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桜木優子の過去1

 ちょっと、最初の方はユウ目線でいくので、そこだけご了承ください。

 さかのぼること二年前——。


「お兄ちゃん、お母さんの調子はどう?」


 桜木優子さくらぎゆうこは、家に帰ってきた兄の竜二りゅうじに声をかけた。


 整った顔立ちの竜二は、顔を上げて優子を見る。その顔には、苦しそうな笑顔が浮かんでいた。


「そうだね……この前よりは良くなったと思うけど」


 その微妙な反応を見て、優子は母親の状態がそうよくないことを悟った。


 そして、優子は目を閉じ、決意を固めて竜二に話しかけた。


「お母さん、手術するんだってね」

「……優子」


 竜二が大きく瞳を見開く。


「ごめんね。わざとじゃなかったんだけど、印鑑探してたら、見つけちゃって」


 この前、偶然見つけた手術同意書を思い出し、優子は唇を噛み締めた。


 きっと、竜二は知っていたのだ。母親が手術することを。だが、心配をかけたくなくて、優子に黙っていた。


「……どうして隠してたの」


 そっと問いかけると、竜二はまた苦笑して言った。


「いや、今度言おうとは思っていたけど。言いそびれちゃって」

「お金」


 優子の声に、竜二はさらに目を見開いて固まった。


「最近、バイト始めたんでしょ、お兄ちゃん」

「何で……」

「電話がかかってきてたから。……けど、お金、足りないんだよね」


 竜二のバイト先であるコンビニは、働く時間が短いぶん時給が安い。


 そこまで、優子は調べてあった。


「言ってくれたら、少しは協力したのに。お兄ちゃんは受験生なんだし、大変でしょ?」

「いや、受験はしないから」

「えっ?」


 今度は、優子が驚く番だった。


 今高校三年生である竜二は、今年受験生となる。


 頭の良い竜二は、都心の大学に通う……はず、だった。


「俺、さすがに母さんがこんなじゃ、大学受験なんてできないよ」

「でも……っ」

「大丈夫。大学には後からでも入れるんだし、今は母さんを応援しなきゃ」


 でも、優子は知っていた。


 彼は、夢を追うために、その大学に行きたいのだと。




 桜木家は、もともと、父親がいない、母、息子、娘の三人家族だ。


 病院で忙しく働く母親は、あるとき突然病気にかかってしまった。


 余命六年、と言われたのが、優子が六歳のときで、もうその余命は過ぎている。

 だからといって安心できるわけではなく、今はいついなくなってしまってもおかしくない状況にある。


 そんな母親のことを、当時中学二年生だった優子と、高校三年生だった竜二が支えていた。


 だから、画家になりたいという自分の夢も諦め、美術大学を受験することをやめ、竜二は桜木家を一生懸命支えていた。


 そんな彼のおかげで、普通の生活を送ることはできなくとも、最低限食うに困らない生活を送ることができるようになっていた。


 亀裂が入ったのは、彼が高校を卒業する一カ月前……母親が、亡くなるときのことだ。






「……うううっ!」


 そこまで視て、(リオ)は叫び声を上げた。


 流れ込んでくるユウの記憶が、とてもとても重くて、苦しくて。


 勝手に人の心に立ち入っているような気分に陥る。


 でも、読ませてもらう。


 私は、みんなを救わなきゃいけないから——。


 そう決意して、私は再び流れてくる記憶に精神を研ぎ澄ました。

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