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青い空の作り方  作者: 鈴木りんご
エピローグ「誰よりも幸せな僕ら」
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第43話



「優和……ごめんね」


 綾は笑顔のまま、謝罪の言葉を口にした。


「えっ? 何が?」


 その謝罪の言葉が何に向けたものなのかわからないのか、優和はきょとんとした顔をしている。


「だって、ほら……優和はロリコンでしょ?」


「いや、俺はロリコンではないから」


「ごめんねー。私、六つも年上で」


「だーかーらーー! それは誤解だって。何度言ったらわかってもらえるの……」


「あれですか? やっぱり優和は、こんなお姉さんでは萌えませんか?」


「…………」


「やっぱり、萌えないんだ」


 綾がしゅんとなって俯く。


「あー、萌えるか萌えないかの分別は置いておいて、とにかく俺は綾がすんげー好きだ。そして何度も言うようだが、俺はロリコンではない。好きになった子がたまたま年下だっただけ」


「じゃあ、前の私と今の私はどっちが好き?」


「どっちも同じくらい好き。かわらないよ。見た目とか性格とか、そういった何かで好きになったんじゃない。好きなところを上げろって言われればいくらでも上げられるけど。だからといって、その一つ一つを合わせたから好きになったわけじゃない。あ、でも毎日どんどん好きになっていくから、今のほうが好きかも知れないかな」


「私も優和が大好き。優和のどこかが好きなんじゃなくて、優和だから好き。優和の全部が好き」


 真っ赤になった顔に満面の笑みを浮かべ、綾が飛び掛るようにして優和に抱きつく。


「おい、こんなところで抱きつくなよ。恥ずかしい」


「えへへ~」


「あ、そうそう詩を書いてきたよ。詩菜が書け書け五月蝿いから。はい、鈴木優和、復活の第一作」


 嬉しそうに目を細めながら、頬を寄せてくる綾を力ずくで押し退けながら優和が言う。


「あーー! 今、詩菜って呼んだ。でも詩菜のほうが呼びやすいなら詩菜って呼んでもいいよ」


「あ、ごめん。別に綾って呼ぶよ。今は綾なんだから」


「そう? でも、優和だけが私のことを詩菜って呼ぶのも、それはそれでなんかこうくるものがあるよね? 萌えるかもしれない」


「だったら、なおのこと綾の方向で……」


「あー、優和はつれないんだー」


 そう言いながら、綾は笑顔でまた優和にじゃれ付く。


「ひーっつくな。ハイ、詩。とりあえず読め」


「うむ。お姉様が見てさしあげよう」


 優和から詩の書かれたノートを受け取ると、綾は少しだけ真剣な表情を浮かべた。




「空が青く見える理由……


 そんなことはどうだっていいんだ


 僕はどうして空があんなに美しいのか


 それを知りたい




 花々がいろんな色をしている理由……


 そんなこともどうだっていいんだ


 僕はどうして花々があんなに美しく咲くか


 それが知りたい



 僕は思うんだ


 やっぱり、神様はいるんじゃないのかな?


 確かに世界は不公平なことばっかりで


 悲しいことだっていっぱいある


 それでも、やっぱりさ


 僕らの幸せを願ってくれる神様はいると思うんだ


 だってそうじゃなきゃ


 この世界がこんなにも美しい理由は説明出来ないよ



 きっと神様は


 ただ、願っているだけなんだ


 僕らが幸せになるようにって


 僕らにこの美しい世界を与えて


 ほら、幸せになってごらんって



 だから、僕らが自分たちの力で幸せになって


 こんなステキな世界をくれた


 神様の願いを叶えてあげようよ」




 詩を読み終えると綾はゆっくりとノートを閉じた。


 そして空を見上げる。


「私もそう思う。私たちは幸せにならないといけないの。私たちの幸せを願ってくれている人たちがこの空のどこかにいるはずだから」


 真面目な顔で空を見上げたままそう言うと、また幸せそうに表情を歪める。そして優和に抱きついた。体を優和に預けるようにして抱きつきながら、綾は甘い声で言う。


「だ~か~ら~ね、一緒に暮らそう。お姉さんが養ってあげるよ。優和は一生懸命、夢にだけ向かって全力投球してくれればいいから」


「一緒に住むのはいいけど、俺も働くよ。コンビニのバイトもあるし。ヒモは嫌だよ」


「駄目。私はこう見えて、結構売れっ子なインテリアコーディネーターだからお金はそこそこ持ってるのよ。優和の一人や二人、面倒見てあげるって。ほら、今は私のほうがお姉さんだし、優和にはいっぱい幸せにしてもらったから、今度は私が幸せにしてあげるよ。それが私の一番の幸せだから」


「……わかった。じゃあ、いつまでもヒモでいるわけにもいかないし。ちゃっちゃとデビューして見せるさ」


「うん。頑張って。応援してる」


 そう言って綾はさらにきつく優和を抱きしめた。



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