桜木優子の過去6
それからの優子の行動は早かった。
まず、主犯格である教師、田村を捜し、彼に怪文書を送り付けた。
田村は、いじめっ子だけあってメンタルは強く、優子もかなり手こずった。
そんな田村は、通称「タムラ」と呼び捨てで、生徒からの人気も薄い。
だからこそ、優子はしっかり考えた。
どうすれば田村を貶めることができるか。
何をしても彼には無駄なのは分かっていることだし、じゃあ、彼ではなく、別の何かを、落とせばよいのではないか。
でも、優子にできることは限られている。
そんなとき、優子に噂が舞い込んだ。
「ねぇ、知ってる? あのタムラ、うちのクラスの神崎さんが好きなんだってさ」
「えーまじ。ていうか、そんな恋愛ってどうなの?」
「超キモい。ぜったい、神崎さんキレイだから狙ってるんだよ。歳もそう遠くないし、叶わない恋ではないんじゃないの?」
「神崎さん、かわいそー。かわいい子も大変なんだね。キモいやつに目ぇつけられちゃうもん」
クラスの女の子たちが、そんなふうに話しているのを聞いて。
これは、優子にとって絶好のチャンスだった。
なぜなら、神崎リオも能力を持っていることを知っていた優子は、いつか利用できると思い、彼女と交友を深めていたからだ。
だったら、まっさきに相談にくるだろうし、最初に疑われることはない。
優子は思った。
——これはチャンスよ。
神様が、私に与えてくれたチャンスなの。
逃がすわけにはいかない。
やるからには、徹底的にやるわ。
幸いにして、優子は神崎リオの過去を知っていた。
優子がT.K中だったために、あまり関わりはないが、卒業アルバムに写る彼女の「素顔」は知っていたからだ。
今は美人でちやほやされているけど、昔の彼女はこんなだった——。
もう一つの、兄のスマホと自分のスマホ、二つを使った。
「とあ~る人」とは、兄のレインのアカウント名だった。うっかりして、名前を変えるのを忘れてしまったのだが、逆に、そのおかげで一見「桜木優子」だとバレなかった。
自分のアカウントから「とあ~る人」を招待し、グループレインで卒アル写真をばらまく。
その瞬間、グループを抜けた。
それだけで十分だった。
あとは、ほかの女子たちが保存して、色々な場所にばらまくのを見るだけだ。
神崎リオには申し訳ないことをしたと思うけど、復讐のためなら手段を選んではいられない。
そもそも、利用するためにしているうわべだけの友好関係、どうせ壊れたところで何せ問題はない。
神崎リオは、同じ能力者である柳雅也とともに、血眼になって「とあ~る人」を捜すだろう。
だが、見つけられるわけがない。
彼らにそんな能力はないし、優子は自分に繋がる情報にネットシールドをかけて、完全に防御している。
どうせ捜し出せないし、優子もばれないようこっそり行動すればよいだろう。
だが、ここで優子は致命的なミスを犯した。
一つは、神崎リオが自分よりもハッキングができたこと。
もう一つは、柳雅也が校長のパソコンの情報を持っていたこと。
その二つの大きなミスで、優子は彼らに「とあ~る人」であることがばれてしまった。
そこで、咄嗟に思いついた話があった。
ずっと昔、本で読んだことだ。
——情に厚い人間は、害を及ぼされても、相手が自虐をアピールすれば、許す。
本当かどうかは分からないけれど、優子は試してみた。
『私はね、自分を殺すの!』
どうしてそんなことを言ってしまったのか、本格的に考えると自分でも分からない。
でも、もしかしたらそう思っていたところもあったかもしれない。
——みんなをこっちに来させるより、自分が向こうに行ったほうが早い。
美鈴がしたことと同じだった。
あとは、母子家庭のところを、母親に捨てられ、というストーリーを適当に盛って言えばいい。
それだけで、二人はコロッと騙された。
でもそのとき、優子は決意した。
——誰かに能力を渡したら、私は死のう。美鈴がやったことと同じことをすればいい。
どうやって能力を渡すのか、それも色々調べるうちに理解していた。
だけど、神崎リオの復讐には付き合わなければ駄目みたいだった。
でも、村に着いて、神崎リオが家族と話したとたん——
突然、体が勝手に動き出して。
言うことを聞かなくなった体とは裏腹に、心だけはちゃんと理性を保っていて。
だから必死に、神崎リオに叫び続けた。
——神崎リオ、たすけて、と。
そして、今に至っている、と。
私——神崎リオは、ユウの過去をすべて見終えて、頭痛とめまいに悩まされながら横を見た。
その瞬間——私の手が、誰かに掴まれて。
見たら、そこには、柳くんがいた。
——りお、たすけて。
弱弱しい、彼の呟き。
それを聞いたとたん、頭の中で衝撃が走った。
『お……お母さんっっ!!!』
『雅也くん……大人になっても、ずっと一緒だよ!』
『オレもそうだよっ』
頭痛とめまいと吐き気。すべてを感じながら、またか、と思う。
次は、柳くんの記憶——。
しばらく投稿できなくてごめんなさい。
そのぶんボリューミーな一話となっております!
これからも愛読お願いいたします。




