祭囃子の夜④
「……自分で言いだしたけど……いざ見るとなんだかモヤモヤするわ……」
水生は小さく溜息を吐いた。手には二人分のアイスクリーム。自分と陽給の分だ。
2人きりにさせようという作戦だったのに、残るは虚しさばかり。
金魚すくいで負けたとか、陽給がドキドキしないとか、火動が行動しないとかではない。
2人が仲良くしているのを見るのが、悲しくなってきただけだ。
手元のアイスクリームを見る。
陽給と初めて一緒に食べたのは、アイスクリームだった。
小学校に上がりたての頃。占いが好きだった水生は、いつの間にかクラスから浮いていた。占いが得意で好きなのは水面緒家の宿命。浮いてしまうのは水面緒家に生まれたものの誇り。そう思っていたが、内心はちょっぴり、友達が欲しかった。
クラス中から不気味と噂される中、手を差し伸べてくれたのが陽給だった。
「いっしょにアイスたべよう!」
陽御崎家に上がらせてもらって、1つのアイスをはんぶんこして食べた。気持ちがいいから縁側で食べよ、と縁側に出たら、初夏の日差しで溶けた。そんなトラブルも初めての経験で。
せっかくもらったアイスが溶けたことに水生は焦ったが、陽給は「とけた―!」と心底楽しそうに笑っていた。見ているとなんだか水生までおかしくなって、2人でバニラジュースになったアイスを飲み合いっこした。
……数年経っても色褪せない、一生の思い出だ。
そんな女の子が、自分から離れていく。
「あたしが男の子だったら、絶対告白してるのに……」
男だったら結婚したいと思ったのは、12歳の頃だ。
失恋というものにぶち当たったのも、12歳の時だ。
修学旅行で同じ班、同じ部屋になり、水生と陽給は布団を並べていた。陽給はもちろん、同室の女子たちは大はしゃぎ。他愛ないおしゃべりは、誰と付き合いたいかの恋愛トークに突入していた。
「陽給ちゃん、結婚するなら男の人? 女の人?」
(!!!)
同室の女子にとっては無邪気な質問。しかし水生にとってすさまじく重要な問題だった。
息を飲みながら陽給の回答を待ち。
「えー? どっちかというと男の人かな?」
という一言でぶちのめされた。
その後はよく覚えていない。けれど最終的な結論は、せめて陽給の恋路を応援しようということだった。
初めて話しかけてくれた時の、笑顔。曇らせたくない。好きな人ができたのに妨害されたら、間違いなく笑顔は曇ってしまうだろう。そんなの、水生が一番よく知っている。
そう、思ったが。
いざ目にすると、結構堪えるものである。




