俺の人生を狂わしたヤツは今 side.雅也
今回も少し短めなんですけど、これからはせめて最後まで、無理のない範囲で毎日投稿したいと考えて、無理のない範囲で区切っています。
今回も楽しんでください!
自分が何かに操られ、少しずつ自我が消えていくのをわかりながら、俺——柳雅也は、リオにただただ願っていた。
大丈夫だ。きっと、リオなら俺たちを助けてくれる。
少しずつ、考えることもできなくなってきた。息が苦しい。もうそろそろ限界なのだと気づく。
リオが今、頑張ってくれているのだ。もう少し。もう少しで、俺たちは——。
そのとき、だった。
突然、体にまとわりついていた泥が振り払われたかのように、体と魂が重なる。
自分の思い通りに、体が動く。息が、できる。
周りにいたクラスメイト達も、みんな倒れてはいるが、無事なようだ。
隣にいた桜木と俺は、能力を持っているからなのか、なぜか倒れずに起きている。
「助かった……のか?」
自分の両手を眺めながら、俺が独り言つと、桜木が立ち上がった。
「あんまり感動している暇はないわ。早く神崎リオのところへ行きましょう」
「それもそうだな。急ごう」
俺は桜木と一緒に上の階へと向かった。
久しぶりの自分の体は、少し不思議な感覚だ。
「にしても、ここが神崎リオの家なのね。結構広いのね」
「そうだな」
俺が頷くと、桜木はためらいがちに尋ねてくる。
「ねえ、柳雅也」
「うん?」
「なんか、私。神崎リオに、私の過去を覗かれてる夢見たの」
「ああ。俺も見たよ」
「あと、私……柳雅也の過去も、見ちゃった」
「……俺も見たよ。お前の過去」
お互いに顔を見合わせる。どうやら、リオは俺たちの過去を見たらしい。みんなを助けるために。
そしてどういうわけか、俺と桜木も、お互いの過去を共有してしまったというわけだ。
「あんたの、お父さん。……本当に、お母さんを殺したの?」
「ああ。本人の記憶は消えちまったみたいだけど」
「へえ。記憶を消せ、って命令したら、その通りになるってこと? 初めて知ったな」
「いや……今思ったんだけど、多分、俺はあの時にすでに願い事能力に引き換えていたんだと思う」
「え?」
桜木が驚いた顔をする。俺は続けた。
「多分、だけど。……実はあれから、一度も能力を使ったことがなくてさ。俺はもらってすぐ、ダメにしちゃったんだ」
「そう、なんだね。……一度でも能力を持ったことがあったら、その人を操ることもできないんだ」
「そうみたいだ。もしかしたらちょうどその時、お前たち二人が能力を使えない状態にあったのかもしれないな。まあどちらにせよ、俺はもう能力を使えない」
「へえ。……私さ」
桜木が目を伏せた。一気に雰囲気が重くなる。
「ずっと、お兄ちゃんの仇を討とうと思ってた。そのためには、すべてを犠牲にしてもいいって。だけど、あんたや神崎リオに会って、少しだけ、考えが変わっちゃった」
「ん?」
「私は、大切な人にだけ能力を使うって。そう、決めたんだ」
俺は目を見開いた。
「とあ~る人」として神崎リオを苦しめたこいつが、そこまで考えを改めるだなんて、思いもしなかった。
だけど、桜木も同じなのだ。
桜木もやはり、神崎リオにいい意味で人生を狂わされた。だからこそ、ちゃんと——礼を言わないと。
「ここかな」
ドアの前に立つ。桜木と顔を合わせ、覚悟を決めてドアを開いた。
「リオっ!」
真っ先に飛び込んできたのは、一人の少女の姿だった。
ぼろぼろのワンピースを着て、体中に痣のある少女。
——莉緒、だ。
「リオ……?」
一歩、彼女に近づこうとする。その時、桜木がはっと息を呑み、俺の手を思い切り引いた。
「何するんだ、桜木⁉ リオがいるんだぞ⁉」
「違う。違うよ。それは……神崎リオじゃない」
「じゃあ、どこに……」
ぴちゃ、と音がして、慌てて下を向く。すると、そこには——。
「……え?」
桜木が気づくのと、俺が気づくのは、ほぼ同時だった。
俺たちの一歩先に、一人の少女が横たわっていた。
長くて黒い髪の毛、投げ出された白い腕、見慣れた制服——。
「り……お?」
どさっ、と膝をつく。桜木も呆然と倒れた女子生徒を見つめていた。
胸元のあたりから床に広がった赤黒い血。桜木が女子生徒の胸に手を当てて、首を横に振った。
「だめ。……息、して、ない」
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