いい加減にしてください。何をどうしたって、許せないものは許せません!!!
静かな風が私の頬を撫でていく。目の前には、憎き両親の姿。
——そして、殺したいくらいに恨んでいる、姉。
「……久しぶりね、リオ」
母が絞り出すように言った。
姉も下を向いて、唇をきゅっと噛み締めている。
ずっと俯けていた顔を上げて、父が私を見る。
「……リオ。今まで、すまなかった」
きっと父は、家族の中では唯一「まとも」だったのだろう。
確かに、母や姉は謝るわけがないし、そこは父の善良さがにじみ出ているのだと思う。
——だけど。
時には、その「善良さ」が、あだとなるときもある。
「どうして……謝ったわけ?」
低い声が出た。
絶対に私を軽んじていたであろう、家族の皆が、はっと息を呑む。
——顔に、恐怖の色が浮かんでいた。
それを見て、私は、ああ、と思う。
今まで私はこの人たちに、こんな表情を見せていたんだろう。
恐怖に歪んだ瞳で、ぼこぼこに殴られた顔で、必死に、彼らを見上げていたのだろう。
だけどもう、彼らにそんな表情など、絶対に見せない。
今は立場逆転なのだ。
「聞いてるんですけど。何で、謝ったんですか」
取り乱したりせず、意外に冷静な自分に驚く。
父が、ひっ、と短い息を漏らして、「そ、それは」と言い訳を始めた。
「今まで、本当に悪いことをしたと……そう、思うから……」
「何、それは、能力を知ったから、恐怖で保険をかけにきたわけ?
私はもう謝りました、あの子が能力を使っても、自分のせいではない……その保険をかけた」
「違う……そういうものではなく、本当に心から……」
「はぁ?」
私は父を睨みつけた。
恐怖で、不安で、罪悪感でものを言えない彼に、一歩、近づく。
「今まで私が……どれだけ苦しめられたと思ってるの?」
「そ、それはもちろん分か……」
「ふざけんじゃねーよ分かってなんかこれっぽっちもねーだろが」
私は父の手に触れた。
——過去一カ月以内に、相手に一度以上接触——。
「じゃあね。ばいばい、おとうさん」
そう言って、私は瞳を見開いて父を見て、神経を集中させた。
視界が真っ白に染まる。あと少し。あと少しで、父の体へ行ける——。
「まっ、待って!」
「……っっ!!!」
ほんのわずか、寸前のところで、誰かの声に阻害された。
「何ッ!!!」
鬼の形相で振り返る。
——何でよ! あと少しだったじゃない! どうして邪魔するの⁉
「リオ。話をしよう?」
姉、だった。
姉は私とそっくりな、涼やかな声とすらりとしたスタイルで、そこにいつものように堂々と立っていた。
でも、いつもと違うところがある。
瞳に、バカにするような光がなかった。
横に目を走らせると、そこには、倒れた父と、それに駆け寄る母の姿。
意識を移動する寸前で止めたから、しばらくの間は意識が飛んでいるんだろう。
姉は私と目を合わせる。その有無を言わさぬスムーズな動きに、私は逆らえず言うがままだ。
「リオ、今まで本当に、ごめんね」
姉が頭を下げた。
そんな姉を見るのは初めてで、びっくり仰天、彼女をまじまじと見つめる。
父と違い、彼女には恐怖の色がなかった。
「リオが寮暮らしになってから……両親のえじきは私になった。リオの苦しみが、少しだけど分かった気がしたわ。
お願い。リオ。こんなわがまま、聞いてもらえないって分かってる。だけど、一生のお願い。
ねぇ、うちに戻ってきて?」
背筋が、凍る思いがした。
時間遅くなってすみません。
かなり、いい感じに物語が進んでます!
そろそろ本作もクライマックス突入!
最後までよろしくお願いします!!!




