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青い空の作り方  作者: 鈴木りんご
三章「ハッピーエンド」
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第29話



 ――翌日。


 時刻はまだ午後三時前。いつもだったら、まだ詩菜の病室にいる時間。


 今日はすでに自宅に帰ってきていた。


 優和はベッドに横になって考える。


 楽しかった。


 詩菜と共に過ごす時間は本当に楽しかった。


 家ではもちろん、詩菜と別れて家に帰る途中の電車の中でさえ、考えるのは詩菜と明日何を話そうか、明日詩菜に何を持っていってあげたら喜ぶだろうか、そんなことばかり。


 それなのに………


 それなのに今日、もう会いに来るなと言われた。


 いつものような冗談や強がりとは違う心からの言葉だった。


 いや、むしろそれは懇願だった。


 目を真っ赤に腫らして、ぼたぼたと涙を溢しながら詩菜は言った。


 自分はもうすぐ死ぬ。それなのに好きになってしまった。幸せになってしまった。だから余計に不幸になった。だから……もう会いに来ないで。彼女はそう言った。


 どうすればいい……優和は考える。


 幸せにしてあげたかっただけなのに。


 しかし、彼女は泣いていた。


 以前よりずっと不幸になったと言っていた。


 ……どうすればいい。


 わからなかった。答えが見つからない。


 それでも、優和は決めた。


 思い出されるのは詩菜の笑顔。


 自分に向けて微笑んでくれた彼女の笑顔。楽しそうで、嬉しそうで、そしてもしかすると幸せそうで……


 その笑顔は優和にまで幸せをもたらしてくれた。


 そして……


 その笑顔を見ていると自然と胸が高鳴った。


 だから……今優和に導き出せる答えは一つしかない。


 それが正解である確証はない。でも、それしか思いつかなかった。


 とりあえず、自分の正直な想いを詩菜に伝えよう。


 彼女はもう長くは生きられない……そんなこと、今は関係ない。


 今大切なのは詩菜の想いと、自分の想い。


 だから……自分も詩菜のことが好きだと伝えよう。


 その先にどんな未来が待っているかはわからない。


 それでも、きっと大丈夫だと優和は思う。


 互いに愛し合っているのなら、きっとこの物語はハッピーエンドに向かって進んでいるはずだから。



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