過去へ続く夢:唯一の十字架③
出荷前日。
赤子はもうすっかり成長し、ぷにぷにに違いない頬、くるんと丸く握られた手。破壊者とは程遠い。
(この子を……兵器になんてさせないんだから……!!!)
手には、金子が用意したバット。鉄製だから、ガラスを割るにはちょうどいい。
思い切り振り被り、試験管を破った。
けたたましい音と共にガラスが破れる。唯架の力加減で、ガラスだけが破れる。
最高の気分だった。
濡れたままの赤子を抱き上げる。
手のひらに衣服が触れ、ぎゅう、と握り締められた。赤子特有の反射だ。途端、唯架は自分の選択が間違っていなかったことを知った。
「……」
もっと見ていたい、そんな願いがこみ上げる。
でも、ここでお別れだ。子供一人しか脱出できない。
もとより知られるのは承知の出来事だ。金子との計画で、窓から発進直前のトラックへ、毛布の上へ放り投げる予定だった。ものすごく手荒いが、この組織に育てられるよりはよほどよい。
背後から足音が迫り来る。
唯架は抵抗しなかった。ただ、呟いた。
「……行ってらっしゃい、火動。あなたは生きてね」
頭の後ろに硬いものが押し付けられる。銃かなぁ、そう思うよりも、火動の未来を考えておくことにした。
顔はイケメンになるはず。
性格は、きっと優しい子。
◆◇◆
「手間を掛けさせおって……」
ディールは、倒れた女性を見る。麻酔薬を至近距離でぶち込んだ、しぬことはないが目覚めることもないだろう。
殺す気はない。
まだ利用価値がある。
要塞の生体電池。
細胞とはいえ、原初の男と合わさった者。棺の原理を利用した要塞にはうってつけだ。……言うまでもなく、あのクローンを出荷した後は元からそうするつもりだったのだが……。




