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おばあちゃん、大好き!

「リオ」


 私の頭上に、声が落ちた。


 その声は、紛れもなく、私の大好きなおばあちゃん——


「おばあちゃん!?」


 驚いて、大声を上げる。


 何度瞬きしても、目の前にいるのは私のおばあちゃん。


 白髪が波打っていて、そのわりには肌がつやつやで、とても、生前七十歳には見えないと何度も誰かに言われた。


 おばあちゃんは、死んだ姿のまま、あのときから時が止まっているんだ。


 そう思ったら、胸がきゅうっと苦しくなる。


 私がおばあちゃんを殺したも同然なのに、おばあちゃんは、私と普通に会話する。


 私がおばあちゃんの時を止めてしまったのに。


「おばあちゃん……ごめっ……」


 今はそれどころじゃないのに、言わずにはいられなかった。


「私のせいで……おばあちゃん、死んで……」

「そんなことはいいの」


 おばあちゃんはきっぱりと言った。迷いのない声だった。


「私こそごめんなさいね。リオは、皆があなたの言うとおりになることを望まないのね」

「……やっぱり、おばあちゃんが」

「そうよ。リオが、復讐しようとしていたから。協力しようと思って、ちょっと手助けしただけなんだけど……リオは私よりも能力が強かったみたいね。力が暴走してしまった」

「ちからが……暴走?」

「そう。今のあなたの状況はまさにそう。……悪いけど、これは私にも止められないわ」

「そんなっ……」


 身勝手なおばあちゃん……と思うけど、孫の心配をして、わざわざ能力を使って私を助けてくれたんだと思うと胸が熱くなった。


「でも……一つだけ、助かる方法があるわ」

「本当に!?どうやって……止めるの?」

「それは、能力を願い事能力と引き換えること」


 ユウが言っていたことだった。


 それを……私がするの?


「今は、みんな能力も使えない状況にあるわ。だったら能力を引き換えられる」


 私が納得した素振りで頷くと、おばあちゃんが残念そうに顔をしかめる。


「それがね、さすがに今は力が暴走しているから、それが簡単にできないのよ。

 でも、あなたの悪の発端が見つかれば、それを壊すことで能力を引き換えられる」

「悪の……発端?」

「あなたが能力を復讐に使うと決意したのは、両親やお姉ちゃんのせいでしょう? だったら、彼らとリオが最も一緒に過ごした場所に、それはある」


 それは、もしかして。


「……家?」


「そうでしょうね。……あそこを見て」


 おばあちゃんが指差した方向を見つめる。


 先ほどと同じく、生い茂っていた木々が視界を広げるようにずれてくれる。


 ……遠くに小さく見える、私の家から、黒い煙が湧き出ていた。


「何あれ……!」

「あれがリオの抱えている負の感情。……あれを壊すことで、能力が本当に少しだけれど収まるわ。そのときに、素早く能力を引き換えて」

「それ……簡単にできるものなの!?」

「簡単ではないでしょうね。きっと、今操っている人の負の感情も一緒になだれ込んできたりするでしょう。だけど、頑張って。チャンスは一度きりよ。これ以上時間が経ってしまえば、もう元には戻せない」


 その言葉に。


 私は決意を固めて前を向いた。


 おばあちゃんと目を合わせる。


「おばあちゃん……」


 おばあちゃんは少しずつ消えかけていた。


「もうすぐ……お別れね……」

「おばあちゃんっ!」


 私はおばあちゃんに抱き着いた。


 だけど、私の手はふわりとおばあちゃんの体をすり抜けてしまう。


 おばあちゃんに触れることはできない。


 でも、抱きしめている感じで、言う。


「おばあちゃんのお陰で、いろんな人と出会えて、いろんな経験ができた。

 本当にありがとう、おばあちゃん。一生忘れない」

「私もリオのことは忘れないわ」


 弱弱しく笑うおばあちゃん。


 もう、あと少しで消えてしまう。

 さっきより薄くなっていた。


「おばあちゃん……、大好き!」


 気づけば、私の頬を涙が伝っていた。


 消えかかった体で、おばあちゃんが言う。


「笑って、リオ」


 おばあちゃんと目を合わせて、一生懸命笑った。


 泣き笑い。

 きっとぶさいく。

 でも、笑った。


「おばあちゃんも、大好きよ」


 それを、最後に。


 おばあちゃんは、空気に溶けて、消えた。

投稿遅くなってすみません。

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