今へと続く夢:再会、束の間の希望①
時系列はエピローグの後になります!
そして、現在。
「夏休みに残骸調べなんて、すみませんね」
「いいんですよ。僕にとっては慣れてることですし」
マリーゼと賢は、崩壊したファーレン要塞跡を調べていた。基本的にマリーゼが掘り、賢が何かないか探知する役割だ。ファーレンとアマテルが所有していた「棺」は全て消えたとはいえ、まだ何か残っている可能性はある。
と。賢の目が細まった。
「……そこ、そのガレキの下、誰かいる……!」
「……!?」
要塞が崩壊して1か月は経っている。人間の生存は絶望的だが……、とにかく掘る。
そこには、青い何かに包まれた女性がいた。触ると、既存の素材ではない。科学技術の賜物か。女性はパイロットスーツに似た服を着ていた。生きているのかそうでないのか分からないくらいだが、賢者である賢が生きているというのならば間違いない。
「……、賢さん、調べてもらえますか?」
「は、はい……」
賢が触った途端、青いものが輝いた。咄嗟にマリーゼは装置から少年を引き離す。青いものは溶けるように消え、女性だけが倒れていく。マリーゼは器用にも、賢を抱えながら女性も支えた。
青いもので濡れて分かりにくかったが、少しばらついた黒い髪の女性。少し体は冷えているが、温かい。生きている。
敵組織、ファーレンの存在なのは間違いない。しかし、誰かと似ている。
「ひょっとして……」
賢が呟いた。
「この人、火動のお母さん……?」
言われれば、髪のばらつきや顔立ちが似ている気がした。
しかし、火動はクローン人間……いや、いくら規格外の存在でも灰だけでは再現するのは難しいだろう。細胞を加えた人間がいてもおかしくない。
マリーゼは暫定的に、彼女を火動の母と定義した。
◆◇◆
「この人が、火動くんのお母さん……?」
夏井は首を傾げた。
「それにしては若いですね! 私とそんなに年齢が変わらなそうな……?」
「恐らく、生体電池……要塞にエネルギーを提供する、核として存在していたのでしょう」
「せいたい……?」
「人体を一つの装置として組み込むことですよ。老化して出力が落ちては叶いませんからね」
「……? ……???」
夏井はやっぱり首を傾げた。
賢少年は複雑な顔をして、女性を見つめた。
「この人、どうして生体電池になったんだろう……」
「それは本人に聞いてみないと分かりません。無理矢理組み込まれたのか、それとも自発的に立候補したのか」
後者の場合は、火動に負担をかけることになる。身元の確認はこれからするものの、母に等しい存在と敵対する心理的ストレスは計り知れない。
「しかし、我々のカンは善い人間と判断している! マリーゼ君の心配するようなことは50%で起こらんな!」
「カン……ですか」
マリーゼはげんなりと呟く。そもそも50%はただの現状だ。
「そうですね! 火動君のお母さんなんだもん! 悪い人じゃないよね!」
「でも、もしも西園寺京子のような悪人だったら……」
「そ、そっか……」
賢の声に、夏井を含む全員が黙り込む。
西園寺京子とは、元ファーレンの存在。逆らわないものには容赦なく拷問する、冷酷の証。
沈んだ空気を払うように、司令は軽く咳払いをした。
「考えていても仕方がない。このまま目覚めるのを待とう。健康状態に問題はないのだな? 明日、身元の確認を行おう」




