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今へと続く夢:再会、束の間の希望②

「でさー! あずき納言ちゃん、崩壊する遺跡の中を走り回る羽目になっちゃって! 結局海に50m紐なしバンジーで飛び込んだのさ!」


「VRだろ?」


「VRでも感覚は同じみたいだよ。もーうぎゃーのひぎゃーで!」


 なんやかんやで、夜こうして窓と窓で顔を合わせるのが日常になっていた。


「見てたらプール行きたくなったのさ。明日行こうよ、賢君も誘ってさ!」


 賢も普通の小学生になったわけだし、時間は有り余っている……だろう。


 と、電話が鳴った。


「誰から?」


「アマテルだ」


 今はステーキハウス兼ガレージになっているが、いったい何の用だろうか。陽給とはちょくちょく連絡し合っているそうだが、火動にかけてくるとは。ひょっとしたら陽給も関係のある話題かもしれない。とりあえずスピーカー状態にしておく。


「アルバイト募集だったりして。私、ウェイトレスやってみたーい!」


「中学生はアルバイト禁止だろ……もしもし」


「火動君か? 番匠司令だ! 今は店長だがな!」


「何の用だ」


「はっは、つれないなぁ! ……というほど気楽な話題ではないのだ。明日は空いているか?」


「空いてませーん プール行く用事で詰まってまーす!」


 陽給はいつもの調子で言うが、番匠の返答は重かった。


「ふむ。悪いが、それはキャンセルしてくれ。至急、元アマテル本部に来てほしいのだ」


「……だから、何の用で」


「今は言えない。一つ言えるとすれば、君に合わせたい人がいる」


「人?」


 アマテルに関係ある親類なんていただろうか。母は一人っ子だったので、親類もそんなにいない。父は論外だ。


「明日必ず話そう。朝9時以降であればいつでも良い。プールはまた今度にして欲しい」


「はぁーい……」


 真面目な話らしい。陽給はしぶしぶ頷く。


 通話の切れた端末を見つめる。いまいち要領の得ない会話だった。どことなく不穏なものを感じる。今は言えない、会わせたい人がいる……。


「なんか変な話題だったね。ひょっとして、また棺が出来た! とか?」


「それはそれで複雑だ」


「じゃ、明日一緒に行こっか」


「あぁ」


 1人で来いとは言われていない。それに陽給はがっつり関係者だから構わないだろう。



◆◇◆



 元アマテルに向かう。ほんの数週間前の出来事なのに、交通手段が懐かしい。バス停から降りてしばらく歩くと、駐車場に番匠がいた。別に建物内で待っていても良かったのだが、何故だろうか。


 番匠は陽給を見るなり、ひゅう、と口笛を吹いた。相変わらず気障な40代だ。


「おぉ、陽給君も来たか」


「え、来ちゃダメな系? だったら最初から言って下さいよー!」


「まぁ、一人では受け入れられないかもしれない。陽給君もいた方がいいだろう」


「……?」


 不穏すぎる言葉が聞こえたが、番匠はそれ以上何も言わなかった。


 ステーキハウスを横切り、元本部へ。窓から見た店内はそれなりに繁盛しているらしく、開店すぐだというのに客が入って来ていた。茶色い髪のウェイトレスが「モーニングステーキ2つですね!」と注文を取っている。


(……え)


 ……あのウェイトレス、あのファーレンのパイロットでは? 電気刺激ですら平然と行う鬼だったのでは?

 こんなステーキハウスとは場違いなはずだが、見間違いかと目を擦っても、顔の造りは同じだった。


「どうした、火動君も朝からステーキが食べたいのか? 若いな!」


「……いや」


 錯覚だ。あの冷酷なパイロットがあんな笑顔で接客しているはずがない。なぜか背中に寒気を感じつつ、元本部のロビーへと入る。人がいなくなった本部は、どことなく静けさに満ちていた。3人の足音だけが響く。やがて、番匠は医務室の前で足を止めた。


「……火動君。落ち着いて聞いてくれ」


「……あぁ」


 司令はいつになく真剣な顔をしている。いったい何を聞かされるのか。


「君の母親らしき人物が、要塞の残骸から発見された」


「なっ……!?」


「火動のママが……!?」


「嘘だ、母さんは、いないって……」


 あの白衣の男の言葉が甦る。しかし、番匠は首を振った。


「少なくとも、残骸にいた人物は確実に生きている。火動君、君に身元の確認をして欲しい」


「……っ」


 頭がごちゃごちゃなまま、扉が開かれるまま中に入る。


 いつもの医務室だった。寝台の上には、一人の女性が寝かされていた。側にはマリーゼが立っている。


 女性は黒いショートカット、眠っていても見覚えがある顔立ち。祖母たちから見せられた写真と、まったく同じ人物だった。


「この人が、火動のママ?」


「……ばあさん達から聞かせらた通りの、人だ」


 陽給の言葉に頷く。


「やはりそうか。賢君の勘はやはり正しかったな」


「でも、写真で見た顔と同じだ」


 本来なら、少なくとも30代後半にはなっているはずだ。なのに、大学卒業の写真と全く変わっていない。


「どうやら特殊な事情があったらしい。我らが知っていることを話そう」

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