祭囃子の夜③
「あ! お面かわいい!」
「お前の母さんたちも着けてるよな、仮面」
「まぁそだけどさ」
「ご両親は相変わらずなのね……」
水生が呟く。陽給の転校前から変わらないのか、あの両親。
「ま、ママ達のことはいいでしょ! ほら、このお面! キャラメルライダーだよ! 昔見てたでしょ?」
「だったっけな」
「だったよ! ほら、このキャラメルメルト1号とか!」
◆
2人はお面を、至近距離で見合っている。至近距離で!
水生は思う。これこそ、2人の距離が縮むチャンス!
「えいっ」
「うわっ!?」
水生は火ノ原の背中をとん、と軽く押す。目の前には陽給が! 2人の急接近を試みる!
◆
顔が思い切り近づいた。慌てて離れる。慣れない挙動をしたせいか、足がもつれて転ぶ。砂の味を感じながら水生に毒づいた。
(水面緒め……!!!)
しかし、当の陽給は。
「わー、大丈夫ー?」
火動が転んだことにしか心配していなかった。しかも気楽に。突如転んだ、くらいにしか考えてないようだ。……水面緒は陽給とくっつけたがっていたが、果たしてこいつは火動を意識するのか?
激しく疑問が湧いたが、水面緒たちは金魚すくいへと移行していた。
金魚すくい。
「2人1組! でいいよね!」
「今、3人しかいないんだが」
火動のツッコミはさておき、陽給は浴衣の袖をまくって臨戦態勢に入る。水面緒も同じく。
「行くよ水生ちゃん!」
「ええ、陽給ちゃん!」
2人のコンビネーションは。
「えいっ! ……えいっ! 店主さん、この金魚に加速装置入ってない!?」
「嬢ちゃんの動きを上回ってんだよ……」
水生の動きはひたすら不器用だった。金魚がすいすいと逃げていく。
「ファイトだよ水生ちゃん! こう、動きを読んで!」
「ブイの動きを!?」
完全に混乱していた。
結果。
「1匹……1匹だけ……」
意気消沈した水面緒が呟く。残念賞だった。
「か、かわいいじゃん! つ、次は火動とね!」
「あぁ」
こうなったら流されよう。
陽給の動きを読み、金魚が逃げそうな方向にブイを入れる。金魚は狙い通りブイの上へ、そしてお椀の中へ入っていった。
「火動、ナイスアシスト!」
「どうも」
結果は5匹。
「ずるーい……男の子の身体能力ずるい……」
「そこはどうにもならないだろ」
水生がジト目で睨んでくる。正論を言うと、頬を膨らまされた。
◆
果たして水面緒水生は、己の野望を達成できるのか……!?




