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第8話:訪問者、そして戸惑い

夜の病室に、ノックもなく扉が開いた。

 入ってきたのは、黒のスーツに身を包んだ女だった。長身で金髪のショートボブカット、背筋の伸びた立ち姿はどこか軍人のような気配を漂わせている。

「こんばんは。遅い時間に失礼します」

 彼女は静かな口調でそう言うと、ジャケットの内ポケットから名刺を取り出し、二人に差し出した。

《UN-DERT 国連災害疫病対応タスクフォース》

《調査官 ソフィア・オドネル》

「UN-DERTアンダート……?」

 与作が眉をひそめる。

「聞いたことはありますよ」

 エリアスが頷いた。「国連系の組織で、災害や疫病の緊急対応を担っている。異常気象や局地災害のケースだと報道に出てたのを見かけた気がする」

「日本にも来てんのか、そういうの」

「普段は表に出ないけど、最近の世界的な異常気象の関係で、拠点を増やしてると聞いたことがあるよ」

 ソフィアは控えめに笑みを浮かべた。

「ええ、実は東京にも拠点がありまして。通常は大規模災害や感染症を担当していますが、特殊事例の兆候があれば火災や爆発事故でも初動調査に入ります。」


 ソフィアは淡々と切り出した。

「本日は、お二人が遭遇した火災現場での状況について、少しだけお話を伺いたく参りました。あの現場では、通常では考えられない現象がいくつか確認されています。……お二人にしか見えなかった何かが、あったのではと考えています」


 与作とエリアスが、視線を交わす。

 ほんの一瞬の沈黙のあと──


「……変なものを、見ました」

 エリアスが息を呑んだ。「火のなかに、狼みたいな影がいました。空中に、歩いてるように」

「なあ、あれ絶対、鳥だったろ。羽、みたいなのが見えた」

 与作が割り込むように言った。「……俺、鳥を鉄パイプで殴った。そしたら、手応えがあった。でもそっから……雨が降ってきたんだよ。空に雲なんかねえのに。あれも……妙だった」

 彼は一瞬言葉を止め、記憶をなぞるように続ける。

「最後には……黒い球みたいなのから手が現れて、その鳥を掴んで、消えちまった。煙も火も残らずに、まるで最初から何もなかったみてえに……お化けでも見たってことにすりゃ、済むのかね。……はは、冗談になってねぇな、こりゃ」


与作は自分の言葉に、自分で戸惑ったように、目を伏せた。


 ソフィアはしばし黙って与作を見つめた。瞳に一瞬、何かを計るような光が宿る


「ありがとうございます。どれも重要な証言です。明日、おふたりにUN-DERTの日本支部オフィスへお越しいただきたく思っています。詳しい状況の整理や、今後の対応についてお話しするために」


 エリアスが眉を上げた。「僕ら、退院の予定すら聞かされてないんですが……」


「大丈夫です。明日には出られます。必ずね」

 ソフィアは淡々とそう告げ、確信めいた静かな笑みを浮かべた。


X-FILE味が増してますが、ちゃんとRPGに向かっていきますのでご安心ください。


もし何か感じたことがあれば、感想などお寄せいただけると嬉しいです。

引き続き、一緒にこの物語を楽しんでいただけたら幸いです!

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