彼は女子に慣れてるみたいです
ちょっとだけ、キュンキュンシーンも入れてみて、「ただの高校生」みたいな感じにしました。
いろいろ考えて読んでみてくださいね。
「で……できたぁぁぁぁっ!!!」
私の叫びが響き渡って、柳くんが目をこする。
ずっとパソコンを見ていたせいで、目がしょぼしょぼする。
それは彼も同じなようだ。目を頻繁に瞬きしている。
「できたよっ、柳くん!」
「……ああ、そうだな」
彼が面倒くさそうに答える。私は、さっそく盗んだ情報に目を通した。
「ええっと、これ、どこに出身校書いてあるの?」
「そこにあんじゃん。ちゃんと見ろ」
「ないけど!」
「あるっつーの! んもう!」
床に寝ていた柳くんが飛び起きて、私の隣に座ってくる。
「…………っ」
——距離が、近い……っ!
そのとき、太ももに水がかかった。少し、あたたかい。
——ん?
顔を上げると、彼のふろ上がりの髪の毛から、水がしたたり落ちていた。
——どんだけ近いのっ!!!
「っちょ、ちょっと、もうちょい距離……」
「うん?」
「ちょっと、距離が近っ……」
「そうか? こんなもんじゃねぇか」
こんなもんじゃないです! ぜんぜん!!!
「も、もーちょい距離を……」
「そっちが動けばいいんじゃね?」
「…………あ」
今になって当たり前のことに気づいて、慌てて距離をとる。
「何。俺が嫌い?」
「いや、嫌いとかじゃなく、男の子だから……」
「あ、そっか。悪い、俺、妹がいるから、女子と距離が近ぇんだよ。お前は男兄弟とかいねぇの」
「いない、いない。クソ姉貴がいるだけ」
「姉ちゃんか。俺も姉ちゃんいる」
「兄弟多くない?」
二人姉妹の私は、驚いて彼を見る。彼は「まぁ、確かにな」と言って頷く。
「俺の家は、二歳年上の姉ちゃんと、五歳年上の兄ちゃん、俺、双子の妹、五歳下の妹、四歳下の弟、の六人兄弟だからさ」
「六人っ⁉ にぎやかだね⁉」
「ああ。兄ちゃんであり、弟でもあり。姉ちゃんも兄ちゃんも妹も弟もいるから、みんなの不満もよく分かる」
「そっかぁ。すごいなぁ、ほんとに。いいお兄ちゃんになれてる?」
「さあな」
彼が笑って、「早く」とせかしてくる。
「はいはい」
「はいは一回、って言ってませんでしたっけ?」
「私はいいの!」
押し切って、パソコンを見る。
確かに、柳くんの言うとおり、ちゃんと出身校が書かれている。
「めめめ学園中等部」「PS、音楽中」「マスクル女子」……などなど。
中には、目を見張るほどの有名な学校もあった。
「すごいなぁ。私の出身校と比べものにならない」
「お前は何だっけ、北町中?」
「そ。あんたは?」
言いながら、画面をスクロールさせていく。
彼が答えるより先に、彼のプロフィールを覗いた。
『柳 雅也
性別 男
出身校 傘柿学院』
か……カサガキ、ガクイン⁉
バッと振り返ると、彼が気まずそうに下を向いた。
だって。だって。だって。
傘柿学院は、超名門の男子校だ。
余裕で日本一の偏差値が高い名門校だと思う。
本当に偏差値が高くて、中学受験で頑張らなきゃ絶対に入れないようなトコ。
男子校だから興味はないのに、私も知ってるほど、有名なのだ。
「す……すごいっ!! まじか! こんな学歴あったの⁉」
「……まあ、一応な」
「本当にすごいよ、びっくりした。お坊ちゃんだからいいトコだろうなとは思ってたけどっ、ここまでなんて! めちゃ頭いいじゃん!」
「……そんなことねぇけど」
謙遜のポーズをとる柳くん。
だけど、すぐにあれ? と思い当たる。
「じゃあ何で、そんな名門校から桜美鈴学園に来たの? 中学受験で入ったなら、そのまま高等部から大学までエスカレーターだよね?」
「……いや、別に、なんか、なんとなく?」
目が泳いでいる。
なんとなく、なわけがない。
分かったけれど、言わないでおく。
でも、もし、言ってくれるくらい、親密な関係になれたら。
そのときは、私に教えてね。
あなたが抱え込んでいるもの、ぜんぶ。
さて、次の話で犯人が分かります!
お楽しみに!




