ドキドキ★同棲!?パニック:下
ある夏の終わりの日。悠木久胡は、ふと下着売り場の前で足を止めた。
(……あいつの下着、見たことないっすね)
あいつとは、相棒エウリーのことである。見たいわけではなく、単にふしぎなだけである。
同居している以上、洗濯物は2人分出る。なのだが、洗濯物は専門のランドリーが久胡の寝ている時間に来るとかで、服を着替えている様子を全く見たことがない。従って干すのは久胡1人分である。楽っちゃ楽だ。女の子の下着を干すというドキドキイベントも存在しない。が、作業の簡単さよりも疑問が先に来る。
深夜2時に眠る男性の寝る期間に来るランドリーってなんだ。新聞でさえ2時に来る。いつ来ているのか正体を探ってやろうと寝ているふりもしたが、気付くと全ては終わっていた。相棒の服は変わり、優雅に朝焼けの光を浴びていた。
かろうじてパイロットスーツが「こちらを見ないように」と厳命されて着替えていたが、そもそも女子の着替えを見るのは重大なマナー違反であるし、さらに相棒が寝ているところすら見たことがない。
店頭では、闇夜のような紺色に、薄い黄色の花がそこかしこにあしらわれたデザインの下着が宣伝されていた。恐らく売り出し中の商品なのだろう。店の奥からは店員が「彼女に買いに来たのかしら?」みたいな生暖かい目で久胡を見つめている。
何もかも謎めいた相棒の秘密を探る気はないが、なんとなく、着ているならこんな下着だろうな、なんてことをぼんやり考えた。煌びやかなものが好きな相棒に合いそうだ。そういえばこの前うっかり入手してしまったアマテルパイロットの下着はこんなのだった。
サーチホークの操作に失敗し、結局アジトまで持ってきてしまった。誇らしげに足にひっかったキャバキャバ下着を掲げるホークを仕方なさそうに撫で、彼女はこう言った。
『久胡。発進準備よ』
『りょーかい。今あいつらは戦闘中っす。隙を見て叩くんすね?』
『何を言っているの? このブラを返しに行くのよ』
『は? まぁ俺らもいらない一品すけど。このまま捨てて』
エウリーの眼光は、めちゃくちゃ鋭かった。
『返しに。行きましょう』
となると、久胡には従うしかなかった。
着飾ることは人間にとって大事なのよ、みたいなことを言っていたが、あまりにも小さな声過ぎて断片的にしか聞こえなかった。そもそも人間にとって大事ってなんだ。まるでお前、人外みたいなことを言う。
ともあれ、エウリーも女性の1人。下着がどのくらい大事か、久胡よりは分かるのだろう。そしてひょっとしたら、こんな下着が好みなのかもしれない。
高すぎて買えないが。値札を見ると、なんと5000円もした。たかだか下着にここまで金を投入するのか。
「お客様、何かお探しでしょうか?」
「なんでもねぇよ、見てただけだ」
ぶっきらぼうに答える。だが50代っぽい店員は「愛想のない彼氏さんね。でも彼女のために下見にきてるんだから、これはツンデレよね」みたいな視線を最後まで崩さなかった。
これ以上生暖かく見られるのも嫌だったので、足早に去った。
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