柳雅也の過去2
「えっと、そこの君、これ!」
ある朝学校で、ひとりの少女が雅也に声をかけた。
「うん?」
見慣れない顔だった。
だが、頬を恥ずかし気に赤らめるしぐさと、彼女の面影がよく似ていた。
「落としたよ。だいじょうぶ?」
隣のクラスの女の子だった。
ぶあつい眼鏡をかけていて、瞳は見えない。
長袖のカーディガンが、腕を隠していて、腕も見えなかった。
でも雅也には分かった。
この子、美人だ、と。
「……あれ、これって」
拾ったものを見た、その少女が驚いたように目を見張った。
「……これって……サマーねずみ!?」
サマーねずみ。
その単語を聞き、雅也は少女を見つめた。
「……ご、ごめんなさい。とにかく、これ。落としましたよ」
少女が慌てたように手にしたキーホルダーを雅也に渡してぺこりとおじきする。
「サマーねずみを……知ってるのか?」
「え?」
少女が声を上げて雅也を見た。
「そりゃあ……知ってるに決まってる。私、大好きだよ、サマーねずみちゃん」
雅也が受け取ったキーホルダーでは、サングラスをつけた水着姿のねずみが、ピースサインをとって楽しそうに笑っていた。
これはずっと前に流行った「サマーねずみ」というキャラクターで、雅也が大好きなものだった。
だがもう周りに知っている人はいない。
「……まじか。まだ、俺以外にサマーねずみ知ってる人いたんだ」
「私も、驚いてる……。名前はなんて言うの?」
「俺、柳雅也」
「私は……莉緒。よろしくね」
彼女はそう言って笑った。
その日から、二人は「友達」になった。
サマーねずみの雑学クイズ。
サマーねずみのエピソードでいちばん好きな話は何か。
サマーねずみの特別展が今度開かれるようだが、それには行くか。
サマーねずみの兄弟、ウインターねずみの、ここが好き。
最近の英語の授業で、サマーねずみを参考にして問題が解けた。
サマーねずみの初恋の人、スプリングねずみのどこが可愛いか。
大体はサマーねずみの話が多かったが、二人は色々な話で盛り上がれた。
二人はよく気が合った。
でも、そんな二人でも、知らないことはたくさんあった。
例えば、お互いの複雑な家庭環境。
どちらもそれを話さないし、話す気もない。
だけど、なんとなく、雰囲気で察することはできた。
彼女は学校を休みがちで、同級生に嫌がらせを受けている。
そして彼女の家庭は、双子の姉が中心である——。
どうしてそんなことを知っているのかといえば、それは噂を聞いたからだ。
彼女の家庭は、と。
でも、それを知ってもなお、雅也の心は揺るがなかった。
さらに強いものとなったのだ。
莉緒ちゃんは、俺が守る。
何があっても、守ってやる。
そう、それが、無自覚ながらの、雅也の初恋だった。
最近ずっと投稿できなくて本当にすみませんでした!!!
本当にごめんなさい。
でもまた復帰します!
これからは一週間に一回以上の投稿を目標としてまいりますので、
これからもご愛読お願いします。




