表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/38

祭囃子の夜④

「……自分で言いだしたけど……いざ見るとなんだかモヤモヤするわ……」


 水生は小さく溜息を吐いた。手には二人分のアイスクリーム。自分と陽給の分だ。


 2人きりにさせようという作戦だったのに、残るは虚しさばかり。


 金魚すくいで負けたとか、陽給がドキドキしないとか、火動が行動しないとかではない。


 2人が仲良くしているのを見るのが、悲しくなってきただけだ。


 手元のアイスクリームを見る。


 陽給と初めて一緒に食べたのは、アイスクリームだった。


 小学校に上がりたての頃。占いが好きだった水生は、いつの間にかクラスから浮いていた。占いが得意で好きなのは水面緒家の宿命。浮いてしまうのは水面緒家に生まれたものの誇り。そう思っていたが、内心はちょっぴり、友達が欲しかった。


 クラス中から不気味と噂される中、手を差し伸べてくれたのが陽給だった。


「いっしょにアイスたべよう!」


 陽御崎家に上がらせてもらって、1つのアイスをはんぶんこして食べた。気持ちがいいから縁側で食べよ、と縁側に出たら、初夏の日差しで溶けた。そんなトラブルも初めての経験で。


 せっかくもらったアイスが溶けたことに水生は焦ったが、陽給は「とけた―!」と心底楽しそうに笑っていた。見ているとなんだか水生までおかしくなって、2人でバニラジュースになったアイスを飲み合いっこした。


 ……数年経っても色褪せない、一生の思い出だ。


 そんな女の子が、自分から離れていく。


「あたしが男の子だったら、絶対告白してるのに……」


 男だったら結婚したいと思ったのは、12歳の頃だ。


 失恋というものにぶち当たったのも、12歳の時だ。


 修学旅行で同じ班、同じ部屋になり、水生と陽給は布団を並べていた。陽給はもちろん、同室の女子たちは大はしゃぎ。他愛ないおしゃべりは、誰と付き合いたいかの恋愛トークに突入していた。


「陽給ちゃん、結婚するなら男の人? 女の人?」


(!!!)


 同室の女子にとっては無邪気な質問。しかし水生にとってすさまじく重要な問題だった。


 息を飲みながら陽給の回答を待ち。


「えー? どっちかというと男の人かな?」


 という一言でぶちのめされた。


 その後はよく覚えていない。けれど最終的な結論は、せめて陽給の恋路を応援しようということだった。


 初めて話しかけてくれた時の、笑顔。曇らせたくない。好きな人ができたのに妨害されたら、間違いなく笑顔は曇ってしまうだろう。そんなの、水生が一番よく知っている。


 そう、思ったが。


 いざ目にすると、結構堪えるものである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ