに行くんでしょ?」


「コットンキャンディーと、お祭りで食べるわたあめは違うんですー!」


 違うらしい。


「そうかしら。ほら、ゲームセンターにもあるでしょ、わたあめ機械」


「え? そんなのありましたっけ?」


 ジェネレーションギャップ。


 しかし、会話をしているうちに心もほぐれてきた。


 公園では住宅地の倍ほどセミが鳴いている。以前ならうるさかっただろうが、今はそれも心地良い。夏のもったりとした、蒸し暑い風。ゆっくりと深く息を吸いこむ。十数年振りの、夏の香り。


 これから十分に、この時間を味わえるのだ。


 公園とあだ名されているが、実際は市民広場。それなりの広さがある。数分ほど歩き、ようやくそれらしい屋台を見つけた。。


「あったよ! コットンキャンディーショップ!」


 陽給ちゃんが黄色い声を上げて近付いていく。


 店員は仏頂面で立っていた。


 ディールだった。


 仇が綿菓子屋をやっていた。


 唯架は固まった。ディールも唯架を見るなり、目を見開く。


「貴様っ……火ノ原!?」


「お前、知らないんじゃなかったのか!?」


 火動が言うと、ディールは唯架を指差す。


「洗脳されるとはいえ敵に言うかっ。しかし火ノ原、貴様……! あの場所から出られたのか!」


 そんなことをかわいいスカイブルーのエプロンで言われても困る。


 恐ろしい所業をされた相手が目の前にいる。生まれる感情は、恐怖だけではない。


 なんか見ちゃいけないものを見た気分だった。


「……こんな時どんな顔をしていいのか分からないわ……」


「真顔ですよ、真顔」


「真顔になるなぁ! あの男から騙されてこんな場所しか働く場所がないんだよ! それに貴様の生存権はまだ私が持ってぐはぁ!?」


 火動が無言で殴り飛ばした。その上陽給に飛び蹴りされた。


「おまわりさんこいつです! 罪のない女の人を脅しました!」


「もうちょっと殴りたかった……」


「小娘、間接をキメるな15歳のくせに!」


 陽給に関節をキメられるディールを見ながら、火動が呟いた。


 その気持ちはよくよく分かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ