アイドル+パイロット=!? ③
「アイドルが来たぁー!!!! サインもらいたーい!!!!」
夏井紅はウッキウキで廊下を邁進していた。色紙はもちろん、ペンだって完備。薔原きゃろちゃんには詳しくないが、とりあえず名のあるアイドルのサインはもらっておくに限る。
だが、そういえば。他の整備斑はどうしているのだろう。紅のようにワックワクにはならないのだろうか。廊下ついでにドッグを覗くと、ものすごくふつうの雰囲気だった。ある者はスマホを触りメカエリをつつき、どう見ても有名人に色めき立つ雰囲気はない。
「あれぇ? みなさん会いに行かないんですか? アイドルですよ?」
「いや……」
「俺達は……」
似飛望は顔を顰めて顎を掻く。
「ナマモノは食指に掛からないタイプでなぁ……」
「はへー」
「二次元最高よ」
「マロニエちゃんとは違うんですか? AI美少女ですけど」
「大いに違うの。うん」
きゃろは支給されたパイロットスーツを広げた。淡いピンクを基調とし、ガードはヒマワリのようなイエロー。太腿と腕にはレース模様までついている。アイドル衣装をそのまま落とし込んだ如くのデザインだ。事前にきゃろが指定した通りのデザインだ。
「いいじゃない。地球を守る正義のアイドル! って感じで!」
「サイズはどう? キツくない?」
「マネージャー、あたしを誰だと思ってんのよ。ぴっちりスーツに自信がないと思ってんの?」
マネージャーに勝気な笑みを見せ、きゃろはドックへと向かった。
巨神……ウサちゃん号を創るらしい男の方は、黒と白の地味なパイロットスーツを着ていた。襟元のラインが燕尾服に似ているが、飾りはそれだけだ。
(黒子にはちょうどいいわね)
内心で呟く。
「ね、あんた。乗るのは初めてなの?」
「いえ。何度か模擬戦闘はしていますよ。副指令たるもの、戦えなければいけませんからね!」
「じゃ、任せるわよ」
適当に言う。
司令が入ってきた。
「これから君達には偵察機を破壊してもらう。カメラ機能に特化した機体だが、油断は禁物だ。ビームで破壊後、速やかに撤退。いいな?」
「了解しました」
「それだけ? もーっと派手にさせてよ!」
「これは広報ではない。本物の戦いだ! い・い・な?」
「はいはーい」
「返事は伸ばすなっ!」
不満を全面に押し出した返事に、司令が怒鳴る。
少し離れたところでは、「し、しれーが怒ってる……」と夏井がビビリ、「司令は誠実な失敗には寛容すけど、不真面目にはめっちゃ怖いんすよ」と町田が答えていた。
「ま、まぁまぁ。司令さん、きゃろはやるときはやる子ですから!」
マネージャーが緩衝に入る。ジャンも頷いた。
「安心して下さい。私がしっかり守りますので」
「……くれぐれも。不審な点を感じたら撤退するんだぞ」
来週に続きます!




