表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/50

こんな冷静な私でも、あんなこと言われたら平常心をなくすのは当然ですよね?

 姉の言い分はこうだった。


 私が家を出てからというもの、両親は癖だった虐げができなくなり、苛々(イライラ)していたという。

 だから、私が帰ってくるまでは、姿がよく似た姉に標的(ターゲット)を変えたんだとか。

 それが苦しいので、今すぐに私に家に戻ってほしいと。


「……お願い、リオ。私だって辛いのよ。謝るから……謝るから、許してよ!!」

「は?」


 思っていたより、冷たい声が出た。


 気分が悪い。胃の奥深くがぐつぐつ煮えたぎっているような、そんな胸糞悪さがこみ上げた。


 吐き気がする。自分に都合よく言い分を変える、姉に対して。


「ふざけないで」

「すぐ了解してもらえるとは思ってない。だけど、家からでも学校は通えるんでしょ? だったら」

「ふざけないでって言ってんだけど、日本語分かんない?」


 私は怒りを抑えながら、言った。


「その、あんたの言う、『虐げを楽しむ両親』とかいうやつ。……それ、両親だけじゃないでしょ? あんたもじゃないの」

「違っ…………」

「違わないよね? 両親より酷いことをしてきたのはあんただと思うし、何より、あんたにターゲットが変わってからまだ五か月くらいじゃないの。私はね、どれくらいあんたたちにいじめられてきたと思う?

 ——十六年よ、十六年。私の人生は、あんたらのせいで滅茶苦茶にされたんだ!!!」


 顔が、心臓が、熱い。


「そんな、赦しを乞うくらいなら……最初から私のことを苦しめなかったらよかっただけの話でしょ!?

 そもそも、そこで私が戻ったら、ターゲットが私に移って、それにあんたも協力するんでしょ? 両親には逆らえないもんね。

今だけいい人ぶって、これからはまた元のようになる……そんな人のことを、助けたくなんかない」


きっぱりと言った。


それは私も、言うと決めていたことだった。


——だけど、その瞬間。


 それまで戸惑いを浮かべていた彼女の表情が、激変した。


「何よそれ!? せっかくいい話を持ち込んだのに、そうやって私をワルモノにするんだ? そういうとこ、前から変わってないよね。そんなんだから、両親にも私にも見下されたんじゃないの? それって当たり前じゃない?

 いじめを止めてほしかったなら、やめてって言えば済む話じゃない! おばあちゃんにもあることないこと言ってさ、そうやってまた私がワルモノ!?

 冗談じゃないわよ。もういい。そう言うなら、私もう、作戦を考えているから」

「作戦?」


——何をする気よ!?


 考えが、ふと、よぎる。


「まさかっ……」

「気づいた? さっすが、桜美鈴学園に入学しただけあって、頭の回転は速いわね」


 姉は不敵な笑みを浮かべる。


「私達は顔も姿も似てる。あんたのやけどが消えてからは、何度か間違えられたこともあったわよね?

 じゃあ、私があんたに成りすまして、あんたが私になればいい。そうすれば、お互いwin-winでしょ?」


 そう言うなり、姉は私に手を伸ばした。


「何するのっ!?」

「なりすますためには、とりあえずあんたを隠す必要がある。

 格闘技は、最近で鍛えられたわ。リオ。私はあんたになる。あんたは私になる。だから……消えてくれる?」


 姉が、私に手を振りかざす。


「やめてっ!!!」


 突然のことに。


 私は、強く願った。


——お願い、おばあちゃん。助けて——!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ